(シエルはワイシャツ一枚&半ズボンで、セバスはワイシャツ執事姿です)
どこもかしこもチョコレートの匂い。
甘いものは大好きな筈なのに、今は憎むべき対象だ。
「さぁ、坊ちゃん」
それは今目の前にいる悪魔のせいであり、このチョコレートには何の罪もない。
チラリと悪魔の横・・・ベッドの上に置かれている箱には、1つの窪みと二つのチョコレート。
1つは自分の手にある。
「早くしないと手の中で溶けてしまいますよ?」
微笑みの向こうには意地悪い顔がアリアリと見えてくる。
シエルは舌打ちをし、手の中にあったチョコレートを口の中に放り込む。
そしてベッドに座っている悪魔、セバスチャンの足の間のスペースに若干膝を載せて、肩に手を置き身体を寄せた。
この体勢だと珍しくシエルがセバスチャンを見下す形になる。
それを少し優越感に浸り、自分の鼓動が煩くなっているのを無視して。
「いただきます」
セバスチャンの声に合わせて、唇を寄せた。
口の中で若干溶けたチョコレートを舌で押し、セバスチャンの口に移す。
その際に伸ばされた舌が自分の舌とぶつかり、嫌な感触が背中に広がったが、シエルはそれを耐えてすぐに唇を離した。
「・・・随分と冷たくないですか?」
すぐ唇が離れていったことがお気に召さなかったようで、セバスチャンは表情を歪ませる。
しかしそれを無視してシエルは次のチョコレートへと手を伸ばしたが、その手首を掴まれてチョコレートを取ることを阻まれてしまった。
「坊ちゃん、何か喋ってください」
「・・・・・・」
「随分と怖い顔をなさっていますね」
「・・・当たり前だ」
「恋人にチョコレートを用意しておかなかった罰ですよ」
「だからちゃんとお前の言う通り口移しでチョコを渡しているだろう」
「愛を感じません」
「感じる必要なんてない」
「どうしてですか?」
「・・・どうしても、だ」
シエルはプィっと横を向き、セバスチャンの視線から逃げる。
「なにも考えたくない・・・という感じですね」
「・・・・・・」
「考えたら恥ずかしくなってしまいますものね?」
「・・・ッ」
「しかし坊ちゃん。頬はすでに赤くなっているんですよ?」
「や、触るな!」
横を向いていた首元に手袋を嵌めていない手が触れてくる。
(意識するな意識するな意識するな意識するな)
意識をしたら最後。恥ずかしくてどうにかなってしまいそうで、嫌になる。
セバスチャンに言われなくったって、頬が赤くなっていることなんて百も承知だし、鼓動だって早い。それにもう、身体だって熱くて苦しい。
「いい表情になってきましたよ、坊ちゃん」
「このッ・・・」
「さぁ、次のチョコレートをいただきましょうか」
掴まれていた手首が開放され、そしてセバスチャンは新たなチョコレートを差し出した。
それをしばらく睨みつけていたがシエルは諦め、口を小さく開く。
がしかし、一向にそれは口に入ってくることはない。
「おい・・・」
「自分でお取りください」
「は?」
「ただし手は使わずに」
手は使わずに・・・?一体どういうことだと首を傾げれば、セバスチャンは見せ付けるようにそのチョコレートに口付ける。
それを見たシエルはどのようにチョコレートを取らなければいけないのか理解し、唇を噛んで首を横に振った。
「駄目です。今日の坊ちゃんに拒否権はありませんよ?」
「どうしてバレンタインのチョコを用意しなかっただけで、こんな仕打ちを受けなくちゃいけないんだ!」
