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【2017/03/28 09:26 】 |
イツワリの関係
ちょっと切ない?(R15くらい)


― イツワリの関係 ―

「さぁ坊ちゃん、そろそろお休みになられてください」

セバスチャンは燭台を片手に持ちながら、執務室へと顔を覗かせる。
視線の先には己の主、シエル・ファントムハイヴが書類と睨めっこをしていた。
先ほどお風呂に入ったばかりなので、まだ髪は乾いておらず、軽く湿っている。

「もう少しくらい平気だろう」

シエルはセバスチャンの言葉には従わず、新たな書類を手に持つ。
仕事熱心なのはいいが、身体を壊しては元も甲も無い。
セバスチャンはため息をつきながら執務室へと足を踏み入れ、近くの小さなテーブルに燭台を置き、シエルへと近づく。

「明日のお仕事に響きます」
「大丈夫だ。それにまだ眠くない」
「眠くなくても、横になられていた方が身体が休まるんです」
「煩いな。平気だと言っているだろう」
「やれやれ、困ったお子様ですね」
「なに?」

シエルはピクリと反応する。
見ていた書類から目を離し、苛立ちを隠さずに目の前にいる執事を睨みつける。
セバスチャンは微笑みながらも冷たい瞳で見つめ返す。

「眠るのが怖いのですか?」
「・・・何の話だ」
「私が知らないとでもお思いで?」

セバスチャンはシエルの手にある書類を掴み挙げる。
そして机の上に散らばっている書類をもかき集め一緒にし、自分の手の内へと収めてしまう。
これではシエルは仕事の続きが出来ない。
けれど今はそれを気にしているところではなかった。

「お前は何を知っている」

シエルは呻くように聞く。

次に言われるであろう答えは分かっているが、聞き返さずにはいられない。
セバスチャンもシエルが次の答えを知っていると分かっているのだろう、酷く人を馬鹿にしたような声で、

「昨晩、悪夢を見たでしょう?」

と楽しそうに言う。
それが執事としての態度か、と言いたくなるがコイツがこういう奴だというのは心から知っている。
コイツは執事であろうが、駒であろうが、本性は悪魔なのだ。
信用してはいけない、隙を見せてはいけない、弱みを見せてはいけない。

「だから眠るのが怖いのでは?」
「そんなわけあるか」

シエルはセバスチャンの言葉を一蹴する。

「確かに悪夢を見たかもしれないが、これとそれは全く関係ない」
それよりも。
「どうして僕が悪夢を見たことをお前が知っている?」

シエルは椅子に凭れ掛かりながら、指を交差して組んだ膝の上に置く。
そして目を細めながらセバスチャンの表情を伺う。

「人間が悪夢を見ると、気配が揺れるんですよ」
「揺れる?」
「えぇ。人間の貴方には分からないかもしれませんが、精神状況が悪くなると存在自体もよろしい状況ではなくなり、安定していた気配が揺れるんです」
「まぁ、僕が眠っている間に夢の中を覗き見したワケじゃないならいい」
「おや、執事が主人の夢を盗み見るなんてことなさいませんよ」

まるで心外ですね、とでも言いたそうな口ぶりだ。
しかしその裏には。

「だが悪魔は盗み見るんだろう?」

シエルはニヤリと哂う。
裏を読み取ったシエルに満足したのか、セバスチャンも哂いながら、えぇ、と答える。

「悪魔が人間の夢の中へと入り込むのは他愛無いことですから」
「じゃぁ、今度から悪夢を見た時はお前の名前を呼ぼうか」
「夢の中の坊ちゃんまで助けないといけないのですか?骨が折れますね」
「どうせ夜は暇だろうお前。丁度いい暇つぶしの時間になるんじゃないか?」
「労働は暇つぶしにはなりませんよ。ですが」

セバスチャンは腕を伸ばし、シエルの眼帯を外す。
そして目線の高さを合わせて、両方の瞳を覗き込む。

「貴方の瞳が恐怖に染まっている姿を見るのは、いい暇つぶしになるかもしれませんね」
「・・・この悪魔が」
「よくご存知かと」
「ふん」

シエルは瞳を覗き込む悪魔がうっとおしくなり、手で虫を追い払うようにセバスチャンを払う。
すると鼻で哂いながら元の立ち方に戻り、ニッコリと笑う執事の顔へと戻る。

「ではお喋りはこの辺にして、本当にベッドの中へとお入りください」
「あぁ。書類も取り上げられたら仕事の続きも出来ないしな」
これ以上、お前と話していても疲れるだけだ。

