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【2017/03/28 09:34 】 |
複雑な恋心
リクエスト企画(R15)

月が輝く静かな夜中。
暗闇が世界を覆い、まるで全てを隠すように黒く染め上げる。
隠すことが多い裏の世界の住人は、夜に動くことが多い。
そして、恋人たちも・・・。
恋人たちはその時間帯に秘め事を行う。
暗闇を利用し、互いの愛を確認し合い、より愛を深めていく。

たとえ悪魔であろうと。
その相手が人間であろうと、それは同じもの。


― 複雑な恋心 ―


「セバ、スチャ・・・もう・・・無理・・・」

シエルはシーツに身を埋めながら、息を切らす。
額には汗の粒が浮き、髪が張り付いている。

「すみません、無理させてしまいましたね」

クスリと笑いながら、甘い笑みを浮かべてセバスチャンはシエルを抱きしめる。
多少汗を掻いてはいるが、シエルとは違い余裕のある声だ。
実際、本当にまだ余裕はあるのだろう。シエルが無理だと言い出さなければ、もう一回・・・いや、時間が許される限り行為を続けていたかもしれない。
坊ちゃんを目の前にすると、本当に何も見えなくなってしまいますね。
セバスチャンは内心苦笑する。

「坊ちゃん、気持ちよかったですか?」
「ばっ!!そんなこと聞いてくるな!」
「・・・本当に可愛い方ですね」
「んっ」

焦った声で叫んだシエルに、セバスチャンは唇に口付ける。
まだシエルの息が整っていないので、軽く啄ばむ程度に・・・。
そして次は頬、額、首筋へと体中に口付けていく。
シエルは小さく声を出しながら、それを受け止めていく。
まだ敏感な身体は口付けの刺激でさえも大きいようだ。
赤い顔をしながら瞳を閉じ、唇を噛みながら必死にセバスチャンの口付けに耐えている。

あぁ・・・坊ちゃん。

セバスチャンは我慢できず、もう一度唇に口付けし舌を忍び込ませる。
味わうようにジットリと口腔を動き回る。

「う、ん・・ン・・・ゃ・・んん」

セバスチャンの首に腕を回しながらも、小さな拒否する声。
無理だと言われた手前、気持ちよさからの『イヤ』なのかどうなのかが分からず、セバスチャンはほんの少しだけ唇を離す。
赤い瞳を開け、近いところからシエルを見つめながら次の言葉を待つ。

「・・・」

しかしシエルは何も言わず、小さく首を振りながらセバスチャンの首にしがみついてしまう。
一体どうしたんでしょう・・・?
顔を首元に隠してしまったシエルの頭を撫でながらセバスチャンはかしげる。

「坊ちゃん?」
「・・・セバスチャン」
「どうしました?」
「しばらく・・・」
「はい」
「いや、なんでもない」
今日はもう眠る。

そう言いつつも腕を回したままのシエル。
顔を見せずに眠るのだろうか。
それよりも、一体なにを言いかけたのだろう。
セバスチャンは頭にクエスチョンマークを浮かべながらも、分かりました、と返し、頭の上の方に畳んでおいた新しいシーツをシエルに掛けてやる。
シエルはセバスチャンに抱きついたままなので、必然とセバスチャンも同じシーツを掛けることとなる。
こういうのもいいですね。
クスリと笑いながら、抱きしめ返す手で再びシエルの頭を撫で

「おやすみなさい」

自分も同じように瞳を閉じた。


シエルの行動に多少疑問があったが、自ら抱きついてくれている嬉しさにセバスチャンは、そんなことなどどこかに流れていってしまった。
今胸にあるのは、苦しいくらいの愛しさだけ。
シエルを想う、気持ちだけ。

(愛しています)

