何度も口付けるのは、“今は恋人同士”だから。
今ならば、何をしても許される。
「恋人同士なのですから、当たり前でしょう」
この言葉で全ての言い訳をして、
限られた時間の中で彼を求める。
求めてしまう。
逃げているくせに。
でも。
もう少しでその時間も終わりを告げる。
作られた舞台は姿を隠し、まるで御伽噺のようにいつかは、12時の鐘が鳴り響く。
「坊ちゃん?」
「ッ…あぁ、なんでもない」
その証拠に、最早少しずつ魔法が解け始めている。
(あぁ…気が付いてしまったのですね)
先日から感じた違和感。
自分が口付ける度に何か言いたそう口を開くが閉じてしまう仕草。
それはきっと彼の、自分自身の気持ちに気が付いたからだ。
「何かありましたか」
「いや、少し寝ぼけただけだ」
「部屋に入っても?」
「…別に心配しなくても、もううたた寝などしない」
「嘘でしょう、坊ちゃん」
そう言ってしまったのは、本当は嬉しかったから。
やっと気が付いてくれたかと、本当は笑って。
「なにがだ」
「ぜんぶ」
抱きしめたいのに。
「どうだろうな」
なぁセバスチャン。
「あと2日間だ」
どうしてこの両腕は、最期に身体を傷つけることしか出来ないのだろう。
「…そうですね」
(貴方が好きです)
好きです。
貴方のことが。
(だから)
守りたい。
(弱虫)

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