シエルは音を立てながら椅子から立ち上がると、いつの間にか手に持っていたガウンを肩から掛けられる。
一瞬何かと思って顔を上げると、お冷えになりますので、と優しい声を掛けられる。
先ほどはあんな嫌味ったらしい悪魔だったのに、この変わりよう。

反吐が出るな。


しかしシエルは平然と、あぁ、と肩から掛けられたガウンを自分の方に引っ張りながら答える。
セバスチャンは机に乗っかっている眼帯をポケットに入れ、燭台を手に持つと扉を開けて、シエルを寝室まで誘導する。その間二人は無言で、互いの足音だけが妙に暗闇に響いていた。

こうやって二人で無言になることを、気にするわけではないが・・・。

寝室へと歩きながらシエルは考える。

嫌味な会話をした後に訪れる沈黙というのは正直落ち着かない。

仕事の話しをした後の沈黙。馬車の中での沈黙。それならばあまり気にはしない。
別に二人は仲良しなワケではないのだ。和気藹藹(わきあいあい)と話しをすることもない。
それでもよく、仲が良いと勘違いされるのだけれど。

寝室へ着くとセバスチャンが扉を開け、シエルは中へと入っていく。
そしてベッドに座り、いつものようにセバスチャンがナイティを着せるため服を脱がし始める。
お風呂に入った後の軽装なので、普段着と比べたら脱がせるのは簡単だ。
ナイティを着せるのに、それほど時間は掛からない。
しかし。

「坊ちゃん」

セバスチャンはゆっくりとした動作でシエルの服を脱がしていく。
早く寝ろと急かしたのだから、さっさとすればいいものを。
けれどその意図を理解したシエルは、大きくため息をつく。

「何だ」
「おや、随分と大きなため息ですね?」
「どうしてため息をついているか分かるか?」
「いえ?理由をお聞きしても?」

クスリと哂いながら全てのボタンを外し終えた服を肩から下ろす。
その瞳は赤い。
再び執事の姿から悪魔の姿へと変化したセバスチャン。
ずっと悪魔と会話をするのは疲れるが、執事の姿と度々入れ替えられると色々戸惑う。
というか、執事の姿が気色悪い。
けれどそれを言ったら、きっとセバスチャンは、あくまで執事ですから、と鼻で哂うのだろう。

「お前の相手をするのも疲れると思ってな」
「おや、そうでしたか。てっきり私はこの後の甘美な時間を想像してため息をつかれたのかと」

セバスチャンはナイティを肩から掛ける。けれどボタンを掛けようとはしない。
まぁ、一応寒くないように気遣っているのか。
悪魔の中に見える、執事の姿に苦笑するとセバスチャンの手が頬に触れる。
親指で撫でる仕草はとても優しげで、その感触もとても心地いい。
その手でずっと触れていて欲しいと思えてしまう。
けれどシエルは乾いた音を立てながら、その手を払う。

「僕に触るな」
「おや、気持ちよさそうな顔をしていましたが?」
「ふざけたことを言うな。さっさと着替えさせろ」
「甘美な時間は過ごされないのですか?」
「そんな時間はいらない」

シエルは怒気を含ませながら吐き捨てる。
それは己にも言い聞かせるため。
肩に掛かっているナイティに自分で袖を通す。
けれど自分でやることなどほとんどないので、片方の袖に通すだけで時間が掛かる。
それでもシエルは必死にナイティを着ようとする。

「では坊ちゃん、悪夢を見ないおまじないはいかがです?」

服さえまともに着られない主人を愉快そうに見つめながらセバスチャンは提案する。

「おまじない?」

シエルはピタリと動きを止める。

「はい、きっと悪夢を見ずに眠れますよ?」
「・・・お前がおまじないをするのか」
「ここには私しかおりませんので。僭越ながら私が」
「どんなおまじないだ?」
「そうですね。一部分にだけ触れさせていただきます」
「一部分に触れる?」

シエルは怪訝そうな顔をしながら首を傾げる。

「はい、たったの一部分です」

セバスチャンは執務室の時のように目線の高さを同じにする。
しかし先ほどの執事の瞳ではなく、悪魔の赤い瞳。
胸がざわめく。
それは悪魔の瞳だから?
それとも。
セバスチャンの本当の瞳だから?
シエルは目の前にある赤い瞳を睨みつける。

「一部分ってどこだ」
「それを言ってしまうと、おまじないの効力が無くなってしまいます」
「どこに触れるか言えないのか。なら信用無いな」
「おや、どこか触れて欲しくないところでもあるのですか?」

セバスチャンは睨みつけてくるシエルに挑戦的に言う。

「たかが一箇所ですよ?触れられたらマズイことでも?」
「別にどこに触れられても何ともない。でも」
「なら大丈夫でしょう?」

シエルの言葉を遮り、再び頬へと手を伸ばす。

「どこに触れられても何とも無いのなら、問題は無い筈です」
それとも何か恐れているのですか?


