真夜中の時間。世界は暗闇に包み込まれる。
ここファントムハイヴ家の屋敷は街からは遠く、街灯の光など届かない。
屋敷の部屋の明りまで消えた今、空に輝くものたちの明りを頼りにするしかないだろう。
空に浮かぶ満月の光だけが、今この屋敷を支えている。
いや、逆にもしかしたらこの光のせいで己の姿が見つかってしまう恐れもあるのだが。
「ったく、アイツは本当に碌なものを運んでこないな」
「それについては激しく同意しますね」
そんな恐れを省みず、屋敷の屋上で二人は空を見上げた。
その姿は月明かりに照らされ、まるで舞台の上でスポットライトを浴びているよう。
「今回の件が終わったら絞め殺してやる」
「……えぇ」
ですがその前に。
一人の言葉に、もう一人が頷きつつ見上げていた首を真っ直ぐに戻す。
その声はどこか威嚇しているようで、彼特有の雰囲気が漂い始めていた。いや“あの日”からずっと彼はどこか警戒していた。
それくらい今回の件は…―――
「私たちが殺されないようにしなければいけませんね」
厄介だ。
「そうだな」
輝く満月を見つめたままクスリと笑い、彼と同じように首を戻して視線を地上へと。
ゆっくり、ゆっくりと戻せば、だんだん視界に入る相手の姿。
いつの間にここに来たのかは聞かない。きっと聞いたって答えることはないだろうから。
相手は同じ屋上にいるというのに、スポットライトを浴びることなく暗闇を纏っていた。
まるで己の本当の舞台はここでもないとでも言うかのように。
「さぁ…―――」
息を吸い、止める。
それだけで世界が止ったような気がするけれど、そんなことはない。錯覚だ。
だってほら、こんなにも、
残酷に刻は進む。
「ゲームの始まりだ」
吐いた息とその言葉に、相手は声を上げて笑った。
― GameⅤα―
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あとがき
どどんと来ましたGameⅤα(笑)
相変わらずの誰得文章となっておりますが、
是非ともお付き合い宜しくお願い致します^^

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