ホワイトデーがあるだろう!と叫べば、それはそれ、これはこれで大切な行事ですと返される。
「早くしないと、私の手の中で溶けます」
「・・・・貴様、覚えてろよ」
シエルはそのままセバスチャンが持っているチョコレートに顔を近づけ、口を開く。
そして顔を横に傾けて舌を伸ばし、セバスチャンの指と共に絡めれば、ゆっくりとセバスチャンの指はチョコレートを手放して行く。
「いい子ですね・・・」
ココアパウダーとシエルの唾液が付いた指を見せ付けるように舐め、もう片方の手で腰に腕を回してくる。
その厭らしい動きにビクリと反応してしまい、シエルはチョコレートを口の中で噛んでしまった。
口の中に固まっていないチョコレートがドロリと広がり、先ほどのように舌で相手の口腔へと押し込むことが出来なくなってしまう。
「構いませんよ」
それを見ていたセバスチャンはむしろ愉しそうに笑い、口をそっと開ける。
(これは、絶対に良くないパターンだ)
一瞬飲み込んでしまおうかとも思ったけれど、正直バレンタインチョコを用意していなかった罪悪感も多少なりともあったので、シエルは諦めてそのままゆっくりと唇を近づけた。
その瞬間腰に回されていた腕が動き、際どい所を撫でて行く。
「んッ」
肩に置いてある手を突っぱねるように伸ばしてしまい、近づいていた唇が離れてしまった。
文句を言いたくとも口にはチョコレートが広がっているので、何かを言うことは出来ない。
「ほら坊ちゃん、早く」
「~~~~ッ」
触られていては無理だと首を横に振れば、セバスチャンは大きなため息をつき、腰に巻きついていた腕を離した。
それで安心したシエルはもう一度唇を寄せ、目を閉じて唇を重ねる。
重ねる瞬間も鼓動が大きく跳ねるが、ここで終わらせられるわけではない。
先ほどと同じように口を開けて、上からチョコレートを流し込むようにする。
ドロリと重たいチョコレートはどうにも重力だけでは上手く落ちず、シエルは必死に舌を使って押し込んで行くが。
「ん・・・んんン!」
セバスチャンの舌が口腔の中へと潜り込み、流れ込むのを待たずにその場で全て舐めとろうとしていく。
歯列をなぞり、顎の裏、舌の裏までも、丹念になぞっていく。
逃げようと頭を持ち上げるが、頭を押さえつけられて口づけがより深くなっていってしまう。
「ふ・・セバス・・チャ・・・っぁ!」
呼吸の間に名前を呼べば、離れていた腕が今度は内股の方に伸ばされ、撫で回して行く。
ズボンの隙間に手を差し込まれてしまえば、もう立ってはいられない。
ベッドの上に乗せていた膝がカクンと折れ、そのままセバスチャンの膝の上に座る状態になってしまった。
「おやおや・・・」
セバスチャンはクスクスと笑いながら、チョコレートの付いた唇を舌で拭う。
「も、やめろ・・・」
シエルはセバスチャンの肩に手を置いたまま、胸板に額を押し付ける。
(この変態悪魔ッ)
きっと赤い瞳は欲情で濡れているだろう。それを見てしまったら、きっと自分もその色で塗り潰されてしまう。
いや、もう塗り潰されてしまいそうなのだ。これ以上は、もう。
「あぁ・・・可愛らしいですよ」
「きさ、ま!」
「顔を見せて、シエル・・・」
「名前で呼ぶな!」
「ねぇ・・・見せてシエル」
「や、だ!!」
顔を上げさせようとしてくるセバスチャンの腕を必死に掴んで抵抗する。
(嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ、嫌だ!)
