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【2018/09/25 16:58 】 |
Sweetは悶々と
Sweetシリーズ



いつからかなんて分からない。
気が付いたらそれは発病していて、僕のことを蝕んでいった。
しかしそれをどうにかしようなんて思ったことはない。
ましてや、アイツに言うつもりもなかった。
なのに。
『私も同じ病を抱えているからと言ったら?』

そう言われた僕は、どうしたらいいんだ。


― Sweetは悶々と -


「坊ちゃん」
「なんだ」
「不機嫌な理由を教えて頂きたいのですが」

セバスチャンの言葉に、シエルはピタリと指を止める。
しばらくぶりに訪れる静寂。
書類を睨みながら、シエルはずっと机を指で叩いていたのだ。
まるで時計の秒針のように。

「なぜ僕が不機嫌だと?」
「坊ちゃんがそのように机を指で叩くのは不機嫌な時でしょう」

セバスチャンはため息をつく。
シエルにそんな意識は全くない。どうやらイラついている時に無意識にやってしまっているのだろう。

「別に。お前には関係ない」
「ですが」
「うるさい。関係ないと言っている」

シエルは低く呻くように言う。

「まるで、駄々をこねているガキみたいですね」
「なんだとっ」
「イライラする気持ちを抑えることが出来ない。それはただのガキでしょう?坊ちゃん」
紳士とは言えませんね。

セバスチャンは冷たく言い放つ。
その飄々とした態度が、より気分を悪くさせる。
一体誰のせいでこんなにもイライラしていると思っているんだ。
けれどセバスチャンの言うことには、悔しいが反論できない。
まがりなりにも正しいのだから。
しかしそれを認めてしまうのも癪だ。
シエルはため息を付きながら椅子に寄りかかる。

「たしか…」

シエルはセバスチャンに話しかける。

「主人の心を守るのも、お前の仕事だと言っていたな」
「あくまで執事としては…ですが」
「ならば、僕が不機嫌になるのはお前の失態ということか?」

ニヤリと笑うシエル。
その言葉にセバスチャンは、やれやれというように首を振る。

「負けず嫌い、というには可愛げがありませんよ。坊ちゃん」
「ゲームは結果が全てだ。可愛いもなにもない」

ゲーム…ですか。
セバスチャンは何か考え込むように呟く。
そしてニヤリと笑う。

「では、坊ちゃん」
「ん?」

コイツはまた何を言う気だ、と身構えるが、続いた言葉は

「ゲームをしましょう」

と、呆気にとられる言葉だった。

「はぁ?」
「私と勝負です。坊ちゃん」

セバスチャンは口に弧を描いたまま、机を避けてシエルの椅子のところまで来る。
そして前を向いていた椅子を90度回し、セバスチャンの方へと向かせる。
必然的にシエルはセバスチャンを見上げる形となり、逆にセバスチャンはシエルを見下ろす形となる。

「坊ちゃんが勝てば、きっと不機嫌も治りますよ」
「どうしていきなりお前とゲームをしなくちゃならないんだ」
「主人の心を守るのも執事の役目なのでしょう?その役目を果たそうとしているだけです」
「ふん。ゲームに勝っても、この不機嫌は治ると思わんがな」

なんせ不機嫌な理由は、この執事のせいなのだから。
…まぁ、ゲームでコイツをこてんぱんに負かせてやれば、気分もスッキリするかもしれないが。

僕が不機嫌な理由。
それは、この想いをどうしたらいいのか分からないから。
恋心を持て余す自分自身に苦戦しているのだ。
本当ならばその恋心は闇の中へと捨てられ、在ったという真実さへも消し去るはずだった。
しかし、それをこの悪魔が止めた。恋心を抱いている相手に。
しかもその相手は、自分に恋心を抱いているのだと言う。
『ふざけるな』と怒れればよかった。
『嘘を言うな』と弾き返せればよかった。
けれど、それが出来なかった。
たとえ嘘でも、嬉しいと…そう感じてしまったから。

