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【2017/10/18 18:06 】 |
切ない&暗い

自分が相手に抱いている想い。
相手が自分に抱いている想い。
互いに同じ想いを抱いている。
それは、奇跡に近い一致なのかもしれない。
けれどお前にとってその想いは。

重たい鎖にしかならない。


― 嘘 ―


いつの日か、己の執事とシーツの中で話したことがある。



『嘘とは何だと思う?』
『いきなりですね』
『いいから答えろ』
『…真実ではないこと、でしょうか』
『そのままだな』

鼻で哂えば、じゃぁ貴方は何だとお考えですか?と問われる。
すでにこれはシエルにとって予測ずみ、いや、こう問われることを待っていたのだ。
向こうから問わせるために話し出したと言っても過言ではない。
嘘とは一体何なのか。その答えは。

『真実を守るものだ』

自分を抱いた悪魔に染み込ませるように、言った。



それを示すものが何なのか、悪魔には分かっただろうか。
自分が何を言いたかったのか。
いや、分かったとしてもきっと奴は受け止めないと思う。
シエルにとって嘘をつく意味を理解しつつも、それを否定し受け止めない。
けれど美味しいところだけは、その腕で大切に抱きしめる。
そのずるさは悪魔らしいと思うけれど。
そのずるさはシエルにとって不快極まりない。

それでも僕は嘘をつく。
真実を守るために。
自分自身を守るために。
あいつの今後を守るために。

弱虫と言って哂えばいい。
卑怯者と言って哂えばいい。
もしそう言ったら、愚か者と哂ってやるから。







「どうしたのシエル?」

クリクリとした瞳を輝かせながら、リジーはシエルの顔を覗きこむ。
深く暗い思考に意識を沈めていたシエルは、そのリジーの姿が眩しく見えた。

「いや、なんでもない。それで、お前は僕になんて言って欲しいって?」
「いやだシエル、何度も言わせないでよ」

赤くなりながら、リジーは笑う。
眩しい姿に目を細めるが、心はどこか冷えているのはなぜだろう。
これから自分が言うであろう言葉を予想しているからだろうか。
それとも、今夜執事から言われるであろう台詞を予想しているからだろうか。

「シエルに愛してるって言って欲しいの」

婚約者からのお願い。
その言葉は身体を重ねたことがある奴にも言ったことはない。
ましてや、本当に愛している奴にも。

その相手からは、何度も言われている言葉だけれど。
その言葉が擬い物なのか、本物なのかなんて考えたくも無い。
擬い物でいいのだ。

「本当に仕方の無い奴だな」

口元に柔らかな弧を描きながら、ため息をつく。
そして目の前に座る婚約者の手を取り、その手の甲にワザとらしく音を立てて口付けをし、

「愛してる」

はっきりと、リジーに瞳を合わせて言った。
否、言ってやった。

言われたリジーは嬉しそうに、照れくさそうに笑ったが。



どこか遠くで、食器を叩き割ったような音が聞こえた。






****


その晩、やはりシエルの予想通りの台詞が執事から零れ出た。


「随分とお優しい言葉を吐かれていたのですね」
「なんだ、聞こえていたのか」
「分かっていたクセに」

どこか黒い笑みを浮かべながら、執事は自分の上に覆いかぶさってくる。
一応抵抗してみるものの、やはりその身体をどかすことは出来ない。
だから代わりに拒絶の意を瞳に宿してみる。
が。

「本当はこうされることを望んでいたのではないですか?」

笑みと同じ色で塗りつぶされた言葉が返される。
随分とご立腹のようだ。
これ見よがしにため息をつけば、執事の眉がピクリと動く。
けれど口を開けばまるで強がるような声。

「嫉妬させたかったのでしょう?」
「なぜ僕がそんなことをしなければいけないんだ」
「私の目を惹きたいからですよ」
「そんなわけあるか。リジーに言えと言われたから言ったまでだ」
「おや、じゃぁ私がお願いしても言ってくださるのですか」

ほら、やっぱりこう来た。
赤い瞳を輝かせる悪魔を見つめながら、眩しさに目を細めることもなくクスリと哂ってやる。
そして白く細い腕を伸ばし、その頬を撫でてやれば、少しだけ口元が緩まってくるのが分かった。
本当に愚かな奴。

