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【2017/07/25 05:50 】 |
君は君だから(シエルver)
↓のシエルの続き

*この話しはセバシエ、クロアロ前提であり、シエルの復讐相手は天使でもなく、
  ましてアロイスでもなく別にいるというふうになっています。

『君は君だから』のその後、シエルの続きです。


貴方の魂は他の人間よりも気高く、美しい。
それは穢れを知る魂だからなのか。

しかし本当はすぐに枯れてしまう花のように儚いものだと、
私は知っています。


― 君は君だから(シエルver) ―


アロイスが出て行ったしばらく扉を見つめていたシエルだったが、

「…ふん」

口元を歪めながら、再び仕事をするべく机へと向かった。
アロイスと話すのは色々な意味で疲れる。
大きく息を吐きながら椅子に座ると再び扉にノック音が。
なんだ?アロイスの奴何か忘れ物でもしたのか?

「入れ」


短く返すと、今度は自分の執事がニッコリと微笑みながら立っていた。
なんだ、コイツか。
セバスチャンの顔を見ながら、また大きな息を吐いてしまう。
それを見たセバスチャンはクスリと笑いながら紅茶の準備をしたワゴンを押しながら入り、お疲れ様です、と声を掛ける。

「お茶の時間には、まだ早いだろう」
「お疲れかと思いまして、いつもより早めにお持ちしました」

セバスチャンは言いながら、手早くお茶の準備をする。
主人が疲れたと考えてお茶を持ってきた執事。それは有能だと賛美するものだろうけれど。
行き過ぎた有能というものか…。この悪魔め。
シエルは目を細めながらセバスチャンを睨みつける。

「お前、僕達の話しを聞いていたな?」

「おや、どうしてそんなことをお考えで?」
「否定はしないんだな」

どうせこの悪魔は、アロイスが僕に何かしないか聞き耳を立てていたのだろう。
『魂』という単語が出てきた時には、直接聞くかのように音を拾っていたに違いない。
そうでなければ、このタイミングでお茶を運んでくるなんて不可能。
そして。

「苛立っているだろう?セバスチャン」

ニヤリと笑いながら聞くと、紅茶を注ぐ手がピクリと反応した。
それを見逃さなかったシエルは、決まりだな、と言いながら頬杖をつく。
僕がお前の苛立ちに気がつかないとでも思っていたのか、馬鹿め。
それでもセバスチャンは顔に笑顔を貼り付けたままカップに紅茶を注ぎ、机の上に置く。
何も言わないことを別に気にすることもなくシエルは置かれた紅茶に手を伸ばし一口飲むと、身体が緩むような感じがした。
どうやら自分は思っていたより疲れたらしい。

「苛立っているのは、坊ちゃんの方なのではないですか?」

ようやくセバスチャンは口を開く。

「貴様、そう聞き返す前に言うことがあるだろう」
「…盗み聞きをして申し訳ございませんでした」

胸に手を当てながら膝を折る。
しかしその声は渋々と言ったところだ。
セバスチャンとしてはシエルの身を心配してのことだろうけれど、やはり他人との会話を聞かれたとなると気分が悪い。

「お前が僕のためを思ってくれているのは分かっている。けれど、あまり行き過ぎた真似はするな」
「…御意」

形上は謝らせたので、盗み聞きをしたことに対してこれ以上責める気はない。
シエルは、さっきの話しに戻るが…、と会話を元に戻す。

「なぜ僕が苛立っているんだ?」
「苛立ちにご自分で気がついていないと?」

セバスチャンは立ち上がり、シエルの目を見つめながら言う。
まるで全てを見透かしているような視線で落ち着かず、シエルは目を逸らす。
睨み返せないのは、なぜだ?
目線を逸らしたことの言い訳のように自分に疑問をぶつける。
しかし本当はその答えをシエルは分かっている。
分かっているからこそ、シエルはセバスチャンの言葉を認めずに返す。