馬鹿にした物言いにシエルはカチンとくる。
それがセバスチャンの狙いだと分かっていても、黙ってなどいられない。
主人は自分なのに、今はこの悪魔が主導権を握っているような気がしてならない。
しかし主導権を自分に戻すならば、セバスチャンの言う『おまじない』とやらをやるしかなさそうだ。
悪魔に『悪夢を見ないおまじない』をやられても、悪夢しか見ない気がするが・・・。仕方が無い。

「僕が一体何に恐れるって言うんだ」
「では」
「あぁ。付き合ってやる」
「それでこそマイロード」

セバスチャンはサラリとシエルの髪をかき上げ、耳に掛ける。
まるで恋人同士のようなやりとりにイライラし、早くやれ、と声を掛けると

「では、目を閉じてください」

と、囁くように言う。
シエルは言われた通り目を閉じる。
視界は遮断され、目の前には暗闇が広がる。
けれどその暗闇の中にセバスチャンがいることを気配で感じることが出来る。

「では、触れますよ?」

何も見えない中で囁かれる言葉に、一瞬ピクリと反応する。
見えない分、一体どこに触れてくるのかが余計に分からないので無意識に身体に力が入る。
鼓動が早く感じるのは緊張しているせいか、またはどこに触れられるのか分からない恐怖か。
シエルはギュっと拳を作り、セバスチャンの行動を待つ。
すると。


「ん?」

一瞬唇に柔らかい感触が。
まさか。

「セバスぅん・・・?!」

名前を呼ぼうとしたところ、唇が塞がれる。
これはどう考えてもキスされてる?!
シエルは目を開くと、近すぎる位置に赤い瞳が。
目が合ったと分かるとセバスチャンの瞳がニヤリと哂う。
くそ、コイツっ!!
シエルは胸を叩くがビクともしない。


セバスチャンとのキスは別に初めてではない。
とおに身体も重ねているし、なんてことはない。
けれど、こういう行為は未だに苦手だった。
なぜなら。


悪魔の手に堕ちてしまいそうだから。


「ん・・・んン・・・!!」

セバスチャンの唇が、シエルの唇を必要に啄ばむ。
いつもならば舌が入ってくるのに、その気配はない。
一部分というのはこういうことか・・・!!
シエルは内心舌打ちをする。
口内に舌を入れたら、触れるのは一部分だけではない。
セバスチャンはそれをきちんと守っている。

「ン・・・セバス・・・ふぅ・・・」

唇だけを何度も何度も啄ばむ。
優しく、時に強く。
これはヤバイ・・・。
シエルは白くぼやけてくる思考で考える。
いつもならば、もう舌が口内を犯しているというのに、今日は唇を重ねるだけ。
それが物足りなく感じてしまっている。

これはキスじゃない。ただのおまじないだ。

そう思っても、欲する思いが強くなってしまう。

「う・・・んン・・・」

もう嫌だ・・・。
シエルは力の入らない手で、セバスチャンの服を掴む。
すると舌を吸う時のように唇を吸われ、少しだけ唇が離れていった。

「はぁ・・・はぁ・・・セバス、チャン」

シエルは崩れ落ちそうな身体を、セバスチャンの服にしがみつきながら必死に支える。
今セバスチャンの両腕はシエルの脇、ベッドの上にある。
ここでシエルを支えたり、抱きしめたりしたら『おまじない』ではなくなるからだ。
『おまじない』で触れていいのは一部分だけ。
セバスチャンが触れていいのは唇だけだ。

「おや、随分と甘い顔をしていますね」

セバスチャンは低く囁く。

「きさ・・・ま、もともと、こうする・・・」
「お静かに坊ちゃん、まだおまじないが不十分です」

また唇を寄せてくる。

「もう、いい・・・ぅンっ!!」

再び開始される口付け。
しかし今度は。

「ふぁ・・・」

そっと唇に舌が這う。
その瞬間ゾクリと背筋が震える。
セバスチャンの手はベッドの上にあるというのに、まるで身体全身に触れているかのような錯覚。
いつもこの後にセバスチャンがどう触れるのかを、身体が憶えてしまっている。