「なぜ下僕にそんなことを言わなくちゃいけない?」
「ッ!!」
「リジーは婚約者だろう?お前と同じ土俵に下げるな」
「…申し訳、ありません」

唇を噛み締める執事。
自分に覆いかぶさっているクセに、随分とその精神は弱いらしい。
今起きている現状と中身のギャップがあり過ぎて哂えてしまう。
傷ついた様子の相手の頬をことさら優しく撫でてやれば、泣きそうな顔になってしまった。
あぁ、だからそんなに人間らしい表情をしてくれるな。
お前は悪魔だろう?今目の前にいる相手は、ただの餌なんだから。

「嘘でも、仰ってくれませんか?」
「・・・」
「言った後に、嘘だと…私に無理やり言わされたと仰ってくださって結構ですから」
「・・・」
「気持ちなんてどこにもなくていい。ただ、音としてでも発してくれませんか?」
「…どうしてそんなに言って欲しいんだ」

まるでマニュアルに書かれているものを読んでいるかのように淡々と問いかける。
相手が必死になるほどに。悲痛な叫びを聞くほどに。
シエルの瞳から色が抜け落ちていく。
それは自分でも気がついている。
しかしこの執事は自分に呆れているのだと思うだけだろう。
こういう感情の取りこぼしは、コイツのいい所だと思わないことも無い。

「貴方を愛しているからですよ」
「愛している、か」
「いつも言っているでしょう。リジー様と一緒です。愛している人に愛を囁いて欲しい…。この感情は間違っていますか?」
「さぁ、どうだろうな。人間としては間違っていないのかもしれない。けれど悪魔としてはどうなんだ?」
「…悪魔だって、誰かを愛すれば愚かになります」
「あぁ、お前は本当に愚かだと思う」

そして自分も、とは口に出しては言わない。
きっと言ったら、今必死に堪えているものが全て流れ出てしまうと思うから。
冷たい笑みを浮かべたまま、頬を撫でていた手で、黒い髪を耳元にかけてやる。
あくまで優しく。

「僕はお前を愛していない。だからお前なんかに愛を囁かない」
「・・・」
「お前は復讐する為の駒にしか過ぎないんだ」
「…ならば、どうして身体を繋げることは許してくださるんですか」
「たまには褒美をやらないと、犬だって主人に牙を向くだろう?餌付けは必要だからな」

ボタンを1つ外し、見せ付けるように首を差し出す。
赤い瞳に白い首が映った瞬間ギリっと歯噛みをしたが、結局その首元に唇を寄せ、所有印の跡を刻み込んだ。
いつもよりも痛いソレは、きっと濃い色となっているだろう。
それについて、口元が弧を描いてしまったことに執事は気がついていない。
首元を見ても我慢が出来なかった駄犬に対して、シエルは頭を撫でてやる。
きっとそれを一番悔やんでいるのは、駄犬本人だから。
けれどきっともっと傷ついている理由は。

「愛していると、言ってください」
「…言わない」
「言ってくださいッ!!」
「………言わん」
「嘘でもいいですからッ!!」
「嘘でも言わなければいけない立ち位置に、お前はいない」
「…ッ!!!」
「悪いが、僕はお前を愛していないんだ」

だからお前も僕のことを嫌いになれ。
契約の為だけに共にあるだけの存在となれ。
いつか魂を喰らうその日を、恐れないように。
そして、喰らった後に悲しむことがないように。

僕がいなくなった後も、お前は生きなければいけないんだ。
今の僕みたいに、復讐をしたら済む問題でもないんだ。
だから。
頼むから。

僕を嫌いになってくれ。


「私は愛しています。貴方のことを愛しています。誰よりも、何よりも」
「それはご苦労なことだ」
「愛しています」
「どんなに言ったって、僕はお前が嫌いなんだ」
「…坊ちゃん」

顔を上げることなく、ギュッと抱きついてくる執事。
もしかしたら涙を流しているのかもしれない。
なんて弱々しい悪魔なんだろう。
頭を撫でる手をやめて、シエルは自分の瞳を両手で隠す。
抱きしめ返すことは出来ないから。
自分の気持ちを返すことは出来ないから。
だけど。

愛してる。
愛してる。
愛してる。
愛してる。
愛してる。
愛してる。
愛してる。
愛してる。

ずっとずっと、誰よりも何よりも愛してる。



それでも僕は嘘をつく。
真実を守るために。
自分自身を守るために。
あいつの今後を守るために。

「坊ちゃん…ッ」
「…セバスチャン」

弱虫と言って哂えばいい。
卑怯者と言って哂えばいい。
もしそう言ったら、愚か者と哂ってやるから。

愚か者と、哂ってみせるから。


END


****
あとがき
『どこか遠くで、食器を叩き割ったような音が聞こえた。』という言葉を入れたくて書きました(笑)


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【2011/03/24 16:47 】 | Text | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
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