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【2024/04/24 06:53 】 |
24.出会う
五萬打御礼企画




(『15.待つ』の情事後です)


汚い部屋。
笑い声。
黒い羽。
咽るほどの血の匂い。
哂い声。

「・・・・ッ!!」

シエルはハッと瞳を開け、夢から覚める。
心臓は煩いほど高鳴り、息は若干乱れていた。
(あぁ・・・最悪だ)
目を覚ましたことによって逃れた悪夢に息を吐きながら、枕に顔を埋めて握り締める。
あの夢は久しぶりに見た。しかし見たとは言っても過去の映像を辿っていったわけではなく、過去の記憶をいっぺんに頭の中にぶち込まれたような感じだった。
一瞬内に数百台ものテレビが画面を映し出し、それを1つも逃すことなく見たというような状態。
過去と言う名の情報をぶち込まれた頭はガンガンと痛み、気分を悪くさせる。
しかし気分が悪いのはその頭が痛いせいだけでは決してないだろう。

血だまりの中にたたずむ悪魔。
此方に手を差し伸べて。哂って。契約して。
あの姿は何度見ても憎悪するし、吐き気がする。
そう思いつつも先ほどまで自分はその悪魔と身体を重ねていたのだから笑える話だ。

枕に顔を沈めたままため息をつく。
身体は気だるくて腰がまだ重い。しかし身体は綺麗に拭かれた状態で気持ち悪さはない。
いつ拭いたのか記憶はない。それはいつものことだ。
相手は遠慮なく自分を抱いてくるので、最後はいつも気を失ってしてしまうのだ。
初めはそれがみっともない気がして嫌だったが最近では全て諦め、むしろそこまで自分の身体を酷使させる相手に矛先を向けていた。
(この関係も、いつまで続くんだろうな)
自分を抱くときに向けられる赤い瞳は決して昼間には見られない瞳。
とはいっても、出会った時に見た狂気に満ちたような瞳でもない。

「・・・まぁ、どうでもいいか」

答えのカードを見るつもりがないシエルは枕から顔を上げて身体を回し仰向けになる。
するとコツンと肩に何かが当たったような気がし、横を向いてみれば。

(は?)

先ほど考えていた赤い瞳とバッタリ出会う。

「・・・・」
「・・・・」

互いに近い位置で見詰め合ったまま固まる。
どうやら赤い瞳の持ち主、セバスチャンはずっとここにいたらしい。
こちらを向いていたということは、自分が目を覚ましたところも見ていたのだろう。悪魔が眠ることなどないのだから。
(いるなら一言くらい声を掛ければいいだろう!)
見られて困ることなど一つもしていないが、誰かがいるということを意識していない姿を見られるのは妙に恥ずかしいもので、シエルは驚きとともに動揺が心を揺さ振った。

「き、さま」
「何がどうでもいいのですか?」
「あ?」
「先ほど仰っていたでしょう」

セバスチャンは無表情のまま問いかけてくる。
一瞬何について聞かれているのか分からなかったシエルは眉を顰めるが、すぐに先ほど口にした言葉を指しているのだと気が付いた。

「・・・別に。貴様には関係ない」
「そうですか」

あんな考え事を本人に言えるわけがなくそのまま拒否すれば、相手はアッサリと引き下がった。
そんな興味が無いのならばなぜ聞いたのかと逆に問いたくなるが、夜の時間はあまり互いに口を利かないことを思い出し、開きそうになった口を閉じる。

「・・・・」
「・・・・」

再び沈黙が寝室に訪れた。
そういえば、なぜコイツはここにいるのだろう。
もしかして自分が気を失った後もいつもここにいて一緒に横になっていたのだろうか。
(・・・変な奴)
シエルは赤い瞳から視線を逸らし、また身体を回してセバスチャンとは逆の方に向き直る。
背中にあの瞳があるのかと思ったら落ち着かないが、ずっと見詰め合っているよりマシだ。
ずっと見詰め合っているなんて気持ち悪いじゃないか。
もうこのまま眠ってしまおう、そう思いシエルは瞳を閉じてシーツを自分で掛けなおす。
ふと瞼の裏に先ほどの悪夢の映像がモノクロ写真のように浮かんできて、咄嗟に頭を振ってそれをどこかへと追いやる。
後ろには悪魔、そして瞼の裏には過去の産物。
(厄日だ)
本気でげっそりとしたくなったのだが。

「コツン」

再び・・・今度は背中に何かが当たるような感じがして、何かと思い瞳を開けて少しだけ振り返る。
するとそこには広い背中が。それは言わずもがなセバスチャンの背中だろう。
自分が此方を向いたので、セバスチャンもあちらを向いたのだろうか。
若干首を傾げながら、振り向いていた首を元に戻すと。
(あ・・・)
背中から相手の熱が伝わってくるのが分かった。
コツンとぶつかった背中は離すようなことはせず、そのままシエルの背中にくっつけたまま。
いつもは激しい熱ばかりので、こんな穏やかに感じる熱は初めてだ。
(・・・これは、傍にいると言いたいのか?)
もしかしたら相手は自分が悪夢を見たことを知っているのかもしれない。
しかし目を覚ましたシエルに何と声を掛けていいか分からずに此方を見たまま実は戸惑っていたとしたら?

「・・・・っぷ」

そんな考えに思わず噴出してしまうと、相手の背中はピクリと反応するが離れていくことはない。
これじゃぁ益々自分の考えがあながち間違えでは無いのじゃないかと思ってしまう。
(馬鹿だ・・・)
自分も。そしてコイツも。

悪夢には背中にいる悪魔も出てきたというのに、今度はその悪魔がいて安心しているとはどういうことだ。
それでも何だか悪い気はしなくて。
(おやすみ、セバスチャン)
シエルはもう一度瞳を閉じれば、瞼に悪夢の映像が映ることはなく、そのまま深い眠りへと誘われていった。




end
 

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【2011/05/25 00:10 】 | Project | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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