「や・・あァ・・・」

口が開いたというのに、セバスチャンの舌は唇を辿るだけ。
時折、音を立てて唇を吸い上げるソレは、余計に物足りなさを感じさせる。
もうシエルは唇だけじゃ、足りなくなってしまっていた。
そんな溶け始めたシエルを、セバスチャンは愛しそうに赤い瞳で見つめる。

「坊ちゃん・・・?」

唇を離し、声を掛ける。
決して他の部分には触れないで。しかし耳元で。
息を荒くしたまま反応を返さないシエルに、セバスチャンは悪戯に耳に息を吹きかけると、

「やっ・・!」

赤い顔をして、ベッドへと横向きに倒れた。
どうやら耳に息を吹きかけた反応で、セバスチャンの服から手を離してしまったらしい。
シエルが倒れたことによって、セバスチャンが上に覆いかぶさるような形になる。

乱れる息に赤い顔。
震える体に甘く溶けた瞳。
セバスチャンは無意識に舌なめずりをする。

ここまで溶かせば、きっとキスだけでは物足りないだろう。
そしてシエルは自ら甘美な時間を欲してくる。
さすれば『おまじない』は完成だ。

疲れ切った身体になれば、悪夢は見ないでしょう?坊ちゃん。

きっとシエルも『おまじない』には裏があると分かっていた。
だが、まさかこのようなことになるとは思っていなかっただろう。
さしずめ、悪魔に主導権を握られまいと、この『おまじない』の誘いに乗ったのでしょうが・・・。
その強き魂が仇となりましたね。
さぁ坊ちゃん。おねだりの言葉を聞きましょうか。
セバスチャンは笑みを浮かべたまま、坊ちゃん、と名前を呼ぶとシエルは甘い瞳をこちらに向ける。
そして濡れた唇から零れた言葉に、セバスチャンは一瞬目を見開いた。

「これで、終わり・・・だ」
「え?」
「もう・・おまじないは終わり、だろっ!」

シエルは震える体を自ら抱きしめながら言う。
まるでセバスチャンを求める自身を押さえつけるように。

「どけっ、セバスチャン」
「・・・」
「僕はもう寝るっ!」

眉を寄せた苦しげな表情。
それはそうだ。シエルの身体はしっかりと反応しているのだから。
寝ると言っても、このまま眠れるワケがない。
悪魔が部屋から出て行った後に、自分で処理をするのか。
それとも本当に身体の火照りが冷めるまで我慢するのか。
いや、そんなことはどちらでもいい。

こんな状態でも、自分を拒む姿にセバスチャンはゾクリとした。

シエルとセバスチャンは仲良しではない。和気藹藹(わきあいあい)と話しをすることもない。
けれど互いが想い合っているのを知っている。
セバスチャンがシエルのことを。シエルがセバスチャンのことを。
セバスチャンがシエルに愛していると囁いたことはない。
もちろん、シエルがセバスチャンに囁いたこともない。
にも関わらず、相手の想いを知っている。

解かってしまっているのだ。

なぜと聞かれたら、返答には困ってしまう。
そう感じるからとしか、言いようが無い。
長い付き合いだから解かったのかもしれないし、契約というもので繋がっているから解かったのかもしれない。

しかし、この二人は己の気持ちも、相手の気持ちも決して認めようとはしない。
知っているのに、解かっているのに、認めない。
否、知って解かっているから認めないのだ。
だからこそ、互いが互いを拒否し合う。

難しい関係ですね・・・。

セバスチャンは独り愚痴る。
だが、欲望は忠実だ。
たとえ己と相手の想いを認めなくとも、欲する想いは溢れるばかり。
特に悪魔の独占欲は強い。
だから、セバスチャンは悪魔としてシエルを誘惑し、引きずり堕とそうとする。
愛など掲げはしない。
ただ汚い欲望だけを掲げるだけ。

それでも人間は悪魔に誘惑されれば堕ちるものだ。
ただの汚い欲望だとしても、喜んで受け入れる。
最初に拒んでいたとしても。
だが、この少年は違う。
悪魔の誘惑や欲望を受け止めはするものの、受け入れはしない。
どれほど屈強な理性なのか。

