― 今日も二人はラブラブです ―
「ん・・セバスチャン・・・」
シエルは少し唇が離れた隙を狙って声を掛ける。
「どうしましたか?」
とろけるような声音で、返すセバスチャン。
まだキスしたりないのか、今度はシエルの頬の方にチュッと音を立ててキスをする。
「そろそろ仕事に」
「もう少しいいじゃないですか」
『仕事に戻る』と最後まで言い切る前に、拗ねたようなセバスチャンの声が入る。
今は仕事の休憩時間。
スイーツを持ってきてくれたセバスチャンと、ほんの少し他愛の無い話しをしていたのだが、いきなりセバスチャンにキスをねだられたのだ。
シエルは文句を言いつつも承諾し、その口付けを許したのだが。
今度は離してくれなくなった・・・。
シエルは顔中に降る口付けの雨を受け止めながら、内心困っていた。
シエルもキスをするのは全然構わない。むしろセバスチャンとのキスは好きだったりする。
けれど、この後もまだ仕事があるのだ。
急ぎのものはないとしても、甘い時間に流されるシエルではない。
シエルは優しくセバスチャンの背中を叩く。
「少しだけと言っただろう?セバスチャン」
「もう少しだけです」
「ダメだ。そう言っても、お前もう少しじゃ止まらなくなるだろう」
そう言うと、セバスチャンは、うっ・・・と詰まってしまう。
ほらな?だからダメなんだ。
シエルは苦笑する。
「よ、夜まで少し待て」
「そんな可愛いこと言われたら、待つしかないじゃないですか・・・」
セバスチャンはため息をつきながら、ぎゅーっとシエルを抱きしめる。
その力強さが嬉しくて、シエルは無意識に口元が緩んでしまう。
「このまま抱きしめててはダメですかね?」
「・・・それはセバスチャンに抱きしめられた状態で仕事をしろと?」
「はい。決して邪魔はしませんから」
「・・・無理」
「どうしてですか!」
「仕事に集中できないだろうがっ!」
シエルは抱きしめられた状態のまま、真っ赤な顔で叫ぶ。
この執事は冗談を言うことが少ない。
きっと今の案も本気だろう。
シエルは絶対無理だと首を振る。
「どうしてもダメですか」
「ダメというより無理なんだっ!」
「人形のように黙っていますよ?」
「だから無理だって!」
「・・・ケチな主人ですねぇ」
「ケチとかそういう問題じゃない!!」
本当にコイツは!!
シエルは力強く抱きしめるように見せかけて、首を締め上げる。
「ぼ、ぼっちゃん・・・くるしい、くるしいです」
ギブギブ!!というように、シエルの腕を叩くセバスチャン。
「まったく・・・」
シエルは首を絞める腕を緩め、セバスチャンを開放する。
「ほら、僕は仕事に戻るから。お前も仕事に戻れ」
「はぁ・・・どうしてそんなに仕事をしたがるんですかねぇ。この坊ちゃんは」
「・・・なんだ、何か文句あるのか」
「いえ、何でもありません」
セバスチャンはニッコリと微笑む。
しかし次は何かに気がついたようにハッとし、シエルの耳元に口を寄せる。
「あ、そうだ坊ちゃん」
「なんだ」
「考えていて欲しいことがあるんです」
「ん?」
シエルは耳元で囁くように話すセバスチャンに疑問を憶えつつも、耳を傾ける。
するとセバスチャンは。
「今晩、私の手でどこをどのように触れて欲しいか考えておいてくださいね」
恥ずかしい台詞を耳に注ぎ、首筋を舐め挙げた。
「んなぁ?!」
シエルは真っ赤になって耳元を押さえ、のけぞる。
~~~~!!本当にコイツはぁぁぁぁ!!
「変態執事!!!」
シエルはセバスチャンの耳元で、屋敷全体に聞こえるほど大声で怒鳴った。
その後。
「うぅ・・・」
結局、セバスチャンが抱きしめていようが抱きしめていなかろうが、シエルは仕事に集中できなかった。
END
****
あとがき
バカみたいに甘い二人が書きたかったんです(殴

PR