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【2017/03/28 09:24 】 |
GameⅣ2

四萬打御礼




 

「で、結局何も分からなかったわけだ」
「申し訳ございません」

次の日の朝。
昨晩の出来事を主人であるシエル・ファントムハイヴに報告をし、頭を下げる。
何も情報を得ることが出来なかったという報告はこれで三回目。
ファントムハイヴ家の執事たるものとして、正直これは居た堪れない。
しかし同じ報告を受ける主人は特に気にした様子も無く、アーリーモーニングティーを一口喉に通した。

「他の三人は」
「本日も元気に私の仕事を増やしてくださっております」
「そうか・・・」

一瞬、どこかシエルが安心した顔をしたのをセバスチャンは見逃さなかった。
本当にこの主人は使用人に対して甘い。
だが、それを口にすることはない。なぜならその使用人の中に自分も含まれていることを知っているからだ。

「なぁ、セバスチャン」

シエルはまだ半分残っている紅茶を近くの小さなテーブルの上に乗せて、声を掛ける。
カップとソーサーがぶつかった音が、まるで切り替えのスイッチだったかのように、シエルを纏う空気の色が変わり、セバスチャンは元々真っ直ぐだった背筋を、より真っ直ぐにした。

「はい」
「今回の動き。お前はどう見る」
「・・・そうですね。少しばかりは愉しめるゲーム相手なのかと思われます」

普通なら口角を吊り上げて言う台詞だが、今回セバスチャンは無表情のままで言葉を返す。
余裕がない、そう言ったらその通りかもしれないが、本当の理由は少し違う。
本当の理由、それは。

「そうだな。いつもより頭のいい奴が動いているらしい」

主人が何かを知っているような素振りだからだ。
シエルは半分残っている紅茶に再び口をつけることはせず立ち上がり、セバスチャンに背を向けながら窓の外を眺める。
今のセバスチャンとは逆に余裕があるように見えるが、そういうわけではないだろう。
もし本当に余裕があるのならば、あんな問い掛けなどしない。
進むべき場所は見えているのに道が分からないから駒をどのように進めるのか悩んでいる、と言ったところだろうか。
セバスチャンはシエルの背中を見つめる赤い瞳を細める。

「何をお考えですか、坊ちゃん」

きっとこう聞いても主人は何も答えないだろう。
けれど聞かずにはいられない。
正直分からないのだ。
敵の正体も。そしてこの主人が本心では何を考えているのかも。

「・・・このゲームのシナリオの結末だ」

シエルは振り返ることなく、静かに言う。

「結末ですか」
「あぁ」

シナリオを通り越して結末を考える。
それは先を予測しているとも取れるが、それでも今の状況を考えたら先を見すぎだろう。

「ということは、坊ちゃんはこのゲームのシナリオを知っていると?」
「いや・・・分からない」
「ではなぜ結末から考えておられるのですか」

そう問うと執務室に暫くの沈黙が流れる。
それは決して心地よいものではなく、悪魔でさえ重々しいものだった。
それでもセバスチャンは主人の言葉を待つ。

「・・・セバスチャン」

どれくらいの沈黙があったのだろうか。
止まっていた時を進める声がセバスチャンに向けて発せられる。
それと同時にシエルは振り返り、どこか試すような蒼い瞳を此方に向けた。

「執事とは主人を守るものだ」
「はい」
「その主人の命令は絶対」
「はい」
「悪魔としても、そうだな」
「その通りです」

まるで説明書を音読して確認しているような作業。

「どんな命令でもお前は可能にする」
「えぇ。坊ちゃんが命令したことは全て」
「・・・それでいい」

真剣だった瞳がどこかフワリと柔らかくなり、微笑んではいないのに温かな空気に包まれる。
それにセバスチャンは目を見開き、その空気の感触に逆に不安が溢れ冷たくなった。
この主人は絶対によくないことを考えている。
それはゲームの相手ではなく、ましてや悪魔である自分のことではなく。

「何をなさる気ですか」

シエル・ファントムハイヴ自身に対して。

「別に何もしないさ」

セバスチャンの言葉に軽く返すシエル。
いつものようにこのゲームを楽しむだけ。ただそれだけだ。
そう哂うがセバスチャンは退かない。

「また何かを複雑にする気ですか。それは今回やめてくださると嬉しいのですが」
「これ以上複雑にしたらお前が可哀相だからな」
「そういうことではなく」
「あぁ、分かっている」