今回もそうだ。
こんなにも甘く溶けてしまっているのに、セバスチャンを拒む。
キスは受け止めた。きっとこのまま手を出しても文句を言いつつも受け止めるだろう。
けれど自分からは欲しない。絶対に。
それは受け入れている気はないという意思表示。
お前を愛しているワケではないという聞こえない言葉。
しかしその裏には、愛しているという文字が描かれている。
愛するが故の拒み。
あぁ・・・なんと甘美な・・・。

「強情、ですね」

セバスチャンは声を掛ける。

「本当は欲しくてたまらないくせに」
「欲しくなど、ない」
「ではなぜそんなにも身体が震えているのですか?」
「・・・おまじないの副作用だ」

どこまでも否定する言葉に、セバスチャンは苦笑する。
相手を欲しているのはシエルだけではないのだ。

「もう、いいでしょう?」
「・・・」
「このまま溜め込んでも身体に悪いだけですよ?」
「うるさい・・・」
「本当に今日は苛立つくらい強情ですね」

セバスチャンはシエルの両手を掴んで、絡み合わせる。
ギュッと包み込むように力を入れると、弱々しくだが小さな手が握り返してくる。

「悪夢を見ないようにするには、疲れ果てて眠った方がいいのですよ」
「・・・」
「そこには無駄な感情など一切ありません。あるのは悪夢を見ないための方法にすぎない」
「・・・」
「それならばいいでしょう?坊ちゃん」

そう問いかけておきながら、セバスチャンは答えを聞かずにシエルの唇を塞ぐ。
今度は迷わずに舌を差し込んで、口内を激しく犯していく。
舌を強く吸ってやれば、嬉しそうな鳴き声が耳を満たす。
これが欲しかったのだ、とでも言うような声音。
いや、事実これが欲しかったのだろう。
『おまじない』の時のように、もう拒否の色は見せない。

セバスチャンも、もう無駄なお喋りはせずに隅々まで手で触れ、舌を這わしていく。
余裕なんてどこにもない。
二人は互いを求め合い、貪るように感じ合う。
本当はそれほどまでに欲していたのだ。
シエルも。そしてセバスチャン自身も。

「はぁ・・・う・・・んん・・・」

シエルは甘い吐息を漏らしながら身体を震わせる。
時折、自分の唇を噛んで声を殺そうとするが、そうするとセバスチャンが優しく口付けをするのでかみ殺しきれない。

「唇が傷ついたらどうするんですか?」
声も聞かせてくださいよ。

噛んで赤くなった唇を癒すように舐める。
その優しい舌にシエルも自然と舌を絡み合わせ、口付けへと深くしていく。
響く水音に耳までも犯され、二人はどんどんと煽られていく。

もう互いのことしか見えていない。




―――愛など掲げはしない。ただ汚い欲望だけを掲げるだけ。―――


それは本当だ。
シエルもセバスチャンも。
だが。


「坊ちゃん、力・・・抜いててくださいね」
「いっ・・・あ!!」

行為に愛を込めないことは無理だった。
セバスチャンは悪魔としてシエルを誘惑し、引きずり堕とそうとする。
愛など掲げはしない。
ただ汚い欲望だけを掲げるだけ。
けれど、愛を込めてしまう。
愛していると、身体全身で叫んでしまう。
掲げなくとも、勝手に込めてしまうのだ。

己の感情を認めたくない。
相手の感情を認めたくない。

けれど、認められたらどんなに楽だろう。

愛していると囁けたら、どんなに満たされることか。
愛していると抱きしめられたら、どんなに幸せなことだろうか。

まぁ、そんなことをしたら、二人の関係ではいられなくなってしまいますね。

お互いを拒否し合っているからこそ、保たれているこの関係。
両思いとは言えない、この関係。
しかし片思いとも言えない、この関係。

悪魔と人間に相応しい関係ではないですか。


「ねぇ・・・坊ちゃん・・・」
「んっ・・・なに・・・ぁ」
「気持ちいいですか・・・?」
「・・・きもち、わるい・・・っ!」

シエルは涙を零しながら、首を振る。

「それでいいですよ・・・」

セバスチャンは汗の粒が浮かぶ額に、ちゅっと口付ける。


私達の関係はこれでいい。
これが一番私達にお似合いですよ。
契約の間にある秘め事。
嫌味の裏に隠された愛情。
互いを拒否する防衛本能。

愛するが故の。


イツワリ。


END


******
あとがき
ズラズラ書きましたが、ようするに。
意地っ張りなんです。二人とも(笑)
そして、傷つくを恐れているんです。

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【2011/03/24 16:10 】 | Text | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
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