「怒っているのはお前だろう」
「まぁ、そうですね」

苦笑しながら答えるセバスチャン。

「その気持ちは分からんでもないがな」


セバスチャンは僕とアロイスが二人きりになることを今だに良しとはしない。
それだけでもセバスチャンの機嫌は悪くなるのに、『ウザイ』とか『俺が魂を食べてやる』とか話していたのだ。
怒っても仕方の無いこと。
だからシエルは怒っていることに対して何か言うつもりはない。
逆にもしもここでセバスチャンが、その話しの内容について僕を責めるなら殴ってやるが…。

けれどセバスチャンは文句を言いに来たわけでもない。
しかし、ただお疲れの主人に紅茶を持ってきたわけでも多分ないだろう。
ただそれだけならば、シエルが苛立っているなんていう話しを振らないはずだ。


きっとこの悪魔は、今の僕の気持ちを見透かしている。


アロイスの話を聞いて、本当は凄く傷ついたことを。


けれどそれを素直に顔に出すシエルではない。
己が傷つくことなんて日常茶飯事。
これくらい、どうってことないのだ。
眠ってしまえば全て消える。
誰かに…アロイスのように誰かに甘えることなど、僕はしない。

僕は女王の番犬、シエル・ファントムハイヴなのだから。


「坊ちゃん」


セバスチャンは声を掛ける。
その声は二人きり特有の声音。
酷く優しく、甘いものだ。

「なんだ」

それに比べて、警戒するように硬い声で返すと、素直じゃないですね、とセバスチャンは笑う。

ほら、やっぱりこの執事は僕が傷ついたことを分かっていた。
そしてそれを癒すべくここに来た

僕が癒しなんか求めていないにも関わらず。

「僕はお前に用はない」
「少しくらい甘えてくださればいいのに」
「必要ない」
「じゃぁ、私が甘えても宜しいですか?」

両手を前に伸ばす。
その姿は子供が母親に抱かれるのを待っているかのようだ。

「馬鹿かお前は」

しかしその腕から目が離せない。
だって本当は抱きしめて欲しいのだから。
力一杯抱きしめて、傷ついた心を癒して欲しい。
そう思っていても自ら女王の番犬の仮面を剥がす事なんて出来ない。
まぁ、セバスチャンもそれが分かっているから、自分からねだったような体制を取ってくれたのだろうけれど。
シエルは無意識に拳をつくる。

「坊ちゃん」

またしても甘い声で呼ばれて、ピクリと肩が上がる。
その声をやめろ、という意思で睨みつけるが相手は一歩も引かない。
このままじゃ埒が明かない。
けれどここまで突っぱねたのに、自分から折れるのも難しい。
そう思っていたシエルに、セバスチャンは最後の爆弾を落とす。

ん?

セバスチャンの口が音を発さずに形だけ動かされる。
どうやら見る限り三文字を言葉にしているらしい。
咄嗟のこともあり、一回じゃ分からなかったので、目を凝らして今度は意志を持ちしっかりと口の動きを読む。

『お』
『い』
『で』


「っ!!!」

おいで。

その言葉にシエルは心臓が跳ね上がる。
きっと頬も赤くなっていることだろう。
くそっ!好きな奴のそんな言葉を拒否出来るわけないだろうっ!
内心ヤケになって叫び、音を立てて立ち上がる。
不機嫌な態は繕わなくても素なので大丈夫だ。
机を回るように一歩進めば、セバスチャンもこちらに一歩進んでくる。
互いに一歩ずつ。一歩ずつ近づいていき。
シエルはその腕の目の前で止まる。

「・・・・」
「・・・・」

唇を噛み締めながら上目遣いで睨み挙げる。
ここまで来れば抱きしめてくるだろうと思ったが、セバスチャンは一向にそこから動く気配はない。
どうやらシエルから来るのを待つらしい。
手を伸ばしたのはそっちなんだから、最後までお前が責任持てよっ!
などと意味不明に愚痴ってみても状況は変わらない。
セバスチャン、と名前を呼んでみるがニッコリと微笑み返すだけ。
本当にお前は意地が悪い!
シエルはまるで殴りかかるかの勢いでセバスチャンの首周りに抱きつく。
その直後、フワリと身体が浮くような感覚。
首元に顔を埋めて今の状況を見てはいないが、抱き上げられたのは分かった。
そしてどこかへ歩いて行く。
どうせソファかベッドだろう。
今までの経験上そう考えると、セバスチャンはすぐに何かに座った。この距離的にソファだろう。
ちらりと目線を上げると案の定、先ほどアロイスが横になりながら足をばたつかせていたソファだった。

