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【2017/09/25 02:35 】 |
ただ、もう一度は
五萬打御礼企画
【別れる:さよならは言わないから。】
の続きです。



酷く苛立った/酷く嬉しかった
どうして自分の中に彼の魂がないのか/自分の中に彼の魂がないことが


別の悪魔に坊ちゃんの魂が捕られたと分かったとき
自分の愚かさにどれほど哂ったことか。

2つの感情がぐちゃぐちゃと混ざり合わさって
それでも出てくるのは笑みで。
悔しがっているのか、喜んでいるのか分からなくて。
でも。
彼の魂を取り戻し、がらんどうと化した坊ちゃんにそれを戻した時。
やはり溢れたのは涙で。

「セバス、チャン?」
「・・・坊ちゃん」

きっとそれは、悔しいものでもなく喜んでいるものでもなく。

悲しみ、だ。


― ただ、もう一度は ―


最期のあの日。
涙を零したほんのわずかな間に、シエル・ファントムハイヴの魂はクロード・フォースタスに奪われてしまう。
怒りに身を染めたセバスチャン・ミカエリスは、その悪魔がいるトランシー家へと向い、魂の奪還に成功するが、シエルは復讐を遂げた記憶を失っていた。

魂を取り戻したシエルはあの頃のように復讐を誓い、セバスチャンを駒として前へ進もうと足を踏み出す。
が、もう復讐相手となる天使はいない。
代わりにセバスチャンはクロードと悪魔の契りを交わし、アロイス・トランシーをシエルの復讐者として新たに復讐を遂げさせようとしていた・・・。




「なぜもう一度復讐をさせようとする?」

契りの証である薔薇を胸に挿しながらクロードはセバスチャンに質問を投げかける。
すでに血を垂らした傷は塞がり、他から見たら傷をしたことすら分からないだろう。
セバスチャンはその傷だった場所を軽く撫でながら無表情で言葉を返した。

「その方が甘美な魂となるからですよ」
「貴殿がそれだけの為にこんな面倒なことをするとは思えんが」
「面倒なこと?悪魔が美味しい魂を貪る為の行いを面倒だと言いますか」
「だがすでにあのシエル・ファントムハイヴの魂は十分に甘美なものだろう」
「・・・私は強欲なもので」

フッと口角を吊り上がらせて吐く台詞にしては、随分と沈んだ声音。
クロードは瞳を細めて、本心を隠す悪魔に言葉を突きつける。

「復讐を遂げさせていいのか?」
「・・・どういうことですか」
「復讐を遂げさせたら、今度は本当に魂を喰わねばならないぞ?」
魂を喰らう前、随分と渋っていただろう?

魂を盗む前に見ていたことを口にするとセバスチャンはピクリと反応し、作っていた笑みを消し去っていく。
背後には大きな怒りを感じるも、クロードは喋ることをやめない。
この悪魔の乱れる姿を見るのは、蜘蛛に絡め捕られた蝶を見るかのように滑稽だ。

「あんな甘美なる魂を喰らうのに渋る理由。口付けを交わしていたところを見る限り、答えは簡単に導かれるが、悪魔が人間を愛するなんて反吐が出るソレを理解することは出来んな」
「・・・貴方なんかに理解して頂きたいとは思いません」
「あぁ、理解しようとは思わない。だが疑問は残る。なぜシエル・ファントムハイヴに再び復讐を遂げさせようとする?遂げさせずにこのまま傍に置いておくというのもテだろう?」
私があの魂を奪ったのを、貴殿の望みを叶えるチャンスに変えたらいい。

我が主、アロイス・トランシーとの契約のことを抜きにして言葉を放つ。
もしここでこの悪魔が首を縦に振ろうが、自分には関係ない。
ただ己はシエル・ファントムハイヴを奪いに行くだけ。あの甘美なる魂を喰らいたいが為に。
アロイス・トランシーとの契約がどうでもよくなったことは、この悪魔と契りを交わした時点で相手も分かっているだろう。

悪魔とは己の欲望に一番忠実だ。
だから己がアロイス・トランシーを裏切ることは“当たり前”だと思うし、シエル・ファントムハイヴと共にいたいというのがセバスチャン・ミカエリスの本当の願いならば、自分の提案を現実とさせる。
(それが悪魔というもの)
クロードは口元を緩めながら眼鏡を上げると。

「・・・・ッ!!」

人間の目には映らないであろう速さでセバスチャンの腕がクロードの首元へ伸ばさせる。
放たれた殺気に反応したことによって、すんでのところでそれを避けるが、自分の髪がパラリと落ちていった。

「貴方は本当に何にも理解していませんね」

空を掴んだ状態でセバスチャンは口を開く。

「復讐を遂げさせずに傍に置いておく?馬鹿ですか貴方は」
「・・・なに?」

避けた際に崩れた体勢をすぐさま戻し、警戒しながらセバスチャンに視線を向ける。
悪魔なら当たり前である筈の考えを覆す言葉。
どういうことなのか、やはり全く理解できない。

「貴方は私が坊ちゃんを愛していると知っているのでしょう?ならば、そんなことは口が裂けても言えない筈ですよ」
「・・・貴殿があの人間を愛しているからこその考えだと思うが」
「その逆です」

