「最近のお前は妙だな」
「そうですか?」
「あぁ。人間らしくなった」
シエルは哂いながら言う。
「それは人間らしくしていろというご命令からでは?」
「いや、きっと違うな」
「・・・では何だと言うのですか?」
セバスチャンは哂わずに言う。
「さぁな。僕にも分からない」
分かっていたら、妙だという単語は使わないだろう?
言いながら空になったティーカップをセバスチャンに手渡す。
それを見ながらセバスチャンは。
まるで、これは貴方から向けられている感情ですね。
空っぽのティーカップを受け取り、セバスチャンはシエルに問いかける。
「坊ちゃん」
「何だ」
「人間らしくなった私はどう思いますか?」
「そうだな・・・」
シエルは少し考え込み、またすぐに哂い返す。
「扱いづらくなった」
「人間らしくなったのに?」
「人間らしくなったからだ」
人間の方が何を考えているのかよっぽど分からないだろう?悪魔。
その言葉にセバスチャンは苦笑する。
そう言われればそうだ。
悪魔は人間と違って、単純明快な生き物だから。
しかしその悪魔が人間らしくなってきたという意味は。
「じゃぁ坊ちゃんは、だんだん私の考えていることが分からなくなってきていると?」
「まぁ、いつも分かっていたわけではないが。予測がしづらくなってきた・・・ということだな」
「それは、ようござました」
「嫌味か?」
「いえ、本心です」
自分のことなど分かってくれなくていい。
むしろ、分かられたら困るのだ。
このティーカップ一杯に貴方への想いがあるなんて。
セバスチャンは自嘲気味に笑いながら、空のティーカップを指で弾いた。
END

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