「・・・・」


セバスチャンは何も言わないで、背中をポンポンと叩く。
子ども扱いするな、と言いたいところだったけれど今日はその言葉を飲み込む。
だって今は、その扱いが優しく心に染み込んでいるから。


「…怒ってたんじゃなかったのか」
「坊ちゃんに怒っていたわけではないですし」

それに。

「坊ちゃんの傷を癒す方が大切です」

よく我慢しましたね。
そう言いながら頭に頬擦りをする。
この悪魔は、どこまで僕を甘やかすつもりなのだろう。
シエルは何も答えずに燕尾服の襟を握る。
ここまで来ても仮面を落とせないシエルにセバスチャンは苦笑し、まるで呪文を掛けるように耳元で囁く。

「今の私はあくまで恋人。主人と執事の仲ではございません。ということはシエル。貴方も女王の番犬などではないのですよ。ただの私の恋人、シエル・ファントムハイヴです」
「ただの僕…か」
「えぇシエル。貴方が今何をしようが、何を言おうが、女王の番犬の坊ちゃんとは何も関係ないのです」

いつもの口調より少し解けた感じで話すセバスチャン。
本当にコイツは、僕の扱いが上手いな。
嬉しいような悔しいような、そんな感情を持ちつつも心の中でちょっぴり感謝したり。
シエルはいつもよりゆっくり、大きく深呼吸をする。
そして。

「セバスチャン」

いつもよりも甘えた声音で名前を呼んだ。

「セバスチャン、セバスチャンっ」
「シエル」


もうここまでだ。
もう口が止まらない。
気持ちが止まらない。

シエルは強くセバスチャンに抱きつき、話し始める。


「僕は嘘をつく。お人よしでもないし、別に綺麗なんかじゃない。この身体だってとうに穢れているんだ」

アロイスに重ねられた言葉の数々。
それはシエルに向けた嫉妬でもあるのだろう。
しかし、その嫉妬が理解できない。
だって自分は、こんなにも汚れているのに。
アロイスの勘違いも甚だしい。

けれど。
そんな言葉を並べられて、自分の汚さを再確認させられたようで。
そんな自分に苛立つ自分に腹が立つ。
ましてや、自分の汚さを確認して心が痛むなど、もってのほかだ。

「憎悪にまみれて立つ姿が凛としているなんて、ただのまやかしだ。助けを乞う仕方だって、当に忘れた」

声が震える。
それでも気丈に口元に弧を描いてみせる。
決して誰も見ているわけではないけれど。
自分自身に負けないためにも。

「あぁ、僕は孤独じゃないと分かっている。お前もいるし、あの四人だっている。けどな、別に好きで孤独であろうなんて思ってない!孤独でなければいけないんだっ!」

だって、そうでなければ『裏世界の秩序』などにはなれない。
女王の庭を荒らしたネズミの駆除さえも躊躇ってしまう。
冷たい心を持っていないと、すぐに壊れてしまう。
孤独でなければ、生きていけない。

「けれどこれが僕が背負うものだ。だから他の奴の人生を羨む気はサラサラない。背負うと決めたのも僕だからな」

僕は僕だ。
そしてアロイスはアロイスだ。
人と比べるなんて時間の無駄だ。
それでも。

どこかで痛む心が確かにある。

「アロイスに掛けた言葉に偽りはない。奴は奴で胸を張ればいい。だから僕も汚れている自分を自分だと受け入れればいい」

まるで自分に言い聞かせるような言葉になっているのを、自身は気がついているのだろうか。
セバスチャンが傷を癒すべく、苦しい思いを吐き出させているのに、結局は自己暗示を掛けようとし始める。
しかもそれは無意識的に行い始めるから、癒そうと思った側にとってはたまったもんじゃない。
本当に貴方は甘えることが下手ですね。
ここまで来ると、甘えること自体が出来ないと言っても過言ではないだろう。
セバスチャンは背中を叩いていた手を止めて、力強く抱きしめる。