自分が恋心を抱いている相手が、自分に向けて恋心を抱いているのならば、
世間一般的には『両思い』というのかもしれない。
それがなぜか、僕には認められない。
素直に、受け止められない。
醜く歪んでしまった僕には、そんな美しいモノを手に取る資格などない。
正直、前にセバスチャンに言われたように…怖いんだ。
この想いが、怖いんだ。
けれど、甘さが僕の体を蝕むから…。

捨てたいのに、もう捨てることが出来ない想い。
掬い上げられてしまった想い。
それを持て余す自分。
イライラしてしまっても、仕方がないというものだろう。

この悪魔は、その気持ちを分かってゲームを持ちかけているのだろうか。
シエルはセバスチャンを睨みつける。

「ゲーム、なさいますね?」

どうやら睨みつけた顔を承諾と取ったらしく、セバスチャンはシエルの前でひざまずく。
目線の位置が同じになり、顔が近くなったような気がする。
シエルはまるで見詰め合うような形なのが落ち着かなくなり、視線を少し逸らす。

「で、一体何のゲームをするんだ」
「簡単なゲームです」

セバスチャンはシエルの頭の後ろに手を回し、眼帯を解く。

「私の目を見つめながら、名前を呼んでください」
「なに?」

はらりと落ちていく眼帯。
隠されていた、もう1つの目があらわになる。
体の一部を隠していたものが、暴かれたような気分になる。

「それが出来れば坊ちゃんの勝ちです」
「それは、ゲームと言うのか?」
「主人の機嫌を治すためのゲームです。主人を勝たせないでどうします」
「僕を馬鹿にしているのか」
「決してそんなことはありませんよ」

クスリと笑うセバスチャン。

「僕がお前の名前を呼べば機嫌が治るのか?」
「正確に言うと、勝った後に貰えるご褒美で機嫌が治る…ですかね」
「ご褒美?ケーキでも焼くのか?」
「さぁ?それは勝ってからのお楽しみです」

「ほら、私の名前を呼んで?」

セバスチャンはシエルの頬に手で触れる。
その感触に少し逸らしていた視線を元に戻すと、真正面にいるセバスチャンの瞳が自分の瞳に映り込む。

「っ!」

シエルはすぐに視線をそらす。
自分の心臓が煩い。

「坊ちゃん、私の目を見ないと勝てませんよ?」

面白そうに言う声。
いつもなら怒鳴ってやるのに、それが出来ない。
くそ。どうして、こんな。
いつもしているようにすればいい。
眼帯も取れている状態だ。命令をする時と同じようにすればいい。
シエルは目を閉じて、一回深呼吸をする。
そして。

「命令だ」
「…は?」

シエルはカッと目を開け、セバスチャンと目を合わせる。

「セバスチャン!!」

まるでその後に『僕を助けろ!』という言葉が続きそうなほど、迫力がある呼び方。
セバスチャンは珍しくぽかんとした表情でこちらを見ている。

「どうだ、僕の勝ちだ」

シエルは頬に触れている…固まった手を振り払う。

「貴方は…雰囲気というものをよめないんですか?」
「なぜゲームをするのに雰囲気をよまなければいけない?」
「はぁ。流石ゲームに貪欲な坊ちゃんと言いますか…」

セバスチャンはため息をつく。
最近、コイツため息が多くないか?

「ほら、勝ったぞ。一体何をくれるんだ?」
機嫌を治してくれるんだろ?