寝息を立て始めたシエルを抱きしめながら、何度も何度も心の中で呟く。
それなのに。


まさか次の朝にあんなことを言われるなんて、今のセバスチャンは考えもしなかった。


****


「え、今なんて申しましたか?」
「だから、しばらく夜は一人で眠る」

次の日の朝。
シエルはアーリーモーニングティーを飲みながら、どこか遠い目をして言う。
セバスチャンは表情を曇らせながら、シエルの目の前で膝をつき、顔を覗きこむ。

「なぜです」
「・・・身体が痛い」
「それは・・・申し訳ありません」

苦笑せざる得ない言い分だが、きっとそれだけではないと胸がざわめく。

「それで本当の理由は?」
「本当の理由?」
「どうして私と夜を過ごさないのですか?」

真剣に問うセバスチャンに、シエルはため息をつき、空になったカップを渡しながら言う。

「お前なぁ・・・悪魔と人間の出来は違うんだ。身体も痛ければ寝不足でもある。それが何を示すか分かるか?」
「・・・いえ・・・」
「仕事に支障が出るんだ」
「支障・・・ですか」

カップを受け取り、ワゴンの上に片付ける。
そして今日着る予定の服をベッドまで運び、ナイティのボタンを外し始める。
外した向こうには白い肌。そしてそこに残された赤く散らされた所有印。
昨晩、セバスチャンとシエルが愛を交わした証拠だ。
もしや昨日言いかけたことは、このことだったのでしょうか。
セバスチャンは眉間に皴を寄せる。

「あの、もしかして昨晩坊ちゃんの嫌がるようなことをしましたでしょうか」
「・・・別に」
「じゃぁどうして・・・」
「だから仕事に支障が出るからと言ってるだろ」
同じことを二度も言わせるな。

不機嫌になってしまった声に、セバスチャンは口を閉ざす。
これ以上聞いても、きっとシエルは同じ答えしか返さないだろう。
仕事に支障が出るという理由。それは分かるが、シエルにとっては身体が痛いのは別に支障になることは無いと思う。寝不足なのは辛いかもしれないが、それほど遅い時間までしているわけではない。
これは悪魔からの視点であって、人間の体力としては大変なことなのかもしれないが・・・。

今までは普通になさっていたではありませんか。

セバスチャンは唇を噛む。
“初めて”の時だって、次の日は自分から仕事に向かった。休めと言ったにも関わらず、だ。
それなのに今更仕事に支障が出るなんて、下手な言い訳にしかならない。

どうして・・・。

あんなに昨晩愛し合ったのに。
抱き合いながら眠ったというのに。
なぜ距離を置こうとするのですか。

結局セバスチャンはシエルの言い出したことを覆すことなど出来ず、焦りを抱えたまま承諾するしかなかった。


****


あれから3日後・・・。

シエルは執務室で走らせていたペンを止め、息を吐きながら椅子に寄りかかる。
次のシーズンに向けて新しい商品についての案はほぼ完成形となり、これで少しは仕事が楽になるだろう。
イベントの時と比べたら全然楽な方なのだが、やはり神経が張ってしまうものだ。
飽きやすい子供相手だと特にだ。

「子供・・・か」

シエルは額に腕を乗せながら呟く。

セバスチャンに夜を共にしないと言ってから3日。
この3日間、ほんの少しだがシエルはセバスチャンから距離を置いている。
と言っても、あからさまに避けているわけではなく、呼ぶ回数を出来るだけ減らしたり、スイーツを持ってきたセバスチャンを少し早めに帰したり・・・。
セバスチャンと二人きりでいる時間を少々減らしているのだ。
まるで、あのただの主従関係だった頃のように。

セバスチャンは気がついているんだろうか。

シエルは瞳を閉じて黒い執事のことを思い描く。

あれから。
セバスチャンはシエルに言われたように、夜を共にすることはなくなった。
自分からあまり目を合わせないようにいているので、ナイティに着替えさせる時のセバスチャンの表情を見たことはない。
けれど、少し冷たい空気が流れているのは感じている。
きっと、仕事に支障が出るから・・・なんて言い訳は初めから通用していないのだろう。
3日前だって、本当の理由を知りたがっていた。
その時のセバスチャンの唇を噛み締めた顔を思い出せば、今でも胸が痛くなる。
それでも。

