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一周年御礼(Sw,Sp,学,現)
― 七夕の過ごし方!! ― *Spicyの二人の場合 「明日は七夕なんですよ」 そう微笑みながら夜に星を見ようと言った彼は酷く楽しそうで、シエルはそれにそっぽを向きながら頷いた。 またどうせ何かを企んでいるに違いない。コイツが楽しそうな顔をする時は大抵自分にとって悪いことを考えているのだ。 しかしそう分かっていても、それを防げる力など悔しいことにどこにもなくて。 シエルはそっぽを向きながらため息を必死に押さえ、頷くことしか出来なかった。 「晴れて良かったですね」 「そうだな」 シエルは出る前に肩から掛けられた小さなタオルケットを胸元に寄せながら空を見上げる。 バルコニーから見上げる夜空は満点の星空で、綺麗だと素直に思った。 もしもここがロンドンのマナーハウスなどだったら、街灯の明りでここまで綺麗には見えなかっただろう。 夜空を見上げながらシエルの口元は自然に緩んでくる。 「坊ちゃんは織姫と彦星のことをご存知ですか?」 「たしか今日この日にしか会えないとかいう…」 急な問いかけに、幼いころ田中から聞いた話を思い出しながら言えば、隣でセバスチャンが頷いたのが気配で分かった。 「きっと今頃は天の川の上で二人の時間を楽しんでいるんでしょうね」 「…さっき晴れてよかったと言ったのは、その二人のことも指していたのか?」 まるで自分は優しい悪魔だというような台詞にシエルは怪訝な顔をしながら、視線を夜空からセバスチャンに映す。すると、さぁ、どうでしょうと悪戯気に笑う赤い瞳とぶつかった。 「まぁ、そう思わなくもないですよ。私が坊ちゃんと1年に1回しか逢えないとなったら寂しくて死んでしまいそうですから」 「気色悪いこと言うな」 肩に掛かっているタオルケットを引っ張って肩に掛け直しながら、セバスチャンを睨みつける。 「その織姫と彦星のことを同情しているように見せかけても可愛げなど微塵もないからな」 「酷いですね坊ちゃん。同情というよりも、もしも私と坊ちゃんが1年に1回しか逢えなかったら胸が苦しいと言っているのに」 「…そんなこと、お前が許す筈ないだろうが」 ボソリとそう呟けば、相手は笑みを崩さぬまま首を傾げた。 シエルの言った意味が分からないのか、それとも分かっていてわざと首を傾げているのか。 (どちらにしても苛立つ仕草だな…) やはりこの悪魔は何をしても可愛げなど微塵も無い。 舌打ちをしながら視線を夜空に戻し黙っていれば、坊ちゃん、と名前を呼ばれる。 「先ほどの言葉はどういう意味ですか?」 「どうせ分かっているんだろうが」 「私は坊ちゃんの口からその意味を聞きたいのですが」 相手は決して“分からない”とは口にしない。 イコールそれはほぼ“分かっている”と言っても過言ではないだろう。 いや、絶対に分かっていて聞いている。 その意地の悪さにそのまま無視していれば一歩相手は歩を進め、詰め寄ってくる。 「坊ちゃん?」 「…煩い、星を見ているんだ」 「見ながら言葉を発することくらい出来るでしょう」 「静かに星を見たいんだ」 「我侭な方ですね」 「誰が我侭だッ…!!」 ため息をつきながら言われた台詞にカチンときてセバスチャンの方を向きながら怒鳴れば、そのまま手が伸びて顎を掬い取られてしまう。 しまったと思ってももう遅い。捕らわれた後に逃げるなど人間の自分には不可能だ。 それはもう何度も経験していること。 「さて坊ちゃん。年に一度しか逢えないのを私が許さないとはどういうことですか?」 「…そのままの意味だ」 「では質問を変えましょう。どう許さないのですか?」 「・・・・」 「・・・・」 「・・・・」 「…キスしますよ」 「黙れこの変態がッ」 サラリと言われた言葉にシエルは顔を真っ赤にする。 (コイツはなんてことを真顔で言うんだ!) この悪魔は絶対に天の川に羞恥心を落としてきたに違いない。 でなければ、こんな台詞は絶対に口に出来ない筈だ。 「さぁどうします、坊ちゃん」 「~~~~~~っ」 ゆっくりと近づいてくる顔に、シエルは負けじと睨みつけるが、相手の顔が止ることは勿論なく。 結局シエルは渋々と口を開いた。 顔を真っ赤に染め上げたまま。 「……どうせお前だったら、天の川なんて簡単に跳び越してくるだろう?」 「無理にでも貴方に逢いに行くと?」 「…お前は欲望に忠実だから、どんなに止められたって邪魔されたって、自分のやりたいことは必ず実行する」 「よくお分かりで」 セバスチャンはクスリと笑う。 「たとえ私と貴方の間に大きな川が流れようが、強大な力を持つ相手に邪魔されようが、私は貴方を愛し求め続ける。坊ちゃんはそれを理解してくださっていたのですね」 「別に理解はしていない。ただ…」 「ただ?」 また顔が少し近づく。 唇に相手の吐息が当たり、余計に逃げたくなるけれど開放などされるわけがなく。 (くそッ) どうしてこうも自分から逃げ場を失うようなことを言ってしまうのだろうと思うけれど、それは全て言葉を引き出してしまう相手のせいにしておく。 そしてシエルは赤い顔のまま相手を睨みつけ、 「…ただ、お前の常日頃の行いを見て導き出した答えだっ」 そう叫べば。 「いい子ですね」 囁くように言われ、そのまま唇を塞がれる。 それは短い時間だったけれど、自分たちの上を流れ星が数個流れたことに気付かないくらい相手の熱を感じていて。 「……ほら、言ったって結局は口付けられるだろうが」 濡れた唇を肩に掛かっているタオルケットで強く拭った。 END →next PR |
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