この英国で、ファントムハイヴという名はどれほど知れ渡っているのだろうか。
玩具・製菓メーカーであるファントム社としての名。
そして、女王の番犬としての名。
きっとどちらも同じように、広く知れ渡っているに違いない。
表でも、裏でも。
それは、その名を背負うシエル・ファントムハイヴにとっては願ってもやまないことだ。
「坊ちゃん、失礼します」
執事として仕える彼は、声を掛けながら執務室の扉を開ける。
その表情は実に愉しそうで、逆に冷ややかにも見える。
それは正体が悪魔だからなのか。
それとも。
「お手紙が来ましたよ」
コツリコツリと足音を立てながら己の主人に近づいていく。
主人は手にしていた書類を机に置き、目線をこちらに投げかけてくる。
一体誰からだ、という疑問をぶつけられているが、あえて執事は答えない。
ニッコリと微笑んだまま、胸ポケットから手紙を取り出し、封を切る。
そして中身を読まずにそのまま主人へと手渡す。
主人は怪訝な顔をしながらもその手紙を受け取り、手紙を読もうとするが、蝋封に刻まれた印を見てハッとした表情になる。
主人がチラリと執事を見れば、執事は満足そうに1つ頷くだけ。
それを見た主人は目を細め、どこか冷めた手付きで封筒から手紙を抜き出し、内容を確認する。
一体どのような内容が書かれていたのだろうか。
主人はフッと口元に弧を描き、執事が入ってきた時と同じような、愉しそうな顔をする。
「どうやら最近起きている無差別殺人事件に憂いておられるらしい」
主人は言いながら手紙の他に入っていた、もう1つの紙切れを執事の前に差し出す。
「そしてその犯人と思われる相手・・・マフィアが主宰する仮面舞踏会の招待状までご用意してくださった」
「おや、それは随分と・・・」
最後までは言わずに執事は口元に手をやり、ニヤリと哂う。
主人は手紙を机の上に置き、まるで遊び道具でも見つけたかのように立ち上がった。
そして、シエル・ファントムハイヴは最強の駒の名を口にする。
「セバスチャン」
ゲームの時間だ。
「イエス、マイロード」
最強の駒であるセバスチャン・ミカエリスは瞳を赤色に染め上げた。
-GameⅢ-
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あとがき
15000HITありがとうございます・・・!!
というわけで、恒例と化してきています『Game』でございます。
少しでも楽しんでいただけると幸いです。
是非ともお付き合い宜しくお願いいたします^^

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