カチャリと残りの冷めた紅茶に手を伸ばし、液体を覗き込む。
波を立たせるようにカップを揺らし、その波さえも飲み干すかのように一気にそれを呷った。

「安心しろ。別に何か無茶をするわけじゃない」
「どうでしょう。貴方は私に嘘をつきますから」
「信用がないな」
「信用があると思っているのですか?」

クスリと哂って言ってやれば、相手はワザとらしく肩を揺らしてみせる。
本当にどこまでも捻くれたご主人様だ。

「さて。この後はどのように動くおつもりですか」

少しどこかにずれてしまった話を戻し、セバスチャンは聞く。
一週間のうちに3回も襲撃されたのだ。ここで黙っている主人ではないだろう。
裏社会に動きがないからと言って、進むことを躊躇う人ではないと身を持って知っている。
そして先ほどシナリオの結末を見ていると言ったことからして、駒の進め方はきっと決めてあるに違いない。
けれどシエルはセバスチャンの予想を裏切って、首を横に振った。

「動かなくていい」
「・・・動かない、ですか?」
「このまま今の現状を保持しろ」

セバスチャンは何を言われているのか理解出来ず、数回まばたきをして頭を整理する。

「鼠を野放しにするということですか?」
「・・・まぁ、そういうことだな」
「それで宜しいのですか」
「あぁ」

追いつけないセバスチャンを置いて、シエルは頷き椅子に腰を下ろす。
もうこのゲームに関して言うことはない、とでも言うような雰囲気を漂わせて。

「なぜ動かないのですか」
「・・・・」
「何をお考えですか」
「まだ言えない」
「なぜです」
「それが絶対的な解答だとはいえないからだ」
「ですが」
「セバスチャン」

強く名前を呼ばれ、セバスチャンは口を噤む。

「・・・僕にでも動けない相手がいるんだ」

静かにシエルはそう言った。
それにまた言葉を紡ごうと開いた口は結局何も生まれずに閉じていく。
それを見たシエルは満足そうに微笑み、

「田中を呼んで来い」

と、命令した。










どういうことなのか。
タナカさんを呼びに行くため長い廊下を独り歩きながらセバスチャンは考える。
2回目の襲撃までは全てを探るようにしていたのに、3回目の今日にはどこか落ち着きを払っていた。
三人目の言葉から何か情報を得たということのだろうか。
けれどセバスチャン自身は全く分からない。
自分がもっているピースを繋げても、何も背景が見えて来ないのだ。
しかしシエルにはきっともう背景が見えている。たとえシナリオ自体は見えていなくとも。だからあえてセバスチャンに対して今回の動きを聞いたのか。
セバスチャンがこのゲームの背景が見えているのか見えていないのか確かめる為に。
(きっと坊ちゃんは何かを隠したがっている)
だから改めて執事として悪魔として命令に従うことを確認させたのだろう。
自分に忠実に動くように。
もし隠していたことを知られたとしても、勝手に動き回らないように。

「このゲームよりも、貴方の方が問題ですよ」

セバスチャンはため息をついた。
最早このゲームに興味はない。
シエルが何を考え、そしてこれから何をするのかの方が不安でたまらない。
それはシエルが自分の事を省みずにあらゆるものに手を出すからだ。
少しは守る方の身にもなって欲しい。いや、守られようという気になって欲しい。

「・・・坊ちゃんでも動けない相手、ですか」

言われた言葉を思い出し、眉を顰める。
それはどういう意味なのか。
そのままの意味なのか、もっと別の意味なのか。または嘘なのか。
しかしシエルが動けない相手だとしても、自分のすべきことは全て見えている。
何時如何なる時も自分がすべきことはただ1つ。

そう。
ただ1つなのだ。


****


セバスチャンが去って執務室で独り。
シエルは椅子の背もたれに寄り掛かり、天井を見上げていた。
瞼を閉じなくとも、そこには最後に見たセバスチャンのどこか苛立つような顔が浮かび上がってくる。
その苛立ちにはもどかしさとか、焦りとか、他にも色々な感情が混ざっていることをシエルは見抜いていた。
(そしてきっとセバスチャンも僕がこのゲームの背景ついて何か知っているということを見抜いている)
あの悪魔はやはり人間外ということもあり鋭い。
それを敵側に向けるのならばいいが、自分に向けられるとなると少々厄介だ。
隠し事もしづくなるし、嘘もつきづらくなる。まぁそれでもシエルは気にせずにするのだが。

