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一周年御礼(Sw,Sp,学,現)
― 七夕の過ごし方!! ― *学パロの二人の場合 「明日は七夕ですね」 そう微笑みながら夜に星を見ようと言った彼は酷く楽しそうで、シエルはそれにそっぽを向きながら頷いた。 それはどう考えても夜のデートのお誘いで。 しかしそれを素直に嬉しいと言える自分ではなく、わざとさもどうでもいいかのように返事を返したけれど、きっとコイツは全部見透かしているのだろう。 「晴れて良かったですね」 「あぁ…」 シエルは出る前に肩から掛けられた小さなタオルケットを胸元に寄せながら空を見上げる。 車を停めた場所は誰もいない山頂…無粋な街の光などは届かない場所なので、満点の星空がシエルたちを出迎えた。 こんなに美しい夜空を見たのは初めてで、シエルの口元は自然と緩んでくる。 「シエルは織姫と彦星のことをご存知ですか?」 「…僕のことを馬鹿にしているのか?」 今の時代、その二人のことを全く知らない人間などあまりいないだろう。 急な問いかけに夜空を見上げたままムスっと答えれば、セバスチャンは、まぁ、半分はそうですが、と酷いことをサラリと言い、それにシエルが怒鳴る前に相手は言葉を続ける。 「織姫と彦星は年に1回しか逢えないのですが、私たちはいつでも逢うことが出来ますよね」 「…?そうだが…」 「それって実は凄い奇跡なんだと思いませんか?」 木々を揺らす風と共に吐き出される言葉。 シエルは若干目を見開いて、肩に掛かるタオルケットを押さえながら隣にいるセバスチャンに視線を向ければ、そこには夜空を見上げたまま淡く微笑んでいる姿が。 「もしも私があの学校の教師ではなかったら。もしも貴方があの学校に入学してこなかったら」 もしも私がセバスチャン・ミカエリスではなかったら。 もしも貴方がシエル・ファントムハイヴではなかったら。 「出会うことすら出来なかったんですよね」 言いながらチラリと目線だけがこちらを向き、悪戯気に瞳が細められる。 けれどそこにはいつものような意地悪い光など放っておらず、純粋な優しい色をしていた。 「そう、だな…」 それになんて答えたらいいのか分からず、シエルはぎこちない笑みを浮かべながら返す。 ミカエリス先生の言っていることは分かる。 その通りだと思うし、いつも一緒にいられること、それだけではなく今ここに一緒にいることすら奇跡なのだと自分でも思う。 いや、心からそう思うからこそ。 どうやって返したらいいのか分からない。 「シエル…」 「…ぁ……」 いつの間にか唇を噛み締めていたようで、セバスチャンが苦笑しながら手を伸ばし唇をそっと撫でた。 慌ててシエルは己の唇を解放するが、相手は唇から手を離そうとはせずに、何度も何度もそこを撫で続ける。 その動作が何だか恥ずかしくて、頬を赤く染めながら上目遣いで、先生?と声を掛けた。 「もう別に、噛まない」 「…予想以上にシエルは私のことを愛してくださっているのですね」 「……はッ?!」 このような可笑しな言動はもう慣れて耐性が出来たと思っていたけれど、このような不意打ちはまだ駄目だ。 シエルはヒクリと口元を歪ませて一歩後ろに逃げる。 あんなことを言われてそのままいい子にしているだなんて、誰が出来るだろうか。 「ななな、なんでそういうことになるッ!」 「今日は今一緒にいられる素晴らしさのお話をして、シエルが感動しているところを車に引き込みそのまま食べてしまおうと思ったんですがね」 「なッ…!!!」 また車の中でか!という言葉は心の中に留めておく。 (ここまで心の内を明かすのもどうなんだッ) そう思うも、シエルは顔を真っ赤に染め上げたまま口をパクパクすることしか出来ない。 しかしセバスチャンはそんなシエルを気にすることもなく、逃げた一歩を詰め、否、それ以上の距離を詰めて。 「ですが、まさかここまで心揺さ振られるとは思っていませんでした」 ギュッとシエルを抱きしめた。 「私はここにいますよ、シエル」 切ない思いをさせてしまって、すみません。 言いながらギュッと抱きしめる力が強くなる。 身体が小さいシエルにとってそれは苦しいものだけれど。 「ミカエリス先生」 それは酷く嬉しい苦しさだ。 そしてその抱きしめる強さは。 きっと自分と同じ想い。 「僕も、ここにいる」 もしかしたら、ミカエリス先生も切ない思いになったのだろうか。 だから唇を噛んでしまった自分の気持ちを察することが出来た。 そして。 だから、不安を消す為に抱き合おうと思ったのかもしれない。 「……今はプライベートの時間ですよ、シエル」 シエルの言葉の返事ではなく、別のことを指摘するセバスチャン。 でもその声はどこか無理やりいじけているような、無理やりつっけんどんにしているような。 どちらにしても。 この男も僕と一緒で、素直じゃない。 「セバス、チャン」 だから、今日くらいは僕から素直になってやろう。 織姫と彦星を思って、一人寂しくなってしまったコイツのために。 そんな誰よりも愛しいセバスチャンのために。 「…さむい」 小さな声でそう言えば、夜空に瞬く星の輝きよりも優しい笑みを浮かべた顔が目に映り。 「…シエル」 そっと唇が塞がった。 END →next PR |
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