― 悪魔でナースですから ―
とあるところに、ブラックバトラー病院がありました。
その病院には色々な人が入院をしているのですが、その中でも一番目を惹く容姿をしているシエル・ファントムハイヴという少年がいました。
しかしその少年は容姿とは違い、酷く気難しい性格をしていて、あまり自分から人に関わろうとはせずに個室の病室で一人本を読んでいるような子なのです。
それでも本当は温かくて優しい心を持っているので、周りの人からは愛されている存在でした。
「おはよう、シエル君」
「おはようございます、アバーライン先生」
「おはようございます、坊ちゃん」
「・・・おはようございます、ミカエリスさん」
「そんなミカエリスさんだなんて他人行儀な呼び方ではなく、セバスチャンと呼んでくださいといつも申しておりますでしょう?」
「いえ、他人行儀で結構です」
その中でも、シエルを愛して愛して愛しているのは、セバスチャン・ミカエリスというナースでした。
セバスチャンはブラックバトラー病院の中で一番優秀なナースであり、シエルの担当をしています。
「今日は顔色が随分といいね」
「はい。アバーライン先生がくださったお薬のおかげで凄く体調が楽なんです」
「それは良かった。でも無理は禁物だよ。シエル君は元々身体が弱いんだから」
「大丈夫です、坊ちゃんのことは私がじっくりと見ていま」
「はい、先生。気をつけます」
元々シエルは身体が弱く、今回は風邪をこじらせてしまい、ここの病院に入院したのです。
ここの病院に入院するのは別に始めてではなく、幼い頃から何度もお世話になっています。
なので、すでにアバーライン先生とは気を許しあう仲なのでした。
「それじゃぁ、何かあったらすぐに言うんだよ。絶対に隠さないこと。我慢しちゃダメだよ」
「クス、分かりました。絶対に言います」
「それじゃぁ、ミカエリス君。頼んだよ」
「はい、お任せください」
「・・・先生、あの。このナースを別のひ」
「さぁ先生、お時間が危ないですよ。次の患者様の方へ向かわないと」
「あ、本当だ。そしたらまたね、シエル君」
アバーライン先生はニッコリと笑い、シエルとセバスチャンを置いて病室から出て行ってしまいました。
「・・・」
「さぁ坊ちゃん。やっと二人きりになれましたね」
「・・・僕はミカエリスさんと二人きりになりたくないんですけど」
「またそんなことを仰って。恥ずかしがらなくていいんですよ」
「一度その脳をかち割って、一体どんな馬鹿が詰まっているのか見てみたいですね」
「おやおや、そんなに隅々まで私のことを知りたいのですか?」
「・・・もういいです」
「では、まず熱を測りましょうか」
セバスチャンは医療用具を載せているワゴンから体温計を出します。
シエルはやれやれとため息をつきながら、体温計を受け取ろうと手を伸ばしますが。
「では坊ちゃん、上を脱いでください」
「・・・は?」
セバスチャンは体温計を持ったまま、シエルが上半身を起き上がらせているベッドに腰を掛けてきます。
「体温を測るのに服が邪魔でしょう?」
「いや、邪魔ではないですけど」
「もし寒いようでしても、私が抱きしめていますのでご安心を」
「どこが安心できるんだ。むしろ不安だろうが」
「さぁ、坊ちゃん。バンザーイ」
「だから!どうして服を脱がされなくちゃいけないんだ!その体温計をさっさと渡せ!」
「え~、だって私が坊ちゃんの脇に体温計を挟んでギュっと押さえなければいけないのですよ?」
「なんで貴様なんぞに体温を測ってもらわなくちゃいけないんだ!一人で測れるだろうが!」
「そんな我侭言わないでください。坊ちゃんはか弱いのですから、押さえが不十分かもしれないでしょう?」
「筋は通るかもしれんが、その赤い顔と鼻息の荒さで言われても説得力がないわっ」
「では・・・私から脱ぎますよ?」
「一体どういう話しの流れになってるんだ貴様はぁぁぁぁ!!!」
シエルは睨みながら怒鳴れば、セバスチャンはシィーと人差し指で唇に触れてきます。