セバスチャンはようやく腕を下ろし、息を吐く。
いつものような正しい姿勢に戻りこちらに向けられた顔には、怒りで燃えた真っ赤な瞳と。
酷い悲しみが溢れていた。

「どうして愛する人をそんな苦しい世界に閉じ込めておくことが出来ますか」
「・・・苦しい世界?」
「復讐心で溢れる毎日を苦しくないとでも?」

相手は口元を吊り上げる。

「だから私は契約通り坊ちゃんの魂を喰らうことを決めていた。どんなに愛し合っていても、それが坊ちゃんの一番の救いだからです」
「・・・・」
「坊ちゃんだって私を愛してくれていましたよ。最期を迎えた私を傷つけないよう守ろうとまでしてくれた。それに応えられるのは私の愛じゃないんです。愛だけじゃ彼を救えない。本当の意味で平穏を与えられることなんて出来ない。だって本当の望みは、復讐を遂げて私に喰らわれることだったんですからッ」

どこにも放ることが出来ない気持ちをぶつけるように、セバスチャンは白い机をバンッと叩く。
その瞳には零れそうなほどの涙が溜まっていて、クロードはそれを静かに見つめていた。
赤く穢れた瞳に涙が溜まるなんて、この何千年何万年の中で滅多に見られるものではないから。

「私は、坊ちゃんを再びこの汚い世界へと戻らせてしまった。それを望みを叶えるチャンスにしろだなんて・・・、本当に反吐がでますよ。貴方には」
「・・・互いに反吐が出る存在というわけか」

カチャリと再び眼鏡を上げる。
相手の言い分はは分かった。もう悪魔としての性質も失われたことも分かった。
そして。
自分たち悪魔が普通なら得ないものを得たということも、理解した。
しかし己の欲望が消えることはない。
己は悪魔なのだから。
相手がどんなに喚こうが騒ごうが、涙を流そうが、シエル・ファントムハイヴの魂を奪いに行くだけ。
今までだってそのように生きてきた。そしてこれからだって。

「せいぜい綺麗なソレを守ろうと足掻くことだな。人間らしくなってしまった貴殿なんて虫けら以下だ」
「それで結構ですよ。虫けら以下に負ける貴方を見るのは酷く気分がいいでしょうから」
「ふん、つまらん悪魔になったものだ」
「・・・褒め言葉として受け取っておきましょう」

怒りを内側に戻したセバスチャンはニコリと微笑んだのを見て、クロードはフンと鼻で笑い、その部屋を後にする。
そろそろ戻らないとあのアロイス・トランシーが文句を言うだろう。
あのシエル・ファントムハイヴはセバスチャン・ミカエリスに何て言うのか見ものだが・・・。
(それは奪った後のお楽しみとしよう)
コツリと足音を響かせながらそう微笑んだ。










「アロイス・トランシーが復讐相手・・・か」

シエルの元へと戻ったセバスチャンは、でっち上げた書類を渡し、嘘の情報を教える。
記憶を失っているシエルはそれをそのまま受け取り、セバスチャンの、否、悪魔たちの戦略にまんまと嵌った。

「・・・なんだ、セバスチャン」
「いえ、何だか嬉しそうなので」
「それはそうだろう。長年探し続けていた復讐相手にようやく出会えたんだ。これで、これで全て・・・」

全てを言わずに暗く微笑むシエル。
けれどセバスチャンには何を言いたいのか全て理解していた。
(はい、これで終われますよ、坊ちゃん)
頭を撫でてしまいそうな気持ちをグッと押さえ込み、シエルの前で微笑んでみせる。

復讐を遂げた記憶を失っているシエルは、お互いがどんな関係であったかも憶えていない。
だからあの頃のような会話、そして行動は全てタブーだ。
けれどそれはそれでいいのかもしれないとセバスチャンは思う。
“セバスチャンを守れなかった”なんて。そんなことを思う必要がないのだから。
でも一番良かったのは。
こんなことにならず、あのまま魂を喰らってしまうことだったのに。

(すみません、坊ちゃん)

心の中で小さく謝る。
再び苦しい世界へと引き戻してしまって。
もう一度、私を仕えさせてしまう現状にさせてしまって。

でも。

あぁ・・・。
目の前にいるのに手が届かないもどかしさ。
傍にいるのにその体温を感じられない切なさ。

―――このまま傍に置いておくというのもテだろう?

もしここで記憶を取り戻してこのまま一緒にいましょうと言ったら、彼は首を縦に振るだろうか。
復讐の日々はもう終わり、私と一緒に幸せを見つけましょうと言ったら、彼は喜ぶだろうか。
そしたら今度こそ。

彼の口から「愛している」と言ってくれるだろうか。




(それは、ないですね)




きっと彼は契約の方を優先するだろう。
彼がどんなに自分といたいと願ってくれても。
一番の望みは復讐を遂げて私に喰らわれることだったのだから。
だから彼は、あの時も自分に魂を差し出したのだ。


「セバスチャン、行くぞ」
「はい」

掛けられた声にセバスチャンは頷いて、仮初の“一緒に”を携えながら歩き出す。




もう二度と呼ばれることは無いと思っていた名前に笑みを零しながら。
これ以上“もう一度”が無いよう、心から祈った。




END


****
あとがき
お待たせしました『さよならは、言わないから』の続きです!
まだセバスが可哀相な感じです(笑)
元気出してセバス!最後はきっと幸せになるから!!ww
しかしクロードの悪魔らしさというか、悪魔らしい爽やかさには
書いた私本人が一番ビックリしましたorz

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【2011/06/05 13:33 】 | Text | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
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