口の中で広がる甘い味。
含んだ瞬間は酷く冷たいのに、それがじんわりと溶けていくのは妙に心地いい。
アイスというものは不思議なものだ。
「お気に召していただけましたか」
「あぁ」
隣で執事がこちらの様子を見て微笑む。
しまった顔に出ていたか、と後悔しても仕方が無い。
シエルは素直に頷いた。
今日のスイーツはアイス。
ケーキとかならばゆっくり味わいながら食べていくが、これはそうもいかない。
早く食べなければ溶けてしまうからだ。
「ねぇ坊ちゃん」
「なんだ」
「これを食べ終わった後、貴方を抱きます」
囁かれた言葉にピタリと動かしていたスプーンを止める。
目線を合わせれば赤く輝く悪魔の瞳。
自分から合わせておきながら逃げるように逸らし、何も言わずに再びアイスをスプーンで掬い始める。
早く食べなければ溶けてしまう。
けれど。
早く食べれば自分が。
じんわりと口の中で溶けるアイスが、先ほどよりも妙に甘く感じた。
End
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