「坊ちゃん、お味は如何ですか」
「悪くない」
「それはようございました」
紅茶を注ぎ足しながらセバスチャンは微笑む。
表情を窺う限り、今日のスイーツもどうやら気に入って頂けたようだ。
執事として使えてから3年も経てば、シエルがどんな甘いものが好みか嫌でも分かってくる。
気に入らない、と言われたのは初めの頃ぐらいだろう。
甘いものが好物なシエルはわき目も振らず、黙々とスイーツを口に運んでいく。
それくらい仕事にも集中すれば早く終わるのでは?という嫌味はまた今度。
セバスチャンは静かにその様子を見届ける。
がしかし。
「坊ちゃん」
「・・・」
食べ終わるまで見届るという時間は、少し長い。
その間に1~2回会話をしても可笑しくはない筈だ。
そう思って声を掛けるがシエルは返事をする気は全くないようで、そのままスイーツを食べ続ける。
「甘すぎませんでしたか」
先ほど“悪くない”と言われたのにも関わらずこの質問はどうだろうと考えたが、スイーツに関する質問等の方がこの子供は返してくるだろう。
しかしそんな考えも玉砕。シエルは先ほどと同じように無視を決め込んでいた。
「・・・そのスイーツを作った私に対して、その態度はどうかと思いますが」
「うるさい」
苛ついたセバスチャンは隠すことなくそれをそのまま言葉に出すが、ピシャリとシエルは跳ね返す。
悪魔に対してこの態度は呆れを通り越して感心しますね。
内心でいじけるように哂えば。
「折角お前が作ったスイーツを食べているんだ。しっかり味合わせろ」
どこか頬を赤らめながら口にした言葉。
それにセバスチャンも頬を赤らめ、
「申し訳ございませんでした」
ペコリと頭を下げて謝った。
End

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