聞こえないふり。
だって奴は僕のことを追い詰めてくるから。
愛しているとか、そんな攻撃的な言葉、僕が受け止めると思っているのか。
「泣きそうな、顔していますよ」
そう言って包み込んでくる手は冷たくて、普通はこういう時は温かいものだろうと違う方向に思考を飛ばす。
温かいからといって絆されるわけでもないのだから、冷たくても別に構わないのだけれど。
「坊ちゃん」
欲しくない。
僕は聞かない。
僕にはそんな攻撃効かない。
全て排除。
無意味なものは不必要。
暗転、暗転、暗転。
終焉、終焉、終焉。
忘却、忘却、忘却。
だって。
「泣かないでください」
僕はまだ生きなければいけないのだから。
けれど世界は。
展開、展開、展開。
始動、始動、始動。
追憶、追憶、追憶。
震える声。
「僕を弱くさせるな」
それは無意識に。
囁く声。
「じゃぁ二人で強くなりましょう」
それは意図的に。
低い声。
「僕は独りでいい」
それは反射的に。
甘い声。
「じゃぁ二人で独りになりましょう」
それは愛情的に。
そして。
「僕はお前が嫌いだ」
そのまま唇が触れ合ったのは。
必然的に。
End

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