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【2017/01/19 19:45 】 |
Spicyな気持ち
Spicyシリーズ




目の前にいるのは悪魔で。その赤い瞳に映っているのは人間で。
けれどその心はどう考えても逆さまだ。
“人間を愛する悪魔”と“誰も愛さない人間”
それは酷く滑稽な話しだろう。

(だが・・・)

人間をどんなに愛したところでセバスチャンは悪魔であるし、
誰ひとり愛さないとしても僕は人間だ。
本当は分かっている。

本当は、分かっているんだ。


― Spicyな気持ち -


柔らかい口付けが、全てを麻痺させてくるのはなぜだろう。
頭の隅で気持ち悪いと叫んでいる筈なのに、また自分の手は縋るようにセバスチャンの燕尾服を掴んでいるのだ。

「ん・・・ふぅ・・・」

クチュリと水音が経つたびに聴覚からも犯され、無意味に肩がピクリと跳ねてしまう。
そんな自分に舌打ちがしたくなるが、その舌は今セバスチャンに絡められた状態で出来るわけもない。

「ん・・・ンン・・・はッ」

手袋をした手が器用にシエルの服のボタンを外していく。
それに気がついたシエルはそれを制するようにその手を押さえるが、やはり止めることは出来ない。

「ん、んんんん~~~~ッ!!」
「・・・もう少し可愛らしい抵抗にしてくださいませんか」

声を上げ、内を蠢く舌を軽く噛んでやれば、ようやく唇が離れ開放される。
眉を顰めたような顔にシエルは息を吸い込みつつ、可愛いもクソもあるか!と叫んだ。

「こんなこと許されると思っているのかッ」
「えぇ」
「ッ・・・!貴様ッ!」
「いま私は執事として貴方に接しているわけではありませんので」
「や、めろっ」

ボタンが外され緩んだ首元にセバスチャンは顔を寄せて。
その瞬間チリリとした痛みが走った。
(コイツ・・・ッ!)
この感覚は嫌でも覚えているもので・・・以前うなじに感じたもの。
きっと首筋にはくっきりと赤い痕が残っているだろう。

「セバスチャン!!」
「そんなにお嫌ですか?」

セバスチャンはゆっくりと顔を上げ、シエルをまっすぐに見つめてくる。
その瞳は燃えるように赤く、まるでこのまま首筋に噛みつかれて殺されてしまいそうな。
それくらい今のセバスチャンは。

「私のことは、そんなにもお嫌いですか」

怒っていた。

「お、い?」
「あのタンスの中での出来事の後も随分と怒っておられた。私とは目も合わせず、口数だって少ない。普段だって多い方じゃないというのに」
「あれは貴様が悪いんだろう!」
「悪い?悪いわけではないでしょう。あれは貴方のミスでもあると思いますが?」
「ッ!!」

シレっと言う相手にシエルは我慢出来ず、胸倉を掴み上げた。
それにもセバスチャンは表情を変えることなく赤い瞳を向けてくる。

「元々貴様があんなことをしなければ!」
「貴方があそこで質問の“言葉”をミスしなければ?」
「~~~~~~ッ」

正直その通りだ。
セバスチャンがどういうものかを知っていながらも、聞く言葉を選び間違えた。
それでも・・・と思ってしまうのは子供だろうか。けれどどう考えても、あれは自分のミスだ。

「・・・・」

シエルは自分を落ち着かせるために長く息を吐き、胸倉から手を少しずつ離していく。
本当ならばこのまま絞め殺したい気分だ。

「おや、随分とあっさり引き下がりましたね」
「黙れ」
「私を相手にするのも嫌だと?」
「・・・・」

瞳を細めたセバスチャンにシエルは頷くことも否定することもしないで放っておく。
あっさりと引き下がった理由は別のところにあるが、相手にするのが嫌だというのも間違えでは無いのだから。

(・・・にしても何だ?)
何か違和感がある。
セバスチャンが自分に迫ってくるのはいつものことだとして。
怒っているのもいつものことだとして。
セバスチャンが纏っている雰囲気がいつもと違うのだ。

客室の前で立っていた姿。
アンダーテイカーに言葉を返したときの声音。
キャッチしたカップを机に置いたときの音。
そして。
どこか自虐的な言葉。

(何だ・・・いったい・・・)
シエルは先ほどセバスチャンへ視線を向けることを躊躇っていたということも忘れ、どこかいつもと違うセバスチャンの瞳を見つめれば、相手は自嘲的な笑みを浮かべた。

