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【2024/04/30 23:57 】 |
罪ばかりの密(子供)
子供の貴方。




その瞳が見ているものは、一体なんなのか。
――――栄光なる未来ではないことは確かだけれど。
そこには私もいるのかと不安になる。
彼の歩む道を考えれば、その瞳が綺麗だと悪魔の自分でさえも言えない。それでも彼の瞳はどこまでも澄んでいて、純度の高い水が鋭く凍ったかのような・・・そんなものに思えるのだ。
そんな彼を己の手の内に捕らえてしまいたいだなんて、なんたる罪深き想いなのか。
その瞳に自分が映っていたとしても、それでも足りないなんて・・・――――

「セバスチャン?」
「・・・どうされました、坊ちゃん」

ナイティのボタンを閉めている最中に名前を呼ばれ、こちらを覗きこむように首を曲げているシエルにセバスチャンは顔を上げた。
その表情はいつものようにしかめっ面であるけれど、どこか違和感を持っているような色が混じっている。
(どうしてこうも敏感なんでしょうね)
彼はその場の空気の変化を読むことがずば抜けて長けている。それは裏社会で生きるものにとって必要な特技であるだろうが、まだそれを身につけるには早い年齢だろう。
セバスチャンは内心で彼の“才能”の高さに舌打ちをした。

「何を考えていた」
「・・・悪魔の欲はどこまでも限りがないと」

主人の命令は絶対。
問われたことに嘘はつかず、正直に。

執事としてそれは当たり前のことだが、それはこの子供の為でもあるだろう。
自身以外を信用する事が難しい彼には、必要以上の忠誠心を見せなければ隣に立つことすら許さないのだ。
―――彼の大嫌いな孤独を自ら背負おうとするのだ。
出来ればそのようなことにしたくないという彼を想う気持ちと、自分だけを選んで欲しいという独占欲とで、セバスチャンは忠実な執事の役をこなしている。

時にその役の下から、恋人の姿を覗かせるときもあるけれど。

「今更それがどうした」
「今更、ですか」

口角を吊りあがらせたシエルを見て、セバスチャンも苦笑する。

「悪魔が貪欲なのは元々だろう?」
「貪欲過ぎるのも困りものだということです」

欲しいものがありすぎると疲れる時もあるでしょう?
そう言葉を付け足せば、シエルも思うところがあるのかフンと鼻を鳴らし顔を背けた。
その横顔が蝋燭の淡い光に照らされ、どこか儚げに輝く。

「だが貪欲なのは悪いことではないだろう」
「・・・・」
「欲しいものがあるから前に進もうと思うし、成長もする。欲とは必要なものだ」
「そうですね」

シエルの言葉にセバスチャンは賞賛するかのように微笑んだ。
―――幼い彼はまだ知らない。その欲の汚さを。
もちろん彼の言う通り、欲があるから人は成長できるのだろう。だが、全てがプラスなわけではない。
感覚的に彼も知っているだろうけれど、まだ・・・まだ経験が浅いのだ。

(だから、ほら)

その純度の高い瞳を持つ彼を、

唆したくなる。


「坊ちゃん」
「んッ・・・・?!」

セバスチャンは何の前触れも無しにシエルの後ろ首に手を添えてグイと引き寄せ口付ける。
急に口付けられたシエルはこれでもかというほど瞳を大きくし、身体を震わせた。
その瞳に映るのは意地悪く微笑む悪魔の瞳――――
それが酷く嬉しくて、セバスチャンは震えるシエルのことなどお構いなしにベッドへ押し倒し、より口付けを深くしていく。

「ふ、ん・・・・お、い・・セバっんん!」

口腔に舌を捻じ込み、内を蹂躙する。
シエルに快感を植えつけるように、ゆっくりと、そして厭らしく。

「ふはっ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

唇を離した頃にはもう息も絶え絶えで、その頬を赤く染め上げていた。
そんな溶けたシエルすら、セバスチャンは追い詰めていく。

「ねぇ坊ちゃん・・・」
悪魔の欲を満たしてくださいね――――


そんな無理な注文を囁きながら、
閉めたナイティのボタンに、

再び手を掛けた。




罪ばかりの密

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【2011/11/13 17:49 】 | Project | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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