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【2024/04/30 08:46 】 |
What time is it now? 
九条静音さまへ



目が覚めたのは小鳥の囀りででもなく、太陽の光ででもなく、ただ自然と瞳が開いたからという理由。
白いシーツに埋もれた身体は一糸纏わぬ姿で、普段は服に隠れて見えない白い素肌も惜しみなく曝されている状態だ。
まだ起きたばかりの寝ぼけた頭は今の時間も、今日の予定も考えることはせず、ただ素肌に触れるシーツの感触が気持ちよくて、お気に入りの枕に顔を埋めれば。

「起きましたか?」

隣から聞きなれた声が耳を擽る。
その声は優しく甘やかで、この柔らかい雰囲気につつまれた寝室の空気を壊そうとしないもの。
どこまでもこちらを気遣った声だ。
この声が好きかと聞かれたら首を横に振るが、嫌いかと聞かれてもきっと自分は首を横に振るだろう。
別にこの優しい声が好きでもないし、嫌いでもない。でも、きっと他の連中は彼がこんな優しい声も出せるだなんてことを知らないだろうから、少しだけ優越感はある。
そんなことをなぜか頭の片隅で考えながらシエルは彼、セバスチャンの声に首を振った。

「まだ・・・」
「まだ?」
「あぁ、まだ起きてない」

言いながら枕に顔を押し付ける。
その声はくぐもったものになったが彼は一文字も聞き逃すことはせずに聞き取ってくれる。
当たり前だ、彼も悪魔なのだから。
それでも、それがなんとなく嬉しいと思ってしまうのは末期だろう。しかしもうその気持ちを見てみぬフリ時期はとうに過ぎた。

「まだお休み中ですか」
「そう、まだ寝てる」
「そうですか」

まるで子供みたいだなと自分で思いながら言えば、彼もそう思ったのかクスクスと笑いながら頭を撫でてくる。
声と同じく優しい手。

「セバスチャンは起きたのか?」
「はい」
「・・・どうせまた寝てないんだろう」
「そうですね」

貴方の寝顔を眺めていたら、勝手に時間が過ぎておりました。
悪戯が成功したように楽しそうに、そう囁くセバスチャン。
その台詞を何度聞いただろうか。本来ならば自分ももう眠らなくても大丈夫な身体の筈だけれど、まだあの頃と同じように眠いと思う“感情”があるせいか眠ってしまう。
しかしそれが嫌だと思ったことはないし、それについてセバスチャンも何も言わない。

「・・・・」

埋めた顔を動かし、チラリと片目で声のする方を見上げれば、自分と同じように一糸纏わぬ姿で此方を見下ろしている彼の姿が瞳に映った。
黒い髪に白い肌。眉目秀麗とはまさに彼のことを言うのだろう。
流石は悪魔、と思う反面、別にあの蜘蛛執事が眉目秀麗かと聞かれたら自分はきっと首を捻ってしまうだろうから惚れた弱みなのかもしれないと苦笑してしまう。
だが自分の考えは抜きとして、世間一般的には彼のことを、そして蜘蛛執事のことも眉目秀麗だと言うのだろう。

「どうしました?」
「・・・んン、別に」

見つめられていることが気になったのか、それとも何か考えているような此方の様子が気になったのか。
セバスチャンは苦笑するように聞いてきたのに対し、シエルは視線を逸らしながら首を横に振った。
きっと頬も少し赤くなっているだろうから身体に掛けているシーツを目下まで引き上げるのも忘れない。
惚れた弱みだなんて、そんなことを考えていたことを彼に知られたくなどないのだ。
それでもセバスチャンは何もかも分かっているように微笑みながら、そうですか、と頷き、シエルの覗かせた瞳の方に掛かる髪の毛を優しくかき上げる。

「・・・聞かないのか?」

その髪をかき上げる優しい感触に誘われるように枕から全て顔を出しセバスチャンと向き合うように身体をも彼へ向ければ、今度は額に掛かる髪の毛を優しくかき上げられる。

「聞いていいのですか?」
「・・・・・・・」

聞かないのかと聞いておきながら、ダメだ、と即座に答えるのも変な気がして黙ってしまう。
それを見たセバスチャンはクスクス笑い、髪をかき上げ剥き出しになった額に、ちゅっと口付けた。

