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【2024/04/29 05:00 】 |
*030
ハロハロ 聞こえますか 応答せよ 私のセカイ




世界が在る
己が悪魔であるにも関わらず
それは必ず存在するのだ。

「どうされました」
「なにも」

首を横に振りつつも世界はどこか不満げな表情を浮かべ、椅子の肘掛に肘を乗せて頬杖をつきながら窓の向こうを眺めている。

<世界とは、存在を持つ存在が存在するためのもの>
<イコール、存在する為には世界にいることが必要不可欠で>

イコール、彼のことを世界だと名称付けたということは。
彼の存在は己が存在する為には必要不可欠というわけだ。

「なにも、と言うわりに不機嫌な様子ですが」
「なにも」

返される同じ言葉。
窓の向こうは雨が降り、大きな音を立てて地上を濡らす。けれど世界はそれを見ているわけではないのだろう。
ただこちらを見たくないから顔を背けているに過ぎない。

<どうされました、なんて>
<本当は全部ぜんぶ分かっている>

世界を怒らせた理由は、先ほど屋敷に来た花屋の人間だろう。

「・・・・」
「・・・・」

花屋はいつもとは違う人間で、初めて見た女性だった。
どうやら話しを聞くといつもの男性の子供らしい―――子供といっても妙齢の女性だったが。
向こうからも己は初めて見る“男性”で、頬を赤く染め上げて花をこちらへと渡していた。
それを後ろで見ていたのは三人の使用人。

<その三人の世界も彼から成り立っているもの>
<イコール、三人もまた世界に存在する存在だというわけで>

イコール、三人が口にした話を彼は耳にすることができるのだ。
女性が執事を見て頬を染めていたということを。

「気に食わないことがあるのでしたら仰ってください」
「別に」

“なにも”が“別に”に変わっただけの会話。
相変わらず世界は顔を背けたまま。
これでは埒が明かない。

<このまま放っておくことも出来る>
<だが、己の世界を見てみぬ振りなど出来るわけがない>

「・・・あの女性とは別に何もありませんよ」
「・・・・」
「たとえどうあったとしても、向こうの片思いで終了です」

私は貴方のことを愛しているのですから。
そう付け加えて、こちらを見ていないのに微笑んでみせる。
我ながらどこか安っぽい気がするが、これ以上どう気持ちを表したらいいのか分からない。

<感情なんてものの表現方法は分からない>
<本来、悪魔にそれは不必要なのだから>

けれど世界に己の気持ちを伝える為に、どうにかして表現しなければ。

「・・・・」

世界は黙したまま、ゆっくりと顔をこちらに向ける。
その蒼い隻眼はどこか愉しそうに細められ、口元には弧が描かれている状態。

――――あぁ、世界が笑っている。

世界が嘲笑う
己が悪魔であるにも関わらず
世界は笑みを見せるのだ。

<己の気持ちを為にどうにかして表現しなければ、なんて>
<そんなの本当は必要ない>

相手は己の世界だ。
三人が口にした話を耳にすることが出来たように、こちらの心情などとうに読み取っているだろう。

「なぁ、セバスチャン」
「・・・はい」

世界の声に震える空気。
振動として耳に入ってくる音は言葉という生き物になって、脳の中を侵食していく。
それがひどく心地よくて、もっともっと世界の振動を感じていたい。

<彼の声を聞いていたい>

「貴様の言葉ほど、信用ないものはない」
だが、

世界は手を伸ばし、誘うように指を動かす。

「貴様の存在ほど、信用たるものはない」

<世界とは、存在を持つ存在が存在するためのもの>
<イコール、存在する為には世界にいることが必要不可欠で>

イコール、彼のことを世界だと名称付けたということは。
彼の存在は己が存在する為には必要不可欠というわけで。


結局のところ。


「おいで、駄犬」




己は世界の一駒に過ぎないのだ――――




<己の存在イコール契約の証>
イコール、
<世界の信用たるもの>
イコール、
<信用しているのは己ではなく、>

契約のみ。




淡く滅んだ





*****
約30の嘘”様からお借りしました

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【2012/09/08 21:53 】 | Little Box | 有り難いご意見(0)
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