「シエル」
「…色々曝け出して悪かった」
「私が言うように仕向けたんです。それに…」

一旦言葉を切る。

「…私の名前をもう一度呼んでください」
「は?いきなり何に繋がったんだ?」
「いいから」

促すと首に巻きついていた腕の力が緩くなり、少し顔を離して、セバスチャンと名前を呼ぶ。
それに優しく口元に弧を描き、シエルの額に口付ける。

「傷ついているのも、シエルの一部分なんですよ」
「なっ!そうかもしれないけれど、僕は」

叫び出すシエルに、今度は唇に口付けを落とす。
それは一瞬だったけれど、シエルの言葉を止めるには十分な時間だった。

「私の前では隠さないで。強がらないでください。ただのシエルでいてください」

シエルがなぜ甘えることが出来ないのか、よく分かる。
なぜ弱音を吐くことが出来ないのかも。
それは自分が、悪魔という存在だから分かる部分でもある。

憎しみに必要不可欠なのは、悲しみ。
気高く生きるのに必要不可欠なのは、プライド。
この裏の世界で生きるのに必要不可欠なのは、冷たい心。

全てを抱いて歩む魂は、なんと甘美なものか。
しかしそれは、なんと残酷な道なのか。

この少年は、それでも必死に立って歩いている。
悲しみを背負い、プライドを盾にして。
冷たい心を刃として敵に向ける。

その中心にあるものは。
痛む心だというのに。

「弱いシエルだってシエルなんです。それを含めて、シエルはシエルで胸を張ってください」

自分がアロイスに向けた言葉を返されて、目を見開く。
セバスチャンはシエルの髪をかきあげて耳元で囁く。

「私は、弱い貴方のことも愛していますよ」
「っ!!」

ビクリと肩を震わせて、眉を寄せる。
泣きそうな顔になるが、涙を流さないように瞳を強く閉じる。
隠さないでと言ったばかりなのに。
苦笑しながらシエルの頭を撫でる。

「馬鹿」

小さな声が耳に届く。
その言葉そのままお返ししますよ、と返せば、もう一度同じ言葉を吐き、セバスチャンの肩で顔を隠す。

「お前は本当に僕に甘いな」
「おや、恋人に甘くしてはいけませんか?」
「本当にお前って奴は…」

こんな僕を見て、幻滅しないのか?
口に出さずにシエルは問う。
けれど、今もこうやって抱きしめてくれていることが答えだろう。

弱い自分など、いらない。
大嫌いだし、なによりも邪魔だ。
それでも。

それでも、セバスチャンがそんな自分も含めて愛してくれるというのならば。

「セバスチャン」
「はい」
「・・・」

アロイスのように素直にお礼を述べようとしたが、喉に言葉が引っかかり、詰まってしまう。
ここまで甘えてしまったのだから、意地もなにももうないというのに。
我ながら面倒な奴だな。

「シエル?」

途中で止まってしまったを疑問に思ったのか、バスチャンは伺ってくる。
自分にストレートのお礼は無理だ。
だから。

シエルはピタリとセバスチャンにくっついて。

「温かいな」

一言そう呟いた。

するとシエルの意図を汲んだのか、セバスチャンも一言。

「温かいですね」

そう呟いた。




END



****
『あとがき』というより『懺悔』
アロイスが可哀相だった為に書いた『君は君だから』だったのですが、書いていたらシエルも可哀相に感じて
セバスチャンに慰めてもらいました。セバスになら本音を言って甘えちゃうシエルが書きたかっただけかもしれなくもないがorz
しかし、こう二つの『君は君だから』を並べてみると、どう考えてもアロイスよりもシエルの方が救われている気がしてならない。。。
今度はギャグ路線で君を幸せにしてみせr(((殴

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【2011/03/23 20:27 】 | Text | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
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