「顔に書かれているので言葉になさらなくても結構ですよ」
「・・・んなわけないだろう」
「いいえ。しっかり書かれています」
「なんて」
「言っていいのですか?」
「いいだろう、言ってみろ」

自信満々に言うセバスチャンがなんだか気に食わなくてシエルも口角を吊り上げながら挑戦的に言う。すると彼はシーツと身体が擦れる音を立たせながらおもむろに身体を動かし、手を伸ばす。そしてそのまま目の前にいるシエルを捕まえて、素足までも絡めあわせて。

「好きだって。そう書いてあります」

ゆっくりと口付けた。

「・・・・」

しかしその唇は触れ合っただけですぐに離れ、その感触はまるで淡雪のように消え去ってしまう。けれどすでにその感触は何度も何度も味わったことのあるもので、離れた今でも刻み付けられたソレを思い出すかのようにジワジワと身体の中から侵食していく。
それと共に頬もだんだん熱くなっていき―――

「ば、ば、バカかッ」
「仕方ないでしょう、そう書いてあるのですから」
「うる、うるさい!」

シエルは恥ずかしさで死にそうだと瞳を閉じてセバスチャンを両手で押すが、彼の腕、そして足は自分に絡みついたまま離れることはなく。
そのどこまでも優しい眼差しも瞳を閉じていたって感じるのだからもう堪らない。

「ぼーっちゃん」

無駄に愉しそうに呼ばれた名前にシエルは再び、うるさい!と叫び、顔だけでも隠せないかと丸々ように頭だけ下を向けた。
額を彼の胸板に押し付け、グリグリと頭をふってやる。髪がグシャグシャになってしまうかもしれないが、そんなことはどうでもいい。

「お前のそういうところが嫌いだっ」
「そうですか?」
私は好きですよ。
「貴方のことが」

シエルを抱きしめている片手を、グリグリと押し付けていた頭・・・うなじに這わせ、ゆっくりと髪をかき上げていく。
先ほどは瞳に掛かる髪を、次は額に掛かる髪を。今もそれと変わらないものなのに、なぜか意を持った手でうなじからかき上げられれば背筋にゾクリとした何かが走ってしまい、シエルはヒュっと息を呑んで反射的にセバスチャンの身体に抱きついてしまった。
それを彼は待っていましたと言わんばかりに強く両腕で抱きしめ返し、耳元で「可愛いですね」と囁くものだから、逃げる力など根こそぎ奪われてしまう。

「好きです、坊ちゃん」
「うるさい」
「好きですよ」
「・・・しってる」

だからもう言うな。これ以上僕を溶かしてどうするつもりだ。
そうやって罵ってやりたいけれどそんなことを言ったら自分がどうなってしまうのか目に見えているのだから、随分と学んだものだろう。

「じゃぁ坊ちゃんは?」

しかし次は逆に問われてしまう。

「坊ちゃんは私のこと、好きですか?」
「・・・顔に書いてあるんだろう?」
「貴方の口から聞きたいんです」

ハッキリとそう言われれば上手く誤魔化そうと思う気持ちまでも奪われてしまい、うぅ・・・と呻く羽目になった。
こんなことになるならばさっき言ってみろだなんて言わなければ良かった、なんて嘆いても後の祭り。
じゃぁ、とセバスチャンの背中に回っている手の人差し指を伸ばし、彼の背中に文字を書こうとすれば再び、聞きたいのです、と追い討ちを掛けるかのように強い口調で言われてしまう。

「本当に貴方は慣れませんね」
「こんな恥ずかしいこと、慣れてたまるかっ」
「そうですね。身体を重ねる時もまだ初々しい反応をしますしね」
「だからっ!お前がそういうことを言うから恥ずかしく感じるんだろうが!」
「おや、それは申し訳ありません」

ではもう何も言いませんので。そう言葉を切り、黙ってしまう。
きっともう何も言わないから、いつでも安心して“好き”だと言えばいいという意味なのだろう。
これを優しさと取るか意地悪と取るかは人それぞれ、そして悪魔それぞれだと思うが自分は後者を取る。
だがこのまま文句を重ねても、きっと彼は自分が“好き”だと言うまで許さないに違いない。

