「おはようございます」
「・・・・」
「駄目ですよ、そのまままた眠ってしまっては」
「・・・今日ぐらい、いいだろう」
「予定が無いからと言ってだらけるなんてファントムハイヴ家たるもの、恥ずかしいですよ」
何がファントムハイヴ家たるもの、だ。
まだソレになってから3年しか経っていないというのに。
それに正体は悪魔だと言うのに。
「ほら、坊ちゃん」
セバスチャンはシーツを掴み、シエルを攻撃的な光の下に晒し出そうとする。
それを抵抗しようと同じようにシーツを掴み抵抗する。
主人と執事のシーツの引っ張り合い。
それははたから見たら酷く滑稽だろう。
「いいだろう別にっ」
「主人たるもの我侭言わないでください」
「じゃぁ僕自身なら我侭を言ってもいいのか」
「屁理屈言うなんて子供ですよ」
「子供だ」
「都合のいい時だけ子供にならないでくださ、い!」
最後の言葉に力を込めて、そのままシーツを持ち上げしまう。
所詮悪魔と人間。勝負の勝敗なんて最初から決まっている。
シーツを取られたシエルはうつ伏せになり、枕に顔を埋めてしまう。
こうなれば意地でも起きない。
このまま引き下がるというのもファントムハイヴ家たるものの恥じになるだろう。
pそんな様子にセバスチャンはため息をついた。
「そんなに起きたくないのですか」
「・・・」
「スイーツは坊ちゃんの好きなイチゴをのせたワッフルですよ」
「・・・・」
「読みたがっていた本も届きましたし」
「・・・・・・」
「・・・それでも起きませんか」
他のものと変えても睡眠が欲しい時だってあるのだ、と言っても、この悪魔は理解できないだろう。
「そんなに僕を起こしたいのか」
「えぇ」
「仕事は無いのに起こしたいのか」
予定が狂うことはないだろう。
そう言えばギシリとスプリングが軋んだのを身体で感じ、セバスチャンがベッドに座ったことを伝える。
そしてそのまま気配は近づき、自分の上に覆いかぶさった感覚がして反射的に顔を上げれば。
「貴方が起きてくれなければ、私は酷くつまらないですから」
寝顔も可愛いと思いますがね。
耳元に息を吹きかけるように囁かれ、シエルは慌てて起きることを選択した。
睡眠よりも守らなければいけない身体があるのだ。
End

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