―――今の関係を意識して
悪魔と契約者の関係ではなくて、
執事と主人の関係ではなくて、
今は“恋人同士”なのだ。
でもそれは自分にも言えたことで。
「でも、恋人を助けるのは当たり前のことでしょう」
恋人に怪我をさせてしまった。
いや、恋人だからなどは関係なく“大切な相手”に怪我をさせてしまった。
(痛い…ですね)
たとえ“今”は仮初でも恋人同士になったからだろうか。
前までは坊ちゃんが怪我をしてもここまで辛いと思わなかった気がする。
恋人同士になったせいで、相手を想う気持ちがより強くなったとでも言うのか。
もしそうならば、これは全部坊ちゃんが悪い。
だって、こんなにも。
「なら僕も嫌だ」
「坊ちゃん?」
「恋人には笑顔でいて欲しいと願うだろう?」
だから。
「お前のそんな顔、見たくない」
可愛い言葉を吐くのだから。
彼がこんなにも可愛らしいなんて知らなかった。
だから無意識に頭を撫でてしまうのも、額に口付けてしまうのも仕方が無いというもので。
“愛しい”という言葉は、
多分こういうもの。
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