「坊ちゃん」

コンコンとノックの音と共に声が掛けられる。
シエルは姿勢を正し、入れと短く承諾すれば田中が姿を現した。
その後ろにセバスチャンの姿はなく、よく分かっているなと内心苦笑した。
このゲームが終わった後に田中を呼んだことでもまたネチネチ言われると考えるとため息しか出ないのだが。
田中は足音を一切立てずにシエルの座る机の方へと足を進める。
気配がないソレは相変わらず悪魔とは違う意味で恐ろしい。
空気とも変わらないその気配は“一寸先は闇”という言葉と同じようなものだ。

「どうして呼んだかは分かっているな」
「はい」

シエルの言葉に田中はニッコリと微笑みながら頷く。
よく気が付きましたね、と赤ペンで花丸でも書いているかのような微笑みに相変わらずだと息を吐いた。
そして今回のゲームの背景が間違いではないということの安堵の息も吐く。

「先代も経験済みか」
「何回かはございましたね」
「そうか」
「・・・どうにかなさるおつもりですかな?」

田中は鋭い視線を向けながら言う。
口元は弧を描いたままだというのに。

「いや、何もしない」

背中にヒヤリとした汗が流れているのを悟られぬよう、シエルは机に頬杖をついて答えた。

「このまま耐え切れば鼠は自分から姿を消す」
「自分から探すことはなさらないのですか?」
「もし探し出したとしても、僕にどうすれと?」
僕はファントムハイヴ家当主だぞ?

口角を吊り上げてそう言えば、田中はどこか安心しように目元を緩め、いつものように笑った。

「それを聞いて安心致しました」
「本当に手厳しいな」
「坊ちゃんならこの答えを導くと思っておりましたよ」

そう言う田中にシエルも口元を緩めて笑う。
あの悪魔とは違う馴染みきった空気に、どこか気持ちも柔らかくなる。
田中が恐いというのもあるのかもしれないが。

「それで、彼はこのことを知っているのですかな?」

丁度シエルも考えていた相手のことを訊ねられ、少しだけ鼓動が跳ねた。

「いや・・・アイツは知らない」
「他の三人は良いとしても、彼には知らせなくて平気なのですか?」

きっと田中はセバスチャンがこのゲームの背景について知らないと、勝手に答えを探し出そうと躍起になることを危惧しているのだろう。
しかしシエルは首を横に振った。

「アイツにこのことを知らせても、自ら鼠を駆除しに行こうとするだろう。なら分からないままにして泳がせた方がまだましだ。勝手に行動しないようには一応さっきしておいた」
「・・・鋭利過ぎる盾は剣になりかねませんからな」

苦笑する田中に、バレてるぞセバスチャン、と内心でこの場にいない悪魔に言ってみる。
もしかしたらこのゲームは、鼠の相手をするよりも悪魔を押さえつける方が苦労するかもしれない。
今回、セバスチャンが動くと困るのだ。
彼は有能であるが故に、探れば“知り過ぎる”からだ。
このゲームは彼には絶対に深入りさせてはいけない。全てが終わるまで。
しかし今後鼠らがどのような動きをするのかは分からない。
きっと田中に聞いても分からないだろう。
“あのお方”が毎回同じ手で試すようなことはしないだろうから。
今はただひたすら耐えるしかない。
(いや、その言葉は可笑しいかもしれないな)
耐えているのは僕ではなく、この屋敷の使用人たちなのだから。

「田中」
「なんでしょう、坊ちゃん」
「他の使用人たちの様子をしっかり見ておけ。勿論セバスチャンもだ」
「彼にバレぬよう様子を見るのは骨が折れそうですなぁ」
「歳か?」

ほっほっほ、と笑う田中にシエルは意地悪げにそう聞けば。

「歳を重ねた分だけ得たものも深いですぞ」

人間は1つ年を重ねるごとに成長するものです、と昔と変わらぬ強い瞳を見て、シエルは苦笑しながら任せた、と言った。


****


「こんなにