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【2024/04/29 13:28 】 |
見たくなかった
契約恋愛五題



それは丁度仕事の休憩中。
シエルは伸びをしながら椅子を回し、窓の外を見やる。
疲れた瞳には自然を映すのが一番いい。

「ん?」

しかし映ったのは自然だけではなく、とある人影が。
己の執事、セバスチャンの姿だ。
どうやら白薔薇の傷んだ花を切り取っているらしい。
悪魔のクセに人間の真似事など、ご苦労なことだ。
しばらくそんな悪魔を観察していると。

「アイツ・・・本当に随分と人間みたいな顔をするようになったな」

綺麗に咲いた白薔薇を見つめながら優しく微笑むセバスチャン。
シエルは立ち上がり、椅子に座っていた時よりも近くでその顔を見る。
決して近い距離ではないが、片目のシエルでも十分その表情を窺える。

優しく微笑んだままセバスチャンは何か一言呟き、その見つめていた白薔薇に口付ける。

「っ!!」

それを見た瞬間シエルはカーテンを引き、視界からセバスチャンの姿を消す。
カーテンを掴んだままシエルは顔を赤くし、困ったように眉間に皴を寄せている。

「アイツ・・・っ」

どうして。
どういうことだ。

『シエル』

セバスチャンが呟いた言葉。
しっかりと口の動きが自分の名前を表していた。

「くそっ!」

シエルは自分の見たものを忘れるように、頭を振った。


あんなもの、見たくなかった。




END

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【2011/03/24 18:14 】 | Title | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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