それでも、今は少し距離を置きたい・・・。

シエルはもう片方の手で、自分の襟首を掴む。
その顔はすでに赤い。


ただの悪魔だった者が、己の執事になった。
そんなあくまで執事の奴が、愛しくなった。
そして想いが通じ合い恋人同士になった。

ただ単語を並べたら、ハッピーエンドなのかもしれない。
好きな人と両思いで結ばれたのだ。幸せ以外のなにものでもない。
けれど。
今のシエルはそれが素直に幸せなのだと認めることが出来ない。
正直、戸惑っているのだ。
恋人となったセバスチャンに対して、どう接したらいいのか分からなくなってきたのだ。

甘く蕩けそうな表情をするセバスチャン相手に、どうしたらいいのか分からない。

悪魔として嫌味を言われたのならば、人間として哂い返してやる。
執事として教養を説かれたのならば、主人として跳ね返してやる。
でも。
恋人として愛を囁かれたのならば、僕はどうしたらいい?

恥ずかしくて、胸が苦しくて、でも愛しくて。
抱きしめたくて、口付けたくて、でも逃げたくて。
今だってほら、瞳の裏に思い描いた執事は僕に向かって優しく微笑んでいる。
それだけで、苦しい・・・。

シエルは瞳を開け現実に戻るべく、終えた書類をひとまとめにしていく。
乱雑に机の上に散らばった紙。

一枚手に取り・・・ / ほら、坊ちゃん。こっちに来てください。
またもう一枚・・・ / 可愛い方ですね。

一枚一枚、紙を拾い上げる度にセバスチャンの声が脳裏に響く。
まるでセバスチャンとの思い出でも拾っているかのようだ。

なんで・・・こんな書類を拾うだけなのにセバスチャンを思い出さなきゃいけないんだ・・・!!

シエルは憤慨しつつも、ゆっくりと拾う動作を止められない。
その表情は果実のように熟れていると、彼自身は気付いているのだろうか。


『坊ちゃんはどこもかしこも柔らかいですね』
『こんなに顔を赤くなさって・・・』
『寒く、ないですか?』
『えぇ。私は坊ちゃんのことしか見えていませんよ』
「坊ちゃん」
『キスしても宜しいですか?』
「坊ちゃん?」
『じゃぁ、目を閉じて・・・』
「あの坊ちゃん・・・」
『ほら、もっと・・・』

「坊ちゃん!!」
「うわぁっ!!」

脳裏ではなく本物の声が耳から入ってきて、飛び上がるシエル。
あやうく手に取った書類を撒き散らしそうになり、すんででキャッチする。
本物の声の方に視線をやれば・・・。

「どうしたのですか?ボーっとして」

呆れたような表情の本物の黒い執事の姿。
シエルは先ほどまで脳裏に響いていた台詞を思い出すと恥ずかしく、パッと目を逸らしてしまう。

「いや、ただ書類を集めていただけだ」
「・・・書類は手に持っていますが、私が入った時には既に集め終わっていましたよ」

どうやら途中からはセバスチャンの声だけを拾っていたらしい。
そう考えると、余計に恥ずかしくなってくる。
シエルは咳払いをしながら書類を机の端に置き、顔を隠すように頬杖をつく。

「それで?お前は一体どうしたんだ?」
「・・・」
「セバスチャン?」
「あぁ・・・そろそろ仕事にも目処がついた頃だと思いまして、少し早いですがスイーツと紅茶をお持ちしました」
「そうか・・・」

