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【2025/05/10 19:27 】 |
汚れた舌(子供)
子供の貴方。
汚れた舌(リクエスト)




彼の身体に毒が巡り、身体全体を蝕んでいく。
少しずつ、少しずつ彼の身体は弱まり、心音が小さくなる。
それを抱きしめながら、白く冷たくなっていく頬を撫でて、そしてその瞳に映るのは自分だけで。

「・・・微量ですが、毒が盛られていますね」

だがそれは自分の内の妄想だけで留める。
己は彼の執事であり、契約する悪魔であり、そして恋人なのだ。
むざむざとそんな毒に殺されるなんて許さない・・・――――自分以外の何かに魂を奪われるなんて許さない。

「やっぱりな」

毒が盛られているという言葉にさほど驚いたような様子も見せず、むしろそれが当たり前の事項であったかのように、シエルは椅子の背凭れに背を沈めながらため息をついた。
このワインを贈って来た相手はすでに知った相手であり、そろそろ裏社会の秩序という存在が邪魔だと思う頃だろうとすでに予想もしていて。
その推測が面白いほどに的中した。

「味気のないゲームだ」
「おや、スリルがないと面白くないと?」
「少しくらい綱渡りをする場面がないとプレイヤーは飽きるだろう?」

玩具メーカーの社長であり、彼自身がゲーム好きのせいか、その言葉にはいつも以上に熱が込められているような気がしてセバスチャンは隠さずに苦笑した。
命を守れという契約があるというのに自ら綱渡りを求めるなんて、なんて矛盾。
けれどそういう矛盾は嫌いじゃない。

「では、少しゲームをしましょうか」
「なに?」

セバスチャンの言葉に、シエルは眉を顰めた。

「ワインをもう一本用意します。毒の入っていない、ね」
「・・・そのどちらかを飲めということか」
「えぇ。勿論契約がありますから、死なない程度に毒は薄めておきますよ」
命が保障されつつもスリルのあるゲームでしょう?

嫌味どころか彼を馬鹿にするかのような言い方をわざとし、その高すぎるプライドを擽る。
たまにはこういう意地悪も許されるだろう。
人間である彼がつまらないと思うことは、悪魔にとってはその数倍つまらないことなのだ。
――――このゲームは己自身も楽しむためのゲームに過ぎない。
けれどそこまで見抜いていないであろうシエルはきっとプライドを守るために乗ってくるだろう。
もしくは提案したゲームを心から面白いと考えて。
だがシエルは――――

「そんな回りくどいことしてられるか」
「なっ!!」

彼の目の前に置かれているワイングラスを手に取り、そしてそのまま注がれた毒入りのワインを口へ傾けてしまう。
勿論それは重力に逆らうことなくシエルの口の中へと流れ込んでいき・・・―――

「っ!!!!」

セバスチャンはシエルが飲み込んでしまう前に急いで彼の腕を引き口付ける。
そして無理やり舌を捻じ込んで唇を開かせて、彼の口腔に溜まる毒入りのワインを全て吸い出し己が飲み込んでいく。
その毒は即効性のものでもなければ、触っただけでも死に至るような劇薬でもない。
それでも不安は拭えず、セバスチャンは何度も何度も執拗にシエルの口腔を舌で辿り、毒入りのワインが一滴も残らないように丹念に舌を這わせた。

「何を考えているんですか、貴方はっ!」

もう大丈夫だろうと唇を離した瞬間、反射的に言葉が滑り出た。
どうやら思っていた以上に自分は焦っていたらしい。
だがそんな気持ちを知ってか知らずか、シエルはスリルのあるゲームだっただろう?と、人事のように口角を吊り上げている。

「本当に死んだらどうするつもりですか!」
「その時はその時だろう」
「は、」
「命が保障されているゲームにスリルなんてあるか」

馬鹿にするのも大概にしろ。
そう言いつつも多少口の中がピリピリするらしく、舌を小さく外に出している。
当たり前だ、たとえ数秒だとしても毒入りのワインを口に含んだのだから。

「貴方は本当に・・・――――」

セバスチャンはそんなシエルの姿を見ながら息を吐き、もう一度その唇に口付ける。
今度はその違和感を消してやるように優しく口腔を撫でていく。
口付けながらその温かい身体を抱きしめ、赤みが差している頬を優しく親指で撫でて・・・。


この腕の中にいる彼が自分の醜い妄想を知っているとは思えない。
それでもそんな妄想を抱きつつも、恐ろしいほど彼に執着している自分の曲がった愛情は知っているのだろう。
だからこそこんなことをしたに違いない。
ゲームを仕掛けた筈だったのに、逆にゲームを仕掛け返されるなんて。


毒入りワインを飲み込んだせいか、胸の奥がチリリと熱くなった腹いせに
セバスチャンは少しだけ強くシエルの舌を噛んだ。





汚れた舌



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【2011/12/11 13:06 】 | Project | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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