絶対に見せたくない。そして見たくない。
本当に、もうこれ以上は。
我慢できなくなる。
「ほら、可愛らしい」
「みる、な!」
クイっと顎を持たれ、ついに顔を上げさせられてしまった。
赤い瞳と蒼い瞳が交じり合う。
自分を欲する瞳に、自分だけが映り込む。
「う・・・ぁ」
チョコレートはあと1つ。
「あぁ・・・チョコレートばかり食べていたら口の中が甘くなってきましたね」
「え・・・?」
「他の果実も頂きましょうか?」
「な、に?」
何を言っているのか理解できず、そのまま固まってしまっていると、セバスチャンはシエルのワイシャツの裾を掴み上げ、そしてその裾をシエル自身に握らせる。
「これをめくり上げてください」
「は?」
これをめくり上げたら上半身が丸見えじゃないか。
いや、男同士だから気にすることはないかもしれないけれど。
セバスチャン相手だから見慣れているかもしれないけれど。
今は違う。駄目だ。だめだ。
「い、いやだ」
「拒否権は無いと先ほどから申していますよね?」
「っ!!」
「チョコレートばかり食べるというのも辛いのですよ。シエルの方がよくご存知でしょう?」
「だがっ」
「お手伝いしますよ」
「や、まて!」
掴んだ手にセバスチャンは手を重ねて、上へと持ち上げて行く。
徐々にワイシャツが上へと持ち上がり、か細く震えている上半身が見えてくる。
そこには。
「美味しそうですね」
「だめだからっ・・・」
「なぜですか?こんなにも尖らせているじゃないですか」
「やっ」
首を屈めて舌先でツンと胸の尖りを突く。
そして、このままにしておいてくださいね、と声を掛けながら掴んでいた手を離し、シエルひとりでワイシャツをめくり上げている状態になった。
「酷くそそりますね・・・・」
「やめろ・・・見るな・・・」
「ここは触ってと言うのですよ」
「あッ・・・」
両腕を背中に回され、抱きつくような形で尖りに口付けられる。
「ひぅ・・・あ、ぁ・・やだっ」
噛み付かれたと思ったら、酷く優しく舐められて、執拗に舌を這わせてくる。
もう片方の尖りには爪を立ててくるので、もうたまらない。
「あぁ・・・こんなに赤くなってしまいましたね」
口を離したセバスチャンはうっとりとその尖りを眺め、ペロリと舌で舐め上げる。
「ぅあ」
「下も窮屈そうで可哀相に」
「あ・・・あ、せばす、ちゃん」
「そんなもの欲しそうな顔をして・・・」
カチャ・・と金属と金属がぶつかる音がしたかと思えば、ジー・・・と留め金を降ろす音が期待という音に変わって耳に響く。
しかしセバスチャンはシエルのズボンを広げただけで、それ以上をどうしようということは何もしなかった。
「ん・・・」
「駄目ですよ、まだチョコレートが1つ残っています」
諌めるように唇に指を這わせ、悪戯に微笑む。
先をねだらせるようにしておきながら、焦らしてストップをかける。
(本当に悪魔だな!)
内側を燻る熱の置き場所が見当たらず、シエルはその指に噛み付いた。
けれどすでに力が入らない身体で噛み付いたとしても、ただの甘噛み程度だろう。
それに相手は悪魔なので、噛み付かれたところで痛くも痒くもないはずだ。
しかし。
「悪い子ですねぇ」
「あ・・あ・・はぁ!」
シエルが座っている膝が動かされ、意地悪く突き上げられる。
その感覚は同じなのに、奥に当たる快感は一切ない。
それなのに身体が覚えているせいか、疼きが一向に酷くなった。
「チョコ・・・チョコレート!」
「ん?」
「っぁ・・・渡す・・・から!・・・ふぁ」
「そうですか」
ピタリと足を止め、よしよしと頭を撫でてくる。
いつもならここで罵倒が飛んでも可笑しくないが、もうここまで塗り潰されてはシエルも余裕がない。
もう解放への道筋を辿ることしか考えつかないのだ。
「っつ・・・」
手を伸ばし、チョコレートを掴み上げる。
そして口に放り込み・・・。
首に抱きつきながら勢いよく口付けた。
まるで相手の口の中に押し込むように舌でチョコレートを押していく。
けれど相手はそれを受け取らずに唇が重なっている丁度真ん中辺りで押しとどめ、そこでチョコレートを堪能し始めた。
2人の熱でチョコレートはどんどん溶けていく。
それを絡めるようにセバスチャンは舌を動かし、シエルの舌に擦り合せてくる。
ゾクリと快感が走るが、今欲しいのはソレではない。
早く食べてしまえと舌を無理やり相手の口腔に入れ、絡まったチョコレートを味合わせる。
クチクチと卑猥な音が耳を擽り、その音を立てているのがシエル自身なのだと考えると恥ずかしくて顔から火が出そうだ。
「ん・・・ふ、・・・ぁ」
それでもシエルはやめない。
早くチョコレートが溶けてしまえばいい。なくなってしまえばいい。