セバスチャンはニッコリと微笑みながらワゴンを机の方まで押してくる。

「本日のスイーツはガトーショコラでございます」

言いながらテキパキとスイーツを切り分け、シエルへと差し出す。
そしてそれに見合った紅茶について説明しながらカップに注ぎ、机の上に静かに置く。
急に戻ってきた現実にシエルは少し身を硬くしながら(本人もいるから尚更だ)スイーツに手を伸ばす。

「いかがですか?」
「・・・まぁまぁだな」
「それはようございました」

毎度ながらのやり取り。
たまには素直に美味しいと言えたらいいのだが・・・。
言えるのならば、今のように3日間もセバスチャンから距離を置いたりなどしない。
シエルは内心でため息をつきながら、今日も早くこの部屋からセバスチャンを帰すべく、ただ淡々と黙々とスイーツを口に運んでいく。
そして、最後の一切れを口に入れたところで。

「私も味見をしてみても宜しいですか?」
「んっ?!」

頭の後ろに手を添えられ、腕を引っ張られる。
そして気がついた時にはすでに口付けられ、強引に歯列を割って舌が口内に入ってくる。

「う・・んン!!」

シエルの口の中にあるガトーショコラが、セバスチャンの舌に絡め捕られ口から出て行ってしまう。
しかしすぐに先ほどよりも少し小さくなったガトーショコラがシエルの口の中に戻ってくる。
きっとセバスチャンの口の中で半分にしたのだろう。
唇は離され、膝を折り椅子に座ったシエルと同じ目線になったセバスチャンと互いに見つめあったままガトーショコラを飲み込む。

「貴様っ!急に何をするんだ!」
「坊ちゃん、紅茶はいかがですか?」
「ちょっ!貴様、まて・・・!!」

シエルが怒鳴っていることを気にせずにセバスチャンはカップを手に取り、自分の口に含む。
そして再び口付け、シエルの口内へと少しずつ流し込んでいく。

「っ・・・・」

ゴクリ、ゴクリと喉をならしながら、口移しされた紅茶を飲んでいく。
先ほど食べたガトーショコラも、紅茶も、もうセバスチャンの味しかしない。

「ん・・・ふ・・・」

全て飲み干した後は、セバスチャンの舌がシエルの口腔を荒々しく掻き回していく。
抵抗しようにもうまく力が入らず、胸に手を添えるような形になってしまう。
どうして、こんな・・・急に・・・。

「んン・・・セ、バ・・・ふぁ・・・やめ・・・」
「口付けくらいならいいでしょう・・・?」

頭を押さえるセバスチャンの手に力が入り、より深く口付けされる。
舌と舌が絡み合い、室内に水音が響き渡る。
息が苦しくてクラクラしてきた頃にやっと口付けは解かれ、シエルはセバスチャンに凭れ掛かる。
しかしセバスチャンの行為は止まらずに、いつかの夜と同じように頬、額、首筋へと口付けていく。

「セバ、スチャン・・・待て・・・」
「口付けるだけです・・・」

シエルの止める言葉も聞かず、服のボタンをも外していく。
次々と素早く外されてしまうのでシエルは焦り、セバスチャンの手を弱々しく握る。
けれども、そんな手は無視されて次へ次へと外されていってしまう。
いよいよ本気でグルグルと混乱して焦ったシエルは、

「命令だ!!止まれ!!」

絶対的な言葉を口にする。
その言葉にあくまで執事・・・恋人のセバスチャンはピタリとその動きを止める。
やはり命令には逆らえないらしい。
シエルはホッと息をつく。
が。

ビリビリビリ!!