シエルはセバスチャンにご褒美を促す。

「では、目を閉じてください」
「目を?」
「はい」

シエルは疑問を抱きながらも、言われた通り目を閉じる。
すると、セバスチャンの近づく気配がし、頭の後ろを片手で押さえられる。
そして、そっと唇に暖かいものが合わさった。

「んん…?!」

自分の唇が違う暖かいものに挟まれるような感覚に目を開ける。
目の前には赤い悪魔の瞳。
キスをされているのだと分かったシエルは、ドンドンと正面にある体を叩く。
けれどセバスチャンは唇を離そうとはしない。
逆に強く食まれ、シエルの唇を舌が辿っていく。
そのぞくぞくした感覚に肩が跳ね上がるのを抑えられない。

「ん…んん~!!」

なんだかこのままどこかに流されてしまいそうな不安に駆られ、
力の限り叫ぶと、やっとセバスチャンは頭を押さえていた手を離し、唇を開放した。
シエルは開放された瞬間、めいいっぱい空気を吸い、肺に酸素を送る。

「え、もしかして息してなかったんですか?」

セバスチャンは驚いた顔をする。

「当たり前だ!口を塞いでいたのは貴様だろう!」

シエルは息を整えながら怒鳴り返す。
キスの仕方からお教えしなければいけませんね、と呟いた声をシエルは聞いてはいなかった。

「というか、これのどこがご褒美なんだ!罰ゲームだろ!」
「罰ゲームとは、酷い言われようですね」
「こんなんで、僕の機嫌が」
「坊ちゃん」

シエルの言葉を遮る。

「私は貴方が好きですよ」

先ほどのように、また頬に触れるセバスチャン。
その手が冷たく感じるのは、きっと自分の顔が熱くなっているせいだろう。

「急に何を…」
「前に申し上げましたよね?」
貴方と同じだと…。

耳に囁きかける。

「決して嘘でも冗談でもありません」
「…!!」
「少しくらい素直になってはどうです?」

優しく微笑みながら触っている頬の反対側に、ちゅっと音を立ててキスをする。

「僕は…」

シエルは頬に触れている手の上に自分の手を重ねる。

「いいですよ。無理して言わなくて」
貴方の気持ちはちゃんと分かっています。

そう言い放つセバスチャン。
自分と違い、余裕が見えて少し腹立たしい。
けれど、それは怒りというより甘みという腹立たしさで。
あぁ、僕も現金な奴だな。
恋心を持て余しているのは変わりないが、あの不機嫌さは消えてしまっている。
セバスチャンの気持ちが嘘ではないと言われたからだろう。

「僕の気持ち…か」
「はい」
「いつから、この気持ちに気が付いた?」

1つの疑問を投げかける。

「具体的に言うのは難しいですが、ここ最近ですよ」
「顔に出ていたのか?」
「いいえ。全く」
切ないくらい、何もなかったですよ。

セバスチャンはいじけるように言う。

「じゃぁなぜ?」
「ずっと近くで見てきたからです」
「そんなものか?」
「本当は貴方も私の気持ちに気が付いていたのですよ」
「は?」
シエルは目を見開く。
自分の気持ちには気が付いたが、セバスチャンの気持ちなんて全く知らなかったのだが。
「私が坊ちゃんのことを好きだという感情を読み取ることはありませんでしたが、違和感は感じ取っていました」
あれは正直焦りましたよ。

セバスチャンは苦笑する。

「…機嫌は治ったようですね?」
「…ふん」

セバスチャンの思惑通り機嫌が治ってしまったのが癪で、そっぽを向く。

「まぁ、機嫌が悪いというより照れてるだけでしょうけど」
「!!」
「1つも顔に出してくれないよりいいです」
意識されてない、というのと等しいですからねぇ。

「べ、別に僕はっ!」
「安心してください、坊ちゃん」

セバスチャンはシエルから手を離し、立ち上がる。
そして胸に手を置き、一礼。

「私がゆっくりじっくりと恋愛について…愛について教えてあげますよ」
優しくね。

まるで舌なめずりでもするような顔。
その凶暴さを本能的に感じ取ったシエルは

「…遠慮しておく」

と、一言返したのだった。




END

 

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【2011/03/24 17:35 】 | Series | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
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