そしたらセバスチャンは自分が欲しいものをくれるだろうから。
ぎこちない舌使いで相手の口腔を辿っていると。
「ん!・・・んン・・ふ・・・!」
手が背中を辿り、ズボンの中へ。そしてその奥へと進ませ、いつもセバスチャンを受け入れる場所を擽るかのように触られる。
ビクリと肩が上がり口付けが解けそうになったが、もう片方の手でそれを制された。
まるでまだチョコレートはなくなっていませんよ、と言うかのような行動に、シエルは身体を震わせながらも必死に互いの舌を絡め合う。
その間もセバスチャンの指は止まることなく、しまいにはツプリと中に進入させ犯していった。
「くぅ・・・ん・・・ん」
ビクビクと身体が反応し、息が上がってくる。
もう許して欲しい。
「セバス・・・あ・・・セバス、チャン、ん」
「こら。まだ口の中にチョコレートは残ってますよ」
無理やり口付けを解いて名前を呼べば、意地悪な顔で舌に乗ったチョコレートを見せ付けてくる。
「も、もう・・・あ!やぁぁ!」
首を横に振って限界を伝えれば、中を探っていた指が前立腺に触れ、そこを激しく突き上げてくる。
たまらずセバスチャンの胸に縋りつき爪を立てた。
「欲しいのはこれですか?」
「いぁ・・・あ・・・ち、ちが・・・ひぁぁ」
「では何ですか?言葉にしていただかないと分かりませんよ?」
「い、いじ・・・わるッ!」
「おや、そんなことを言っていいのでしょうかね」
「ひぅ・・・!」
器用に片手で下半身を隠しているものを全て取り払い、だらしなく震わせながら蜜を垂らしているソレの先を指先でつつく。
それ以上は触れてこようとせず、ただつついただけでセバスチャンはニッコリと笑みを浮かべた。
「さぁ、どうして欲しいですか?」
(こんの悪魔!)
口にしたら今度は何をさせられるか分からないので、心の中で罵倒する。
するとセバスチャンはそれも見抜いてしまったようで、フーっとソレに息を吹きかけてきた。
そんな些細な刺激も今では大きいもので、ビクビクと腰を震わせてしまい余計に物足りなさが滲み出た。
「ほら、坊ちゃん」
「・・・・さ、さわ・・・・・て」
ついに小さな声で懇願すれば、耳元で同じくらい小さな声で何を?と聞き返してくる。
もう恥ずかしくてこのまま死ねるような気がしつつも、ギュッと瞳を閉じセバスチャンの服の裾を握り締めながら。
「ま・・・まえの・・・そ、れ・・・」
願いを口にする。
きっとここまで言えばセバスチャンは許してくれるだろう。
そう思い、恥ずかしくても精一杯の力を込めて言ったのだが。
「嫌です」
それは綺麗な声で玉砕。
「・・・なに?」
「だから、嫌です」
「え?」
何を言われているのか理解出来ない。
セバスチャンが断った?断った?
精一杯のお願いを?コイツは、一言で?
「きさ、ま・・・」
ようやく理解し始めたシエルは先ほどとは違う意味で肩を震わせ目の前にいる相手を睨みつける。
こんなにも恥ずかしいことを口にしたというのに、一言で切り捨てるとはどういうことだ。
先ほどの甘い雰囲気など忘れ、殺してやりたい気持ちで一杯になると共にどこか泣きたいような気持ちになってくる。
一発殴ってやろうと手を振り上げれば、セバスチャンはその前にシエルの中に潜めていた指を再び動かし、いきなり刺激を与えられた。
「っぁあ!こ、の!せばす、ちゃんッ!」
「そんなに怒らないでください坊ちゃん」
前を触らない代わりに。
ズルリと指を引き抜いたと思いきやそのままシエルをベッドへ押し倒し、金具の音が耳に届いて気が付いた時にはすでに時遅く。
「これを差し上げますよ」
「ひ、ああぁァ!!」
そのままセバスチャンに貫かれた。
「ん、やッ・・・はぁ!」
「本当はこれが、欲しかったので、しょう?」
「ふ、あ、あぁ、はぁッ」
間を空けることなく奥を抉ってくるセバスチャンの言葉は耳に入ってくるが、答えられる余裕などどこにもない。
どこまでも攻め立ててくる快楽にシエルは必死に首を横に振り、上手く熱を逃がそうとするが、そんな抵抗でこの凄まじい快楽から逃れられるわけがなかった。
「ん、んン・・・は、はぁ」
「嘘は、いけませんよ、シエルっ」
こちらの意志を読み取ったらしく、セバスチャンは口角を吊り上げて笑う。
その笑みが酷く憎たらしく、残った思考でセバスチャンの背中に腕を回し、爪を立てた。
コイツはどこまでも意地悪だ。そしてどこまでも憎たらしい。
どうしてこんなにも見抜かれてしまうのだろう。
嘘も、虚勢も、全て。
どうしてセバスチャンは分かってしまうのだろう。
「せば、すちゃッ・・・」
「シエル・・・」
蒼い瞳と赤い瞳がぶつかると、どちらからともなく唇が近づき、重なり合った。
―――本当はこれが欲しかったのでしょう?
