忍者ブログ
  • 2017.06
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 31
  • 2017.08
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

【2017/07/25 05:50 】 |
GameⅢ2
GameⅢの続きです。
「随分と人が多いな」
「きっとほとんどの英国貴族をご招待なさったのでしょう。妻も子も同伴可でしたし」
「一応仮面舞踏会は相手の名、そして自分の名を明かさないとしている。夜会と違って貴族同士のやっかみを被ることも少ないから、余計出てくる者が多いんだろう」
「位の高い貴族ほど、夜会などには出席しませんしね」
たとえば、坊ちゃんとか。

仮面越しに哂うセバスチャンを、シエルはジトリと睨んでやる。
が、シエル自身も仮面をつけているので、他の人から見れば睨んだというよりもただ見つめたというようにしか見えなかっただろう。
悪魔の目にはしっかり睨んだ姿が見えたとは思うが。



今宵、シエルとセバスチャンは無差別殺人事件の犯人と思われる者が主宰の仮面舞踏会に来ていた。
目的はその犯人を捕らえること。もしくは、“無きもの”にすること。
すでにシエルはその犯人と思われる人物の顔は知っていた。
この英国裏社会の住人になる者は、裏社会の秩序であるシエル・ファントムハイヴに挨拶をする義務がある。
そのマフィアの幹部である犯人も随分と前にシエルに挨拶をした者だった。
イコール、この仮面舞踏会は裏社会の人間が主宰したものであったりする。
ここにいるほとんどの貴族は、そんなことも知らずにただ楽しんでいるだけのようだが。


「それにしても、坊ちゃんが男の子としてこのような場所に来られるのを久しぶりに見た気がします」
「・・・それに関しては同意するな」

セバスチャンの言葉に、ため息をつきながら頷く。

いつもは自分の素性がバレてはいけないと、女装をした潜入捜査が多い。
悔しいことだが、女装をした方がバレる可能性がグッと下がるのだ。
もう少し自分が大人になれば、髪型などを変えるなどでまだ少しは誤魔化せるだろうけれど、今はまだ無理だ。
しかし今回は潜入捜査というよりも捕まえることが優先であり、たとえバレてしまったって構わないのだ。
いや、もうバレるバレないの問題ではなく・・・。
それに今宵の舞台は夜会ではなく、仮面舞踏会。しかも家族同伴可で自分以外にも幼い子らが沢山いる。
たとえ他に同じ企業の人がいたとて、よっぽどの顔見知った仲でなければシエルだと気がつくことも無いだろう。
だから今回は女装することもなく、シエルのままでこの仮装舞踏会へと足を踏み入れたわけだ。

「男の子として参加する方が違和感があるというのも、何だか悲しいですねぇ」
「黙れ貴様」

自分でも思ってしまっていることを嫌味で口に出され、呻くように返せば、愉快そうに『これは失礼しました』と引き下がっていく。
完全に楽しんでるな、コイツ。
シエルは舌打をしつつも、会場内を歩いていく。
いつどこで何が起こるか分からない。すでに自分達の周りには裏社会の人間が会場内を見張っているのだ。
たとえセバスチャンがいようとも命令をくだすのは自分。油断は出来ない。
警戒しながら進んでいくと、見知った人影が二つ瞳に映る。
たとえ仮面をつけていようとも、シエルは一目でその二つの影が誰なのか分かり、息を吐いた。
隣でセバスチャンも、おやおや、とため息をついている。

「貴様か、シエル・ファントムハイヴ」
「え?!シエル君?!」

向こうも気がついたのか、二人はこちらへと向かってくる。
あぁ・・・面倒くさい奴らもいたもんだ。
シエルは舌打をしながらも応じる。

「仮装舞踏会では名を出さぬのが礼儀ですよ」

ランドル卿?と耳元で囁くように言えば、ランドル卿は芋虫を潰したような顔をする。

「ど、どうしてシエル君がこんなところに?あ、招待されたからかな?」

もう一人、フレッド・アバーラインはランドル卿とは違い、人懐っこい笑顔を浮かべながらシエルに話し掛けてくる。
しかしすぐにランドル卿がそれを手で制止し、首を横に振る。

