月が綺麗に見える、真夜中の時刻。
ファントムハイヴ家の執事は眠ることもなく、部屋で書類にペンを走らせていた。
シエル・ファントムハイヴと契約を結ぶ前ならば、このような夜には餌を求め街へと向かっていただろう。
しかしそれはすでに数年前の過去となっている。
「おや?」
悪魔で執事であるセバスチャン・ミカエリスはペンを止める。
しばらく餌を食べていないとて、悪魔の力は今だ健在している。
この広い屋敷に紛れ込む、どんな小さな気配だって逃すわけがない。
「またこれは、邪魔な者が入り込みましたね」
セバスチャンはため息をつきながらペンを置き立ち上がる。
それでもなぜ、あの方は一瞬しか入り込まなかったのでしょう。
いつもならばこの部屋にやって来ると言うのに。
セバスチャンは疑問を抱きながらも、屋敷に何も異変はないか調べに部屋の扉を開ける。
すると。
「あ、セバスチャンさん」
たった今扉をノックしようとしたのだろう、使用人三人が目の前に立っていた。
その顔はいつも何かを失敗した時に呼びに来るような情けない顔ではなく、本来の仕事をしている時の顔つきだ。
ほぉ、あの気配に気がついたのですか。
セバスチャンは内心関心した。
しかしそれは決して表情には出さずニッコリと、どうしたのですか?と問う。
「ほんの一瞬だが、妙な気配がしてよぉ」
タバコを咥えながら、バルドは頭を掻く。
髪には寝癖がつき、ついさっきまで眠っていたことを物語っている。
なるほど。
セバスチャンはどうしてあの方が一瞬でこの屋敷から出て行ったのかが、予想ついた。
このファントムハイヴ家の番犬も、たまには役に立つということですか。
「僕ら三人でここまで辺りを見てみたんですが、誰も見つからないんです」
「今、一応田中さんに坊ちゃんの方を見てもらってますだ」
「まぁ、気配も一瞬だったから何ともないと思うがな」
三人は不安げに報告する。
本当に己の主人が大切なんですね。
いつも無愛想な主人のことを思い出す。笑顔なんて見せたこともなければ、命令ばかりする鼻高いお子様なのに、ここまで愛されるとは・・・。
坊ちゃんの本来の優しさが身から染み出ているのでしょう。
悪魔のセバスチャンでさえ、優しいと感じることがあるシエル。
無意識に人を自分に呼び寄せる力を持つのだ。しかし本人は全く気がついていない。
ちょっと面白くないですね。
自分以外の者が、シエルの魅力に惹かれていることが。
自分以外の者に、シエルが無意識に優しく接していることが。
あぁ坊ちゃん。悪魔を仕えるとは、こういうことですよ?
セバスチャンは口元に弧を描く。
「セバスチャンさん?」
「いえ・・・。では私も屋敷の中を見て回りましょう。何かあったら困りますし」
セバスチャンは三人に、気配の相手を言うことなく屋敷を回ることを提案する。
三人はセバスチャンも気配の相手が分かっていないのだと判断し、真剣な顔のまま頷く。
さぁ坊ちゃん。
ゲームの時間です。
悪魔は瞳を赤くした。
-GameⅡ-
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あとがき
10000HITありがとうございます・・・!!
てなわけで、どどーんと10000HIT御礼です!!
6000HIT御礼の時の続き・・・というわけでもないのですが、一応Gameと同じ系列です(?)
しかし、なんとGameより長いGameⅡですorz
なんとなく格好よく始まりましたが、どうしようもないお話です(前回同様)
是非ともお付き合い宜しくお願いいたします^^

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