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【2024/04/30 08:04 】 |
たままはなま様より

『Chat Noir』のたままはなま様からの素敵な頂き物!





黒い猫(with Blue Rubit)


僕は、猫科の獣を飼っている。
しなやかで優美な外見の中に、時に主人にも爪を立てる気質を秘めている。

犬のようには飼いならす事が出来ないが、
主人にまで見境無く牙を?いたりたりしない程度には、野生という訳でも無いのだ。

濡れたような艶の漆黒の毛並みのヤツが、僕の部屋の灯を消した。
新月の闇にも溶けはせず、その姿は返って浮かび上がる。

ヤツが足音一つ立てず、真っ直ぐこちらに向かって来る。
無駄を削ぎ落とされた動きは、洗練され、実に優雅だ。

傍らまで来ると立ち止まった。
しなやかな腕が延ばされ、長い指が僕の頤を掬い上げる。

紅く光る瞳で、僕を見詰める。
柔らかな下弦のクレセントムーンが僕の唇に降りて来て、
甘く、呼吸を奪う。

パサリと椅子の背に投げられる燕尾服。

吸い付くような赤い舌が、耳を、首を這い、
僕に吐息を零させる。

少しひんやりとする掌と指で、体中の体温を、
どこもかしこも調べ上げていく。
それは丹念に、本当に隅々までを・・・。

自分の鼓動の速さと大きさが、耳について煩い。
もっと、ヤツの零す息の音を聞きたいのに。

ヤツは、僕の熱さを確かめ、
余す事無く貪るように堪能し尽そうとする。

掠れた声が、吐息と共に辺り中に散らばっていく。
視界にも意識にも、うっすら霞が掛かって、思考を手離す。

細胞の一つ一つまでもが乱されていくような痺れを与えられる。
奴の熱さに耐えかねて、身体が極限まで反り返る。

もう意識を保っていられない・・・・・。
目の裏に、スパーク!



浅い息をしながら、体を弛緩させていると、
微かに汗ばんだ広い胸に、やんわり抱き締められる。

纏わり付く前髪をすき上げて、僕のぼんやりした目を覗き込む。
輪郭はぼけているが、ヤツが満足そうな笑みを浮かべているのは判る。

額に、ヤツの唇が触れた感触。
まるで、良い子にしていたご褒美とでもいうような軽やかさ。

耳に馴染む低い声が、僕に囁き掛ける。
少し考えて、仕方がないという顔で頷いてやる。
喉でも鳴らしそうな目をしたヤツの唇が弧を描く。

少しひんやりとした形の良い手が、
僕の体温を再び上げさせるべく、蠢き始めた。

今夜は、夢を見る余裕は無さそうだ。




END


****
あとがき
たたままはなま様から前に頂いた素敵な年賀状の対になるお話を頂いちゃいました…!シエルverです!
こちらもまるで音が無いような静かな文章なのに、どこか響いてくる素敵な文章でございます><
個人的に最後の一文が本当にツボですww

たままはなま様、またまた素敵な文章を本当にありがとうございました!!!

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【2011/05/18 16:15 】 | Gift | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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