「お、お、お前は、シエルに優しくない!」
「・・・いきなりなんですか」
屋敷の廊下を歩いていてバッタリ出会ったところ、逃げるようにカーテンの半分身を隠しながら平和ボケ王子はいきなり悪魔で執事に告げた。
悪魔で執事はその姿、そして言葉に呆れながらため息をつく。
その手には数枚の書類を持っており、平和ボケ王子の台詞に出ていたシエルに届けに行くところだったのだろう。
「さっきシエルと話していたんだが、お前、またアイツに嫌味を言ったんだってな!シエルお、怒っていたぞ!」
「お仕事中なのにお喋りをしていたと・・・まったく。主人の仕事の邪魔をしないで頂けますか」
ハァ・・・とあからさまにため息をつく悪魔で執事に平和ボケ王子はビクリと肩を震わせ、顔を恐怖で引きつらせるが逃げることはせず、言葉を重ねようとする。
どうやらどうしても相手に伝えたいことらしい。でなければきっとこの王子は逃げていたことだろう。
「いつもいつもお前は主にそんな態度なのか?それじゃぁ、シエルに嫌われるぞ!」
俺のアグニを見習え!
平和ボケ王子はカーリーの右手執事の名前を出しながら胸を張る。
まるでカーリーの右手執事を自慢したいように見えてしまうが、察するにその執事のようにお前もシエルに優しくしたらどうだ、と言いたいのだろう。
悪魔で執事はフム、と一瞬考えるも、すぐにハッと鼻で笑う。
その姿は本来の悪魔の姿が滲み出ていて、相手が悪魔だと知らずとも、そんな黒い雰囲気を肌で感じ取った平和ボケ王子は今度こそ一歩後ろに後ずさった。
「私が坊ちゃんに嫌われると?そんなこと一生有り得ませんね」
高らかに言う悪魔で執事。
満面の笑みを張り付かせて言う意味は、そしてその自信はどこから来ているのだろうか。
「何でだ!」
「貴方のような餓鬼には一生分かりませんよ。坊ちゃんの気持ち、そしてこの関係をね。貴方は貴方でアグニさんと宜しくしていればいいんですよ」
ではこれから私は坊ちゃんの所へ行くので、と平和ボケ王子を通り抜けそのまま歩いていく。
カツンカツンと響く足音はどこか無機質で、相手の性質を上手く現しているような気がした。
「・・・どうせ嫌われる」
嫌味を込めてそう呟けば、どうやら聞こえてしまっていたようで無機質な足音がピタリと止まり。
平和ボケ王子は慌てて走って逃げていった。
「坊ちゃんの一番は私なのですから、そんなわけないでしょう」
その姿を追わず、悪魔で執事は口角を吊り上げながらそう呟いた。
「ねーバルドさん。あれって自惚r「言うなフィニ」
end

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