「坊ちゃん、ここは病院ですよ?お静かに」
「う・・・でも、お前が」
「それに、せっかく良くなってきた体調がまた悪くなってしまうでしょう?」
「ちょっ、顔近い!離れろ!」
「ほら、こんなに顔も赤くなされて。もしかしたらまた熱が上がってしまったのかもしれませんね」
「~~~~っ」
「ほら坊ちゃん。熱を測りますよ」
セバスチャンはシエルのパジャマの裾からそっと手と体温計を差し込み、お腹から上へ上へと手で触れながら辿っていきます。
直接触られたシエルは危うく変な声が出そうになり、抵抗するよりも先に自分の口を手で押さえました。
それを見たセバスチャンはクスリと笑い、脇まで辿り着くと体温計をそっと押し当て、そのままシエルを抱きしめ始めます。まさに先ほど言った台詞通りに。
「ちょ、ミカエリスさん!」
「暴れたら正確な体温が測れなくて、もう一度測りなおしになってしまいますよ?」
「こんなのをもう一回だなんて、やってられるかっ」
「ではいい子にして。ね?」
「くそっ」
「宜しいではないですか。こんな素敵なナースに抱きしめられて」
「何が素敵なナースだ。僕にとっては迷惑きわまりない」
「では、なぜこんなにも鼓動が早いのでしょうかね?」
「っ!!」
セバスチャンはシエルを抱きしめているので、シエルの心臓の音が身体に伝わってくるのです。
「そ、それは・・・熱が出て・・・」
「・・・吐き気はありませんか?」
「・・・ない」
「だるいとか」
「平気だ」
「では」
耳元でセバスチャンはそっと囁きます。
「触れて欲しいところは、ありませんか?」
ピピピピピピ!!!
「な、鳴った!体温が測り終わったぞ!さっさと離れろ!」
「ちっ。いいところだったのに・・・」
セバスチャンはナースらしからぬ舌打をしながら、渋々シエルから離れ、ベッドから降ります。
これでも優秀なナースというところが、世の中の恐ろしいところです。
「では坊ちゃん。体温計をこちらに」
「・・・」
「坊ちゃん?」
シエルは体温計を見たまま固まっています。
「どうしました坊ちゃん」
「あ、いやっ」
「さぁ、体温計を」
「36度5分だ」
「・・・体温計を」
「だから、36度ご」
「それは分かりました。しかし体温計を返していただかないとナースとして困ります」
「後で返す」
「今返してください」
「別にいいだろう。ケチケチするな」
「坊ちゃん!」
「あっ!」
セバスチャンは無理やりシエルの手から体温計を奪い、体温を確かめます。
「・・・」
「・・・」
「・・・37度8分」
「・・・」
「ちょっと額を失礼します」
「うわっ!」
「・・・“今”熱はないようですね」
「・・・その体温計が壊れているんだ」
「いいえ、壊れていません」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「坊ちゃん」
「何だ」
「・・・素敵な入院生活になりそうですね」
そうニッコリ笑うセバスチャン。
それを見ながらシエルはげっそりとし、この悪魔が・・・と呟くのでした。
END
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あとがき
「くさもち」のようとん様からいつも素敵な絵を貰ってばかりなので、その御礼を書かせて頂きました^^
(こ、今度ちゃんとしたものを捧げますからっ!!!!)
ようとん様のサイトの方でUPされていますセバナースにお話をつけたような感じですかねww
ほ、包帯は出てこなかったけど・・・^^;基本のベースは全てようとん様から聞きましたw
書いていて凄く面白かったです(笑)しかも続きが普通に書ける終わり方をしちゃったという。。。
しかしそれくらい書いていて面白かった・・・!!←
ようとん様、いつも素敵な絵をありがとうございます!
こんなもので宜しければ、是非もらってやってください><

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