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【2024/04/20 20:49 】 |
S×Sパニック
【グレル】
Sweetセバス×Sweetシエル



とある日のこと。
仕事をしているシエルとセバスチャンの元に、その赤い死神は突然現れた。

「ハァ~ィ、セバスちゃん。お久しぶりDEATH☆」

赤い死神グレル・サトクリフは、風を通す為に開けていた窓にフワリと音も無く降り立つ。
先ほど気配がしたかと思えば、すぐに自分の傍に姿を現した死神。
人間には出来ない荒業が自分たち悪魔と同じように出来てしまうのは厄介なことだ。
人間のように気配を撒き散らしてくるのならば、屋敷の中に入れる前に追い出すことも可能なのに。

「出て行ってくださいませんか」

セバスチャンは書類を手に持ちながらジトリとグレルのことを睨みつける。
死神の存在自体気にくわないが、まず何より今は仕事中なのだ。
主人であり恋人であるシエルの邪魔をさせたくない。いや、させるわけにはいかない。

「え~、久しぶりに会ったというのにつれないわね」
「見て分かるように今仕事中なんです」
「仕事をしているのは、このガキだけでしょう?」
「常に私も執事という仕事をしているのですが」

どうやらここから出て行く気はないらしく、グレルは、ふぅんと適当な相槌を打ちながら窓枠に腰を掛ける。
今その手にデスサイズを持っていないとしても、いつ一体何をするか分からない。
なんせマダムレッドをシエルの目の前で殺した相手だ。そんな相手がシエルの背後にいるというのも落ち着かない。
やはり存在自体気にくわないですね。
セバスチャンはため息をつきながら書類を机に置き、追い返そうとしたところ。

「で、一体なんの用だ。グレル・サトクリフ」

シエルはため息をつきながら椅子をクルリと回し、後ろに振り返る。
今度はシエルが自分に背中を向ける形になり、その表情を見ることは出来ない。

「ちょっとセバスちゃんを貸して欲しいのよ」

問われたグレルは足を組みながら答えた。
まるで可愛くおねだりをするように首を傾けるが、全く可愛くもなんともない。
目障りな赤色の髪がサラリと横に流れただけだ。
これ以上話しを聞くのも馬鹿らしいと思うのだが、シエルはその先を促す。

「それで?」
「セバスちゃんをアタシに貸してくれたら、ここ一ヶ月での死亡予定者とその場所を教えてあげる」
「大きな事件関連を先に知ることが出来るというわけ、か」
「アンタにはピッタリの“お支払い”でしょう?」
「お支払いねぇ・・・」

苦笑するような声。
確かに女王の番犬・・・裏の人間にとってはピッタリの“お支払い”だ。
きっとそれはシエル自身も分かっているのだろう。
けれど返す答えは。

「残念ながらグレル。交渉は失敗だ」

シエルの凛とした淀みない声が高らかに響き、セバスチャンは口元に弧を浮かべた。

「そんなものでセバスチャンが買えるだなんて・・・。随分と僕のものを低く見てくれたものだな」
「そ、そんなこと無い筈よ!死神だから払える最高のものじゃない!」
「じゃぁお前は、そんな情報がセバスチャンと同じ位の価値があると思っているのか?」
「・・・・」

いじけるように黙るグレル。
シエルは痛いところを突いたらしい。
やはり悪魔でも死神でも、このシエル・ファントムハイヴの口には勝てないようだ。
セバスチャンは足を進めシエルの元まで行くと、頭をそっと撫でてグレルの方を睨みつけた。

「ということですので、お帰りくださいグレルさん」
「・・・あーあ、絶対に上手くいくと思ってたのにぃ」

しばらく黙っていたグレルは大きなため息をつきながら立ち上がり、伸びをする。

「なんだか随分と仲良くなっちゃったみたいね?」
「元々私と坊ちゃんは仲が宜しいですよ」
「悪魔と人間なのに?」

まるで何かの仕返しのように言葉を吐き、まぁ今日は見逃してあげるわ、と笑った。

「随分とあっさりだな」
「上手くいくと思っていた取引が失敗しちゃって、妙にテンションが下がっちゃった」
「気分屋だな」
「あ~らアンタに言われたくないわよ」

苦笑しながら答え、セバスチャンの方へ向きなおせば

「また今度一緒に遊びましょうね、セバスちゃん」

シエルとは全然違う態度で、投げキッスをして微笑むグレル。
そしてそのまま入ってきた窓から外へ飛び、バイバイキーンとどこかへと消えていった。


「全く・・・。来る時も唐突なら帰る時も唐突だな」
「そうですね」

シエルはそのまましばらく外を見ていたのだがクルリと椅子を回し、元の方向へと戻す。
その表情は淡々としているが、機嫌が悪いのは一目瞭然だ。
セバスチャンは内心嬉しい苦笑しながら声を掛ける。

「坊ちゃん」
「・・・」
「そんなに怒らないでください」

もう一度頭をそっと撫で、顔を覗きこむ。

「もうあの馬鹿はいないのですから」
「・・・人の恋人を売買するだなんて最悪だろう」

ボソリと呟く声にセバスチャンは緩んだ口元を直すことが出来ない。
頭を撫でていた手を椅子に移動し、クルリと今度は自分の方を向かせて抱きしめる。
不機嫌な子供をあやすように背中を叩けば、シエルはセバスチャンの肩口に顔を埋めた。

「本当に馬鹿な奴だ」
「えぇ・・・そうですね」
「お前と代えられるものなんて、ありはしないのにな」

静かに紡がれる言葉に、セバスチャンは胸が締め付けられる。
同じように小さな声で、そうですね、と返し。

「坊ちゃんと代えられるものも、この世界には存在しませんよ」



貴方以外なんて、私は欲しくない


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【2011/03/26 06:45 】 | Project | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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