ボタンを外していた手がいつの間にか服を掴み、一気に引きちぎられる。
それはボタンだけではなく服全てを横に引っ張ったので、内に着ていた服まで破れたのだ。
着ている服を破かれたシエルの上半身は露わになる。

「き、貴様何を」
「どうしてですかっ!!!」
「っ?!」

瞳を赤く染め上げながら、シエルの言葉を遮り怒鳴るセバスチャン。
破いた服を掴む手は細かく震え、表情は怒りと悲しみに満ちている。

「どうして・・・私、何かしましたか?どうしてそんな距離を置こうとするのですか!」

セバスチャンは悲痛に叫ぶ。

「それとも何ですか。別に気になる方でも出来ましたか?」
許しませんよ、そんなこと。

剥き出しになった上半身に刻まれた、数日前より薄くなった所有印に唇を寄せ、きつく吸い上げる。

「ちが、そうじゃ・・・んン・・・!」
「先ほど書類を手に随分と色っぽい顔をしながら何か考えていましたものね。その方を想っていたのですか?」
「それは・・・ぁっ」

次々と所有印の上に新たな所有印を重ねていくセバスチャン。
きっと新たに刻まれたものもあるだろう。
シエルはセバスチャンの髪に手を差し込みながら首を振る。

「こんなにも愛しているのに・・・貴方は別の方を向いているのですか」
「ちがう、セバスチャン、そうじゃない・・・」
「違う?何が違うのですか?」
私から距離を置いているくせに?

セバスチャンは顔を上げ、嘲るように哂いながらシエルを見つめる。
しかしそれは悪魔ではない。悪魔の姿ではなく、激怒している恋人の姿だ。
シエルはそんなセバスチャンを見つめ返しながら強く首を振る。

「違う、そうじゃない。僕はただ・・・どうしたらいいか分からなくなって・・・」
「何が?私以外を好きになるなんて思ってもみなかったからですか?」
「そうじゃない!!誰も他に好きな奴なんていないっ!」
「じゃぁ何なんですか!」

シエルの両腕を掴み、逃がさないとでも言うように椅子の背もたれに押し付けるセバスチャン。

「今更・・・今更私との関係を白紙に戻したいのですか?!」
「だから、少しは僕の話しを聞けっ!」

もうこうなってしまっては、照れている場合ではないとシエルは判断しセバスチャンを睨みつける。

「僕がお前と距離を置いたのはな、恋人のお前とどう接したらいいのか分からなくなったからで・・・」
「どういうことですか」
「・・・お前の甘い顔を見てたら恥ずかしいんだ・・・」
「・・・は?」

セバスチャンは眉間に皴を寄せ、目を細める。
全くもって意味が解かりませんと顔に書いてある。
シエルはため息をつきながら、だからな・・・と説明をする。

「つい前までただの執事だった相手だぞ?それが急に恋人のように甘い顔をされたら、戸惑うだろうが」
「・・・なぜ戸惑う必要があるのです」
「甘い顔をされたら、どんな表情で返したらいいかとか悩むだろ」
「・・・なぜ悩むのです」
坊ちゃんのそのままの表情で宜しいじゃないですか。

当たり前のように返すセバスチャンに、シエルは固まる。
セバスチャンの言うことは正しい。そしてシエル自身だってその答えは解かっている。
けれど、それが出来ないから今の状況になってしまっているというのに、この悪魔はそれを解かっていない。
この悪魔は・・・。
全てにおいてストレート過ぎる恋人にシエルは苦笑する。

「あのな、セバスチャン」
「はい」
「今日のスイーツはガトーショコラだったよな」
「?・・・はい」
「それはどうやって決めた?」
「坊ちゃんの好きな物をと思って・・・」
「悩まなかったか?」
「・・・少々悩みました」
「僕の気持ちもそういうことだ」
何を作ろうか悩む時間帯だったんだ。

苦笑したまま言うシエルを見つめながら、セバスチャンは腕を掴む力を少しずつ弱めていく。

「何を作ったら喜んでくれるか、考えてくれたんだろう?」
「・・・はい」
「僕もセバスチャンが甘い顔してくれた時、どう返したら喜んでくれるのか考えていたんだ」
「その考えている時間が、距離を置いていた時間だったのですか?」
「まぁ、色々ずれているところはあるが、そういうことだな」
このたとえなら、なんとなくお前にも解かるだろう?

