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【2024/04/20 14:15 】 |
呑み込む前の熱(子供)
子供の貴方




彼が好きなものといえば、甘いものだろう。
スイーツというよりも、もうそれは食の中心たるもので、彼から甘いものを取り上げたら彼の食が無くなってしまうのではないか、というほど。
だがそれは子供ならではということも考えられるが・・・彼だとそういうわけでもないような気がする。

では逆に彼の嫌いなものは何だろうか。
考えると案外色々出てきたりもする。
辛いものは苦手だし、甘いものとは逆に苦いものもあまり好まない。

苦いものが嫌いだなんて、彼にとっては由々しき問題だろう。
なぜなら彼は・・・――――



「・・・・」
「・・・早く飲んでくださいね」

紅茶をなみなみ注ぎ足されたカップを片手に持ち、目の前に置かれているものを睨んでいるシエルにセバスチャンは声を掛ける。
だが彼の表情はダンスレッスンの時と同じくらい嫌そうに歪められており、全身からそれを拒否していた。

「飲んだらスイーツの時間にしましょう」
「・・・スイーツの後に飲む」
「嘘言わないでください」

そんなシエルを見てセバスチャンはため息をつきながらソレを飲むように促すが、彼もまた頑なに拒否する。
今までソレを何度も飲んできた筈なのに、どうして今だに嫌がるのか。
―――いや、飲んできたからこそその味を知っていて嫌なのだろう。
それでも引き下がるわけにはいかない。これも彼の為なのだ。

「引き始めが肝心だと言うでしょう」
今のうちに薬を飲んで直しておかないと。

そう優しく微笑んでみせるが彼は首を横に振る。

「また風邪を引いて喘息まで出たら苦しいのは坊ちゃんですよ」
「お前はただ仕事に支障が出るのが嫌なだけだろう」
「まぁ、確かにそれもありますが・・・」

嘘をつくなと言われているため、彼と同じように首を横に振ることが出来ない。
セバスチャンの返答にシエルはやっぱりな・・・と椅子の背凭れに寄り掛かりながらため息をついた。
どうやら余計に飲む意志が無くなってしまったらしい。
(まったく、困った餓鬼ですね)
内心で息を吐き、セバスチャンはシエルの座る目の前まで歩を進ませる。
すると何か警戒した面持ちで視線を上げた彼に、警戒心を解かせるように膝を折り、逆にこちらが相手を見上げるような形にした。

「坊ちゃんが苦しむ姿を見たくないというのも本心ですよ」
「・・・・」
「私のためにも飲んでくださいませんか?」
「お前のためにの方が飲むわけがないだろうが」
「・・・そうですか」

ほんの間も開けずに答えたシエルはきっとセバスチャンのブチリ何かが切れたような音は聞こえなかっただろう。
それでもすぐに怒らせたということには気が付くはずだ。
セバスチャンはニッコリと笑みを張り付かせたまま再び「そうですか」と言い、まるで引きずり落とすかのようにシエルのネクタイを引っ張った。

「・・・・っ!」

いきなり引っ張られたシエルは椅子から落ちそうになるが、すんでのところでセバスチャンの肩に手をついたおかげで落ちることは間逃れた。

「いきなり何するんだっ」
「我侭な子供にはお仕置きも必要だと思いまして」
「は?っ・・・・・んン!?」

セバスチャンの言葉の意味を理解出来ず首を傾げていれば、下から掬い上げられるような状態で唇が重なり合う。
いつもならば唇の温度を混ぜ合わせるかのように優しく啄ばまれるというのに、今日は口付けた瞬間からセバスチャンの舌が口腔に入り込み、内をぐちゃぐちゃにかき回していく。

「ん、ふ・・・はっ・・・ンンんッ!」

くちゅくちゅと水音が耳を擽り、飲みきれない唾液が顎を伝う。
息をする暇も与えられないので息苦しく、思考が真っ白に染まり目の前まで涙で歪んで。
――――そのせいでセバスチャンが机の上に乗せていた薬を手に取っていたなんて気が付かなかった。

「ふはっ・・・あ、ふ、はぁ・・・」

やっと唇が開放されると力が抜けたシエルはそのまま椅子からずり落ち、セバスチャンの腕の中へと納まっていく。
それを優しく受け止め、片手で頭を撫でられてしまえば、すでに蕩けてしまいそうなシエルは彼の胸板に頬を押し当てて瞳を閉じながら荒い呼吸を整えようとした。

「ん?」

が、ふいに頭を撫でていた手がトントンと頭を軽く叩く。
シエルはそれに誘われるままに顔をあげれば、再び唇が重なった。
また与えられる熱にシエルはうっとりと瞳を閉じようとしたが―――

「んっ!ううんん~~~っ」

口の中に広がったよく知った苦さにシエルは目を見開き、ドンドンと胸板を叩いた。
だがそれを逃がさないというようにセバスチャンはシエルを強く抱きしめ、そして口付けをより深くしてくる。
目の前にある赤い瞳は悪戯気に細められていて。
(さ、最悪だ!)
シエルは内心で叫んだ。

普通ならば飲み物と一緒に飲む粉薬。
どうやらセバスチャンは飲み物を口に含むことも無く、舌に粉薬を乗せていたらしい。
飲み物があった方がまだ苦味が軽減されるというのに。
――――これがセバスチャンの言っていたお仕置きなのだろう。

唾液と共に流れてくる薬は溶けることはなく、まだ小さな粒の状態で。
それでも唾液を飲み込まずにはいられないので、シエルはそれを必死になって飲み下していく。

口腔の苦味が全て無くなるまで口付けを交わしたあと。

「最悪だっ!」

内心で叫んだことを口にして相手を睨みつければ。

「お仕置きだと言ったでしょう?」


セバスチャンはそう意地悪に舌を突き出した。




呑み込む前の熱

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【2011/11/15 23:42 】 | Project | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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