あぁ、その通りだ。
本当はセバスチャンが欲しくて、欲しくてたまらなかった。
けれどそんなこと口に出来るわけがなくて。
それなのに、セバスチャンはそれを全て見抜いて望みを叶えた。
きっと僕が口に出せないことを分かっていて聞いたのだろう。
それは僕が何が欲しいのかも分かっていたからこそ。
彼は聞いたのだ。
本当に憎たらしい。
だから。
愛しい。
「ん、ふ・・・んン」
口付けの最中も止まることがない律動。
それは息苦しさを伴うが、構わない。
もっと、もっと。
もっと欲しい。
「はぁ・・・う、あぁ・・・やッ」
「随分と気持ちよさそうですね」
瞳が蕩けてますよ。
首筋に舌を這わせられ、セバスチャンを受け入れているところがキュっと狭まったのを自分でも感じて恥ずかしくなる。
しかしもう全て今更だ。
シエルはセバスチャンの肩に吸い付いて痕を残し、精一杯の余裕を浮かべながら当たり前だと笑う。
「お前が、触ってる・・ぁ・・から、悪いん、だろッ」
「・・・・そうやって此方を煽るのはやめてください」
「ひぁ・・・あぁぁ、あァあ!」
グリっと奥を抉られたかと思えば、激しく揺さ振られる。
痛いくらいの快感に目の前がチカチカと輝き、頭がくらくらしてくる。
けれど視界に映るセバスチャンだけは歪むことなく、そこにいて。
どれだけ自分はこの悪魔が好きなのだろう。
「も、だめッ・・・せばす、ちゃッ・・・とけ、る」
「えぇ。もうこのまま溶けてしまいましょう」
そして二人で永遠に、交わり続けていましょうよ。
「ば、ばかかッ・・・ああ、ァ、んぁ!」
「シエルっ・・・」
「せば、すちゃ・・・あぁぁあッ!!」
身体の奥で熱いものが弾けたのを感じ、シエルも己の欲を解放する。
「ふ・・・、はぁ・・・」
「大丈夫ですか?」
力を抜き、クタリとしてしまったシエルにセバスチャンは苦笑しながら声を掛けてくる。
汗で張り付いた前髪を払う仕草は酷く優しくて、頬を緩ませそうになったが、シエルは必死にそれを留めた。
バレンタインチョコを用意していなかった罰から始まり、焦らされ、そして好き勝手に弄ばれたのだ。
ここで笑顔を見せるほど自分は優しい奴ではない。
「大丈夫な、わけ、あるか」
「シエルは体力が無いですからねぇ」
「何だと!馬鹿に、するな!」
馬鹿にしたような物言いに噛み付けば、相手の顔がニヤリと光る。
「では、もう一回お付き合い願いますか?」
「・・・え」
「体力はまだあるのでしょう?ならもう一回お付き合いしていただけますよね?」
「う・・・」
ニッコリと微笑んだまま再び顔を寄せてくるセバスチャンに、シエルは逃げようかと考えるも、その瞳がまだシエルを欲している熱を宿していたので。
シエルは再び自分自身に灯り始めた熱を感じつつ、諦めたようにため息をついて瞳を閉じた。
(二人で溶けてしまうのも、悪くない)
end
【あとがき】
お気づきになられたかと思いますが、以前バレンタインデー時にDiaryにて掲載しました文章です。
いつか続きを書いてUPするとお話していたので、今回ここでUPさせて頂きました!ww
Rしかない文章です(笑)色々と突っ込みたいことはあるかと思いますが、スルーでお願いします(ニッコリ)

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