「~~~~~~っ」

たったの二言がこんなにも恥ずかしいだなんて、不思議なものだと余裕ぶっても恥ずかしいものは恥ずかしい。
早まる鼓動はどうせバレてしまっているからもういい。
シエルは大きく深呼吸し、抱きつく腕をより強くする。

「・・・好き、かもしれない」
「かも?」
「~~~~~す、きっ」

ぎゅっと瞳を閉じてそう言えば、急に身体を引き剥がされ、しかしすぐに唇に柔らかい感触が襲い掛かった。

「ん、ふぅ・・・」

だが柔らかく優しい口付けは一瞬。
すぐに口腔に彼の舌が潜り込み、荒々しく内を犯していく。
それでもその荒々しさの中にも此方を気遣う心が見えて、心がギュッと苦しくなる。
自分の思うままに貪ってしまうことをしないセバスチャンが、少しだけ憎い。
だって、彼の欲望を満たしたいと願えば、自分から動かなければいけないのだから――――

「ふ、んぁ・・・うン」

熱に浮かされながらも、その熱にのみ込まれてしまわないように自らも舌を絡め合わせ相手を求める。
唾液を流し込まれ飲み込み、そしてやり返すように唾液を流し込む。
くちゅ、くちゅりと水音が耳を刺激し、大胆になってしまった自分を恥ずかしく思うのもいつのもことで。そしてそれを慰めるように“よくできました”とセバスチャンが頭を撫でてくれるのもいつものこと。

唇が離れたときにはもう息も絶え絶えで、それでも彼はもっと先を強請ってくる。
悪魔になったにも関わらずどうしてこんなにも翻弄されてしまうのだろうと思わなくも無いが、この息苦しさが心地いいのかもしれないなんて思ってしまうのは、それだけ彼に絆されているのだろう。

「セバスチャ、すとっぷ」
「ん?どうしました?」

しかしふと、とてもどうでもいい疑問が浮かび上がりセバスチャンを止める。
彼はその手で身体を撫でることはやめないものの顔は上げ、シエルの顔を覗きこんでくる。
その瞳は情欲に熟れており、必死に己を律しているのが窺えて、こんな疑問で止めたのが少し可哀相だったかな、とか。
それでも気になってしまったのだ。仕方が無いだろう。

「いま、何時だろう」
「・・・・・」

予想通りセバスチャンはシエルの疑問に思い切り眉を顰め、ため息をついた。

「今ここで気にすることですか」
「気になったんだから仕方が無いだろう」

実を言うと、この一子纏わぬ姿でいるのも何日目なのかすら分からない。
眠いと感じたら眠り、目が覚めたら愛する者と身体を繋げる・・・そんな怠惰な生活をずっと続けているのだ。
今が何時なのかどころではなく、今が何時(いつ)なのかも分からない。
だがふとこんな疑問が浮かんだということは、きっと自分が思っている以上に時は過ぎているのだろう。
悪魔にとっては少しの時間が人間にとっては多大な時間・・・―――悪魔にとってもかなりの時間が過ぎたと感じるならば、人間にとってどれほどの時が流れたのだろうか。
もしかしたら人間の人生ひとつ以上の時間が終わっているかもしれない。
しかしセバスチャンは何てこと無いように淡く微笑んだ。

「たとえ今が何時であろうが、いまは今ですよ」

貴方と私が一緒にいる。
愛し合っている。
それに時の刻みなど必要ですか?

「このベッドに沈む生活が少し飽きたら外に出てみればいい。そのとき他のことに手を出せばいいのです」
「・・・飽きるときなど来ないかもしれないぞ?」
「それなら――――」

永遠に、






What time is it now?

―――― It’s s
weet time!!




彼のその答えに、シエルは声を立てて笑った。




******

相互リンクをしてくださった『九条静音の黒執事妄想劇場』の九条静音様へ捧げます!!
『時間も忘れてイチャイチャする二人』という素敵なリクエストを頂き、久しぶりにしっとりラブを書かせていただきましたv
いやいや、凄く楽しかったですwww
素敵なリクエストを活かしきれているか不安が残りますが、罵倒やり直し何でも仰ってくださいね!!

本当に相互リンク、ありがとうございました!
これからも宜しくお願いします(≧▼≦)/

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【2011/10/26 18:39 】 | Gift | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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