[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
口の中で広がる甘い味。 含んだ瞬間は酷く冷たいのに、それがじんわりと溶けていくのは妙に心地いい。 アイスというものは不思議なものだ。 「お気に召していただけましたか」 「あぁ」 隣で執事がこちらの様子を見て微笑む。 しまった顔に出ていたか、と後悔しても仕方が無い。 シエルは素直に頷いた。 今日のスイーツはアイス。 ケーキとかならばゆっくり味わいながら食べていくが、これはそうもいかない。 早く食べなければ溶けてしまうからだ。 「ねぇ坊ちゃん」 「なんだ」 「これを食べ終わった後、貴方を抱きます」 囁かれた言葉にピタリと動かしていたスプーンを止める。 目線を合わせれば赤く輝く悪魔の瞳。 自分から合わせておきながら逃げるように逸らし、何も言わずに再びアイスをスプーンで掬い始める。 早く食べなければ溶けてしまう。 けれど。 早く食べれば自分が。 じんわりと口の中で溶けるアイスが、先ほどよりも妙に甘く感じた。 End