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【2017/03/28 09:32 】 |
初心者
オフ会にてメールで押し付けた文章(笑)





 “付き合う”とは、どういうことなのだろうか。
気持ちを伝え、そして奇跡的に結ばれた。では、そのあとは?
相手は人間だ。悪魔の餌となる存在。
まぁ、それを愛してしまったのは天と地がひっくり返るほどのことだが、後悔はしていない。
まず後悔するようなくらいの気持ちであったのならば、自分から気持ちを伝えることはなかっただろう。
――――では、そのあとは?

「坊ちゃん、紅茶をご用意致しました」
「あぁ、そこに置いておけ」

付き合う前と付き合っている今、自分たちの関係は全く変わっていない。
主と執事。契約者と悪魔。
恋人同士という言葉はどこか夢の彼方の言葉のように感じる。
自分たちは確かにその関係だというのに。

「・・・・」

仕事をする彼の邪魔にならないように作業をしている机の端にカップを置き、一礼する。
けれどそれに反応することもなければ、礼を言うこともない。
当たり前だ、彼は主で私は執事なのだから。
けれど。確かに夢の彼方のような言葉に感じるとしても、自分たちの関係は“恋人”なのだ。
(好きな者同士、付き合うと甘い雰囲気になると思っていましたが)
その知識は間違えだったのだろうか。
だって今この空気はまったく甘くなく、むしろどこか冷たい。早く出て行ってしまえと言われているような。

「坊ちゃん」

そう考えれば胸を占めたのは、むっとした気持ち。
悪魔である自分が人間の恋愛を理解できるとは思っていない。けれどシエルが何かをしたいとか、何かをして欲しいということがあるのならば、出来る限りそれをしてやろうと思っている。それなのに彼は何も言わないのだ。

「・・・なんだ」

返事はする。けれど顔は見ない。
そんなに書類が大切なのか。それとも人間の付き合うという行為は・・・恋人同士はこんなにも軽薄な関係のものなのか。
――――いや、違うだろう。違うものであるべきだ。

「少し休憩をされたらどうですか?」
「あぁ。きりが良いところでな」
「それを待っていたらいつまでも休憩なさらないでしょう」
「・・・お前が僕に仕事の手を止める言葉を口にするなんて、珍しいこともあるものだ」

今日は槍でも振るかな。
そうクスクスと笑う声に、やはり苛立った。


正直、寂しいのだ。
人間の“付き合う”ということが、どのようなものなのかは分からない。
けれど自分はもっと彼と話したいし、もっと触れ合いたいし、もっと、もっと。

愛し合いたい――――


「シエル」
「・・・なんだ」

まっすぐ見つめたまま、初めて彼の名を呼んだ。
それは執事に有るまじき行為である。
けれど彼は怒ることも、特に何かを言うこともなく。一瞬戸惑ったような空気を見せたものの、すぐに返事をした。
それもいつも通りの。

「シエル」
「なんだ」
「シエル」
「だから何だ。そんなに呼ばずとも聞こえている」

最終的には少し苛立っているような返事。
初めて名前で呼んだのに、それはないだろう。
執事であるのに名前を呼ぶことを許しているだろう?なんて口角を吊り上げて彼なら言いかねないが、自分は気に食わない。

ついに我慢の限界だ。

カツカツと足音を響かせながら彼の座る椅子の横に立ち、その手にある書類を取り上げる。
それに驚いたような顔をしながらこちらを見上げたのに、すかさずもう片方の手で顎を掴んで無理やり視線を絡ませた。
きっと怒鳴るか睨みつけてくるだろう。そう思っていたのに彼は、

「ぁっ・・・」

頬を赤く染め上げ、小さな声を上げた。
その予想外の反応に脈が速くなってしまったのは驚きのせいだけではない。
(なんですか、その可愛い反応は)
再びときめいてしまうくらい、可愛らしかったからだ。

「~~~~~~っ」

その彼は小さく声を上げてしまったことが恥ずかしいのか、それとも顎を掴まれていることが恥ずかしいのか、唇を噛みしめ、視線をどこかへと逸らしてしまう。普段の彼からでは想像できない姿だ。
(あぁ、そうか――――)
そんな彼の様子を見て、やっと分かった。
ずっと、三年間ずっと誰よりも傍にいたのに、その気持ちに気が付いてあげられなかったなんて、執事失格。悪魔失格。そして。
恋人失格だ。

「シエル」

膝を折り、同じくらいの高さにして先ほどよりも優しく声を掛ける。すると余計に頬を赤くさせ、小さな声で「呼ぶな」と呻いた。
さっきは恥ずかしがるのを我慢していたに違いない。きっと逃げ出してしまいたい気持ちだっただろう。

ゆっくりと顎を掴んでいた手を頬へと動かし、親指で撫でる。
彼の体温が手袋越しというのが少々勿体ないが、手袋越しだとしても感じることの出来る彼の体温が嬉しくて、だらしなくも口元が緩んでしまう。
それを瞳に映した彼は一瞬息を呑んだような表情をしたが、すぐに再び視線を逸らしてしまった。
そんなに変な顔をしてしまっているのだろうか。けれど今は許してほしい。それくらいに嬉しいのだ。

「ねぇ、シエル」
「・・・」

怖がらせないように、出来るだけ優しくそっと。

「口付けても、いいですか?」

けれど逃げることは許さないように囁く。
案の定、彼は逃げるように背を後ろへと下げたが、そこには背凭れ。そして頬には手が添えられた状態だ。逃げることは不可能である。
本来ならば逃げようとした彼の態度にショックを受けるべきだが、彼の行動の意味に気が付いた今では、それはくすぐったいような、甘酸っぱいような気持ちが溢れてくるばかり。
その意味を証明するかのように「嫌ですか?」と尋ねれば、彼は首を横に振った。

――――彼はただ恥ずかしいだけ。
付き合うことになったいま、恋人同士になったいま、どのような顔をしたらいいのか、どのような反応をしたらいいのか分からなかっただけ。
付き合うということがどのようなことか分からなかった己のように。

お互いに初めての恋愛。
お互いに初めての相手。
お互いに初めての恋人。

初めてばかりの、愛情。

右も左も分からないけれど、この気持ちだけは偽りではないから。
この気持ちだけは、誰にも負けないから。

「愛しています、シエル」

少しずつ、一緒に進んでいこう。
少しずつ、一緒に知っていこう。

恋愛のことを。
そして、お互いのことを。


ゆっくりと重ね合わせる唇。

「ん、」

重ね合わせた唇は緊張や恥ずかしさで震えていて。
それでも応えるように少しだけ彼の方から押し付けられたソレが、「僕も愛している」という言葉であると気が付いて。


知れば知るだけ好きになる――――


この恋に、
この相手に溺れるだろうということを、
悪魔セバスチャン・ミカエリスは。



覚悟した。





End

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【2012/05/22 23:03 】 | Text | 有り難いご意見(0)
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