「そうですよね。坊ちゃんは私のことが大嫌いですから。葬儀屋さんとお話をしていた方がよっぽど楽しいでしょう」

セバスチャンは腕をシエルの背中まで回し、ギュッと抱きついてくる。
そのままのしかかられる状態で多少息苦しいが、シエルは抵抗することもなくセバスチャンの言葉を黙ったまま聞く。

「別にそれでも構いませんよ。先ほど言ったように貴方が私のことをどう思おうが貴方は私のもの。誰かに渡すつもりもなければ、逃がすつもりもありません」
でも。
「どうして、そんなにも私の愛を拒むのかが理解できませんね。こんなにも私は貴方のことを愛してやまないというのに。ここまで愛されていたら普通落ちるでしょう。どれだけ貴方は他の人間と違うのですか」

ギュッと抱きついてきながら話す口調は嫌味のまま変わることはない。
けれど、やはりどこか違和感があって。
どこかに小さな寂しさが含まれていて・・・―――

「貴様は馬鹿だろう」

そんな弱った悪魔の姿になぜか苦笑しながら、シエルは言った。
もしかしたらこの“しおらしさ”もいつかのように演技なのかもしれない。
それでも別にいい。今これから言う言葉は慰めるつもりで言うわけでもないし、ただ僕自身が思うことだ。

「やはりどんなに愛を叫んでいても貴様は悪魔だな。愛がどんなものなのか理解していない」
「・・・愛を忘れた貴方が言いますか」
「あぁ。貴様の愛を受けている僕だからからこそ言えるんじゃないか?」

シエルはトントンと軽くセバスチャンの背中を叩いた。

「貴様の愛はいつだって強引だ」
「強引ではないですよ」
「僕が嫌がっているのに愛を押し付けてくるのは強引とは言わないのか?」

呆れながら言えば、セバスチャンは暫く考え込むように黙り・・・そうかもしれませんね、と小さく返す。

「ですがそうでもしないと、貴方はいつまで経っても私の愛を受け取らないでしょう」
「強引に愛を押し付けられたって誰が受け取るというんだ」
「私の愛でしたら、誰もが欲しがったというのに・・・」
「だからそっちの方が頭がおかしいと前に言っただろう」

そう言いつつもシエルは、そうだろうな、と反対のことを思い、頭の隅で頷いた。
整った顔に長い睫毛。そして(その気になれば出せる)低くも甘い声。
それらは女性にとって魅力的であろうだろう。
人間を魅了する悪魔らしいというか、魅了するにはピッタリな姿形だと思う。

だが、人間全てにそれが通用するかと言ったら別の話しで。
現に今シエルにとってセバスチャンのそれらに惹かれることなんてない。
むしろ嫌みったらしく見えるし、苛立つ部分の1つでもあるのだから。

(あぁ・・・そうか)

今まで己が求めなくても、相手から求められてきた存在。
そんな存在が愛を知り、とある人間からの愛を欲しがった。
だがその人間は愛を返すことはしない。
今まで求めずとも求められてきたというのに。
求めても手に入らないだなんて、信じられないだろう。
求められてきたその存在は。
目の前にいる悪魔は。

だから。

(もしかしてこれは焦っているのか・・・?)

この悪魔が?
いつも余裕の笑みを浮かべていた悪魔が?

あの、セバスチャン・ミカエリスが?

「・・・・・」

どこか、ザマーミロと満たされる意地悪な気持ちと。
どこか、恥ずかしいようなくすぐったい気持ち。

じゃぁもしかして、いつもより怒っていたのは。
アンダーテイカーに嫉妬していたからなのか?

「~~~~~ッ」

今度は頬が熱くなるような感覚に、シエルは唇を噛んだ。

この悪魔が関わると自分の感情の起伏が激しいような気がする。
やはりアンダーテイカーが言った言葉は間違った答えではなかったようだ。
それを認めるのは酷く苛立つけれど。

けれど、まだどうしてそうなってしまうのかは分からない。
やはりセバスチャン以外をどうでもいいとは思っていないし、他の連中に怒りを覚えることだってある。
それを露わにするのはセバスチャンだけだということで。

もしかしたらここまで僕の世界に入り込んでくる奴はコイツだけなのかもしれない。
僕の世界にいきなり入り込んだかと思えばズカズカと土足で近寄り、愛を囁いたコイツ。

正直ありえない。
稀に見る怖いもの知らずの大馬鹿者だろう。
このシエル・ファントムハイヴの世界に土足で入り込んでくるなんて、そして愛を囁くなんて前代未聞だ。
そしてそれが悪魔だということも前代未聞だろう。
だが、その前代未聞こそが僕の世界に入ってきたにも関わらず排除しなかった理由なのかもしれない。