掴んでいた腕を離したセバスチャンはシエルの言葉にコクンと頷く。
気が抜けたのか、それともスイーツにたとえられたのが嫌だったのか、セバスチャンは力なくうなだれてしまう。

い、一体どうしたんだ・・・?

急に口付けしてきたと思ったら怒り出し、そして急激に沈み込んでしまう。
忙しい奴だなぁ。
人のことは言えないにも関わらず、シエルは人事のようにため息をつく。
そして慰めるように頭をポンポンと撫でてやる。

「色々不安にさせて悪かった・・・でも、これで分かっただろう?だから少しだけ距離を」
「じゃぁ、レパートリーを増やせば悩むことはなくなるのですよね?」
「・・・は?」

ピタリと撫でる手を止める。
セバスチャンは俯いたままなので、表情を伺うことは出来ないが、その声はどこか楽しそうだ。

「私に何を作ったらいいのか分からなくて悩んでしまっているのですよね?でしたらレパートリーを増やせば悩む時間も減ります」
「えっとだな、そういうことじゃなくて」
「ということは、距離を置けばいいという問題ではなく、むしろずっと一緒にいないとダメということです」
「あの、セバスチャン」
「私が甘い顔をした時にどう返すのかレパートリーを増やす・・・今夜から忙しいですね坊ちゃん」
「なんで夜なんだ!!」
「だって、そうでしょう」

セバスチャンは撫でていたシエルの手を掴み、手の甲にちゅっと口付ける。
そして顔を上げ、蕩けるほどの甘い笑みで

「一番甘い顔をしているのは、愛を確認しあっている夜なのですから」

と、シエルに微笑みかける。
それを見たシエルは一気に顔を赤くして己の手を自分の元に奪い返す。

「べ、別に今も十分甘いっ!!」
「そんなことございませんよ」
「いや、お前は絶対に気がついてないだけで、十分甘い顔している!」
「それは惚れた相手だからそう見えているだけです」
「だぁぁぁ!調子に乗るな貴様っ!!」
「それでは・・・」
「うわ」

セバスチャンは甘やかな表情のままシエルを抱き上げ、机の上に座らせる。
シエルは今自分の上半身を隠す服が破れていることを思い出し、顔を赤くしながら両手で服を引き寄せ隠す。
それを見ながらクスリと笑い、シエルの眼帯を解いてしまう。

「何をするっ!」
「決まっているでしょう。レパートリーを増やすためのお勉強が3日分抜けていますので、今から学んで頂こうと」
「そ、そんなもの必要ないっ!!」
「ダメですよ坊ちゃん。距離を置かないためにも、そして逆により近づけるためにも必要なのですから」
愛していますよ、坊ちゃん。

再び体中に口付けの雨を降らせ始める恋人に、シエルはせめてベッドにしろと言っても、どうやら動く気はないらしい。
きっと3日間距離を置いたお仕置きでもあるのだろう。

あぁ・・・別の意味で距離を本気で置きたくなってきた・・・。

そう思いつつも、結局はセバスチャンの熱い愛情に浮かされ、どんどんレパートリーを増やしていくシエルであった。




END


****
あとがき
10000HIT御礼、リクエスト企画!第三弾!!
桜庭様からリクエストを頂きました!桜庭様、ありがとうございます^^
『セバスチャンとシエルが深い関係になってから今更恥ずかしくなったシエルが急にセバスチャンと距離を置くお話』
そんな気持ちが分からなくてセバスが激怒!というなんとも萌えるリクエストを頂きました!
シエルは悶々、セバスはプンプンにさせてみましたが(笑)・・・いかがでしょうか?
セバスにはシエル大大大大好きっ子になってもらいましたww
なんだか少しずれてしまった感があるような・・・(汗)もう少しこうして欲しいなどございましたら仰ってくださいね。
本当にリクエストをありがとうございました。これからも、是非いつでも遊びに来てください(>▼<///)


 

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【2011/03/24 16:31 】 | Text | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
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