「どうせ今夜も女王の番犬としてここに来たのだろう?」
「おや、どうしてそう思われるのかな?」

シエルは言いながらもセバスチャンに視線を送り、“あること”を促させる。
セバスチャンはその促しについて数回瞬きをしたが、すぐに一礼をし『飲み物を取ってまいります』と、その場から離れていく。
ランドル卿とアバーラインは特に気にしたふうもなく話しを続ける。

「お前のようなものは事件でもなければ、こんなところにわざわざ出向くこともないだろう」
「おや、僕だって一応表の顔向きはファントム社の社長であり、立派な貴族だ。全てを裏の顔で動いているわけではない」
「ふん。貴様の表の顔など、ただの仮面だろう」
「ちょっ!ランドル総監!」
「まぁ、どちらにしろ貴殿と共に行動することはないから安心してくれ」

シエルはクスリと哂う。
そしてアバーラインの方を向きながら、少し柔らかい声音で尋ねる。
もちろん、ランドル卿に聞いても答えてもらえないと分かっているからだ。

「ところで、ヤードがいるということは・・・」
「あぁ。今回の無差別殺人事件の犯人がここの主宰者だからね」
「おい!アバーライン」
「ほぉ、ヤードはそこまで証拠を掴んだわけだな。・・・それは正確なのか?」
「なっ!馬鹿にするな伯爵!貴様などの手を借りずとも我々ヤードが事件を解決していく!」
「それはいい心掛けだ」

「坊ちゃん」

後ろから先ほど飲み物を取りに行くと言っていたセバスチャンが声を掛ける。
振り返れば言葉通りにグラスを三つ持ち、その場に立っている。
服の乱れはもちろん一切ない。

「お飲み物をお持ちしました」
「あぁ」

セバスチャンは順々にグラスを渡していき、そして再びシエルの隣へと収まっていく。
ヤード二人に渡したグラスの中身は色や見た目からしてお酒だろうが、シエルのには珍しくジュースが入っていた。
きっと子供用の飲み物だろう。わざわざそれを選んで持ってくるとは、セバスチャンらしい。
シエルはその中身を知って、ピクリと反応するが特に文句を言わずに一気に呷る。
こういう場の飲み物は非常に少ないし、まずただのジュースなので一気に飲んでも問題はない。

「じゃぁ僕達はここで失礼するとしよう」

一人全て飲み終わったシエルは空のグラスを片手に、ランドル卿とアバーラインの間を歩いていく。
しかし丁度挟まれるようなところで、少しだけ歩調を緩め

「出会いついでに、いいことを教えてやろう」

囁くように話し出す。
二人だけにしか聞こえないような小さな声で。

「背後には気をつけたまえ」

空のグラスをまるで刃物のようにアバーラインに突き出し、手を離した。
もちろんグラスは刃物ではないので相手に刺さらずに、重力通り地面へと落下していく。
それをアバーラインは慌ててキャッチすれば、シエルはまたクスリと笑い『行くぞセバスチャン』と再び元の歩調で進んでいく。
その姿を見ながら、ランドル卿が歯軋りをしたのをセバスチャンは愉快そうに眺めていた。





「お優しい方ですね」

二人から大分離れたところでセバスチャンはシエルに声を掛ける。
シエルはその言葉に込められた悪魔らしい感情に内心面倒な奴だと愚痴る。
こういう時でさえ、悪魔の嫉妬心は強いらしい。

「元々僕を監視していた奴らだ。ヤードまでいると分かったら騒ぎ出す恐れがあるからな」


そう。
シエルがセバスチャンに促させた“あること”とは、自分らを監視している犯人の一味を蹴散らせということだった。
自分が接触しているのがヤードだと分かったら、きっとこの会場の人間などお構いなしに攻撃をしてくるだろう。
他にヤードがいないかを案じて・・・。
だから先に気付かれる前に、セバスチャンにそいつらを排除させたのだ。

セバスチャンは目配せでその命令をすぐに理解したものの、どうやら予想外の命令だったらしい。
だから反応に少し遅れてしまった。忠実な執事、そして契約する悪魔として、それはあってはならないことだがシエルはそれを咎めるつもりは全く無い。
きっと普通の人間ならば、目配せだけで命令を理解することすら不可能だっただろうから。

「人数は?」
「三人でございました。今は物置の中でお休みになられています」
「そうか」
「それにしても、早かったですね。こんなにも人数がいるのに、坊ちゃんだとバレのが」
「それは仕方ないだろう。奴らは僕がここに来ること初めから分かっていたんだから」

シエルはそっと内ポケットから先日届いた手紙を出す。
そこに押された蝋封には、普通の人が見れば女王の紋章が刻まれているが。

「自ら僕を誘うとはいい度胸だ」
「もしかしたら本気で坊ちゃんを騙そうとお考えだったのかもしれませんよ?」
「だったらどれほどの馬鹿だろうな。こんなもので僕が騙されると思っているのか」


その手紙には偽物の紋章が刻まれていた。
シエルはそれを見た瞬間に見抜き、面白可笑しく読んでいたのだ。
一体なんの招待状なのかと・・・。

どうやら犯人は何が目的なのかは知らないが、シエルを仮装舞踏会に呼びたかったらしい。
女王の番犬であるシエル・ファントムハイヴを。
だから今回はバレるバレないの問題ではなく、シエル自身で参加することが可能だったのだ。


「貴様も素直に偽物の手紙だと言えばいいものを」

シエルは手紙を受け取ったときのことを思い出しながら言う。

「ですが、遠まわし的に言ったでしょう?女王陛下からのお手紙ではなく、ただ“お手紙”だと・・・」
「僕を試したかっただけだろう」
「まぁ、否定はしませんよ」

いけしゃあしゃあと言ってみせるセバスチャンにシエルはやっぱりな、と哂ってやる。
この悪魔は主人であるシエルを、いや、人間であるシエルで遊ぶ時がある。だが、その逆も然り。
人間が悪魔で遊ぶなど、きっと今の世にはシエルぐらいしかいないだろう。
他の人から見たら仲の悪いような、腹の探り合いをしているような会話だが、二人にとっては小さなお遊び。
噛み付き合う恋人同士の戯れだ。

「さて、まだお話をしていたいところですが・・・」

セバスチャンは歩みをゆっくりと遅くし、とある方向を向く。
シエルはセバスチャンの雰囲気からして身を固くし、その視線を辿っていくと、ある紳士の姿が目に映る。
周りの紳士と比べて、体格はいい方だ。何か鍛えているのか、もしくは鍛えないと生きていけない世界にいるのか。

「アイツは・・・」
「はい。今回の犯人であるマフィアの幹部、スイス・アウトニー様です」
「幹部が直々に参加するとはな。アイツで間違いないのか」
「えぇ。仮面を被っておりますが、以前一度お会いされたアウトニー様と骨格、声紋など全て一致しております」
「ならば間違いないな」

招待されたのはこちらなので、向こうから出迎えられるかと思ったが、どうやらこちらから挨拶をすることになるみたいだ。
どこまでも抜けた連中らだな。
シエルはつまらなさそうにため息をつき、そして一歩前へ踏み出す。
セバスチャンもそれに続こうと一歩踏み出そうとするが。

「お前はここにいろ」

シエルは振り返り命令する。

「きっと奴は僕を殺そうと、会場の外へと連れて行くだろう。お前はその後ろをバレないように着いて来い」
「油断を誘うつもりですか?」
「どうせお前が傍にいても、ここの会場にいる人たちを人質にとって僕を一人にさせるに決まっているからな」
「まぁ敵にとっては、それが一番の方法でしょう。坊ちゃんお一人でしたら何の心配いりませんからね」
「・・・先に殺すぞ貴様」

そう睨みつけてやれば、おや怖いと微笑んでくる。
決めた。今度絶対に殺してやる。

「はぁ。今は貴様なんぞと遊んでいる場合じゃない」
もう行くからな。

これからマフィアの幹部に会いに行くような感じなど微塵もなく、たいそう面倒くさそうにスイスへと向かっていくシエル。
それもそうだろう。
こんな穴だらけのゲームなんて興味はない。
帰って早く甘いものが食べたいなどと気楽に考えていると。

「坊ちゃんっ」

いきなりセバスチャンに手を引かれ、シエルは驚いたように振り返る。

「どうした」
「あまり無茶はなさらずに。私が後ろにおりますから」

どこか心配そうな表情で言うセバスチャン。
全く。あの嫌味を言っていた人物とは思えないな。
シエルは苦笑しながら、掴んできた手にそっと触れる。

「・・・あぁ。分かっている」

だから心配するなというように少し微笑めば、セバスチャンはぎこちなげに手を離していく。
その手はまだ不安そうに宙を漂い、そして主を無くしたかのように寂しげだ。
あぁクソ。本当に馬鹿な悪魔だなっ。
踏み出していた距離を大またで戻り、シエルは一瞬だけセバスチャンに抱きつく。

今宵は仮面舞踏会。
今は皆、素性を隠し、そして隠された存在。
そんな仮面の中でならば、少しくらい素直になってみてもいいだろう?

「お前が僕を守ってくれるんだろう?」

そう囁けば、シエルよりも強い力でセバスチャンは抱きしめ返し

「もちろん。誰にも触れさせませんよ」

耳元にキスを落とす。
まるでお守りだとでも言うように。

「・・・ふん」

シエルは急に恥ずかしくなり、突き飛ばすようにセバスチャンから離れる。
きっと頬は赤くなってしまっているだろう。仮面で顔が隠れていて良かった・・・。

「じゃぁ任せたぞっ」

今度こそシエルはスイスに向けて、小走りで足を進めた。







「こんばんは、スイス・アウトニー」

シエルはニッコリと微笑みながらスイスに声を掛ける。

「おやおや、これはこれは。そちらから声を掛けて頂けるとは・・・」
「この度はお招き頂きありがとうございます」

偽の女王の手紙を差し出すと、スイスはマフィア特有の嬉しそうな表情で笑った。

「こちらこそ。お招きに応じてくださって光栄です、ファントムハイヴ伯爵」
「まぁ、僕も暇ではないのですがね」

答えながらも相手の動きに注目する。
もしかしたらいきなり撃たれるおそれもあるのだ。
後ろにセバスチャンがいるから絶対安全だとしても、油断は出来ない。
それに、もしも本当にスイスが撃ってくるような真似でもしたら、二度とセバスチャンはシエルを一人で犯人に接触させないようにするだろう。
元々過保護でうるさいのに、これ以上付きまとわれたら邪魔だ。

「では伯爵、場所を移動しましょうか?」

シエルの予想通りの言葉を投げかけてくるスイス。
シエルはやはりな、と内心呆れたように息を吐く。

「移動?」
「我々にとって、ここはいささか明るすぎるのでは?」
「・・・まぁいいだろう」

その答えを聞いたスイスは、まるでもはや勝利でもしたかのような余裕な表情で微笑み、会場の外へと案内し始める。
馬鹿な奴だ。自分の方が手の平で転がされていることに気がつかないなんてな。
シエルは振り返ることもせず、スイスの案内のまま歩いていく。

さて、コールはいつ響かせようか。

会場外に連れ出されたらすぐに響かせるのもよし。
己を殺そうとしたら響かせるのもよし。
話しを聞くだけ聞いたら響かせるもよし。
勝利はすでに自分の手の中にある。


カウントダウンの始まりだ。


シエルは仮面の下でニヤリと哂った。



****
あとがき
今回は『Game』という感じではないのでは・・・という感じになりそうですorz
二人でゲームを受けるんだったら、もっと難しい問題に突撃させるべきだったかしら・・・。
それは次回のⅣに回しますw(まだ書く気か)


拍手

PR
【2011/03/24 16:43 】 | Text | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
<<GameⅢ3 | ホーム | GameⅢ1>>
有り難いご意見
貴重なご意見の投稿














虎カムバック
トラックバックURL

<<前ページ | ホーム | 次ページ>>