僕の世界にここまで深く入り込んできた相手。
それに興味を持たないわけがなかったのかもしれない。

悪魔のことは。
コイツのことは。
・・・セバスチャンのことは今でも嫌いだ。大嫌いだ。
けれど。


「なぁ、セバスチャン」

シエルは頬を赤くしたまま、自分に抱きつくセバスチャンに問う。
その瞳はどこか遠くを見つめているが、その声は凛としていて強い。

「貴様は・・・味方か?」










「さぁ・・・どうでしょうか」

ゆっくりと身体を持ち上げ、顔を上げる。
突拍子も無い質問にも関わらず、それに疑問を返すこともせずにセバスチャンは真っ直ぐな・・・まるでシエルの凛とした声のこだまのように、答えを返す。

「人間にとって悪魔は味方でもあり、敵でもあるでしょう」

セバスチャンはそっと頬に触れ、優しく撫でる。
その瞳はまだ真っ赤に染まっているけれど、そこには先ほどのような怒りでも寂しさなどなく。
ただただ真摯な瞳。

「契約上、私が貴方を傷つけることなどありません。信じられないかもしれませんが、契約など無くとも貴方を傷つけたいわけではありません」
「・・・契約が無ければ傷つける恐れがあると言いたいようだな」
「先ほど仰っていたでしょう。私の愛は強引だと・・・私はそうは思っていなかった。ということは私が傷つけるつもりのない行動でも貴方を傷つけてしまう恐れがあるということです」
「契約があってもそれは同じじゃないのか?」

触れる手の冷たさを火照った頬には心地よく感じながら、そう返せばセバスチャンは苦笑しながら首を振った。

「私があくまで執事としての行動でしたら貴方は傷つきません。それに第一、そうなる恐れがある行動を執事である私はしませんから」
「・・・・」
「ですから味方とも敵とも取れない。まぁ貴方にとって、愛を囁く私は敵だとみなすでしょうけれど」
「自分から味方だとは言わないのか?」

遠くを見つめていた瞳をセバスチャンへ向け、その赤い真摯な瞳を見つめ返す。
そこには揺れている蒼い瞳が映りこみ、その瞳の中に捕らわれているような感覚になる。
魂だけではなく、自分自身までもが。

一瞬だけセバスチャンは驚いたような表情をしたが、すぐにいつものように口元を吊り上げて。

「言いませんよ」

笑った。

「貴方に嘘はつけませんから。むしろきっと私は貴方の敵でしょう」
「・・・僕を欲するなら嘘でもそんなことを言わない方がいいんじゃないか?」
「いいえ坊ちゃん。欲するから言うんですよ」

―――愛を忘れた貴方が言いますか
―――あぁ。貴様の愛を受けている僕だからからこそ言えるんじゃないか?

(まるでさっきと逆だな)
同じようなやり取りをしていることに内心シエルは笑った。

「欲しいからこそ嘘はつかない。味方だと宣言し油断したところを絡めとっても面白くありませんから。それにゲームの天才と謳われている貴方が騙されるわけがないでしょう」

セバスチャンは言う。

「誰を愛そうが私は悪魔であって、愛を忘れようが貴方は人間なんです。元々相容れない者同士なのに、そこに信頼すらも無くなったら一生手に入れることなど出来ませんから」
「・・・信頼などないだろう」
「でも、駒としての私は信用しているでしょう?」

その問いにシエルはフンと横に顔を背け、瞳を細めた。
それでもセバスチャンの手が頬から離れることはない。


結局。
セバスチャンが味方なのか敵なのか分からない。
けれど敵だと決め付けるには“正直過ぎる”し、味方だと決め付けるには“優しさが足りな過ぎる”
でも、彼の愛は本物だと信じていいのならば。

セバスチャンに興味を持っていたことを認めてもいいし、それに・・・。

セバスチャンのことは今でも大嫌いだけれど、自分から味方だと言わず、そして執事の皮を被った姿ではなく、あくまで悪魔として愛を囁くのならば。


少しくらい受け止めてやってもいい。


それに応えるつもりは一切ないけれど・・・。



(なんか・・・スッキリしたな)
アンダーテイカーに言われた言葉を自分なりに解釈したせいなのかもしれない。
シエルはセバスチャンが目の前にいるというのに、久しぶりにどこか清々しい気分となり、無意識に笑みを零す。
それにドキリとしたセバスチャンは恐る恐るという形で「坊ちゃん?」と声を掛ければ、口元を緩めたままこちらへと顔と視線を戻し。

「セバスチャン」
「は、い」
「貴様の気持ちはよく分かった」
だからとりあえず。

「どけろ」


ビシリと、
真摯だった瞳に再び亀裂が入ったのは言うまでも無い。




END

 

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【2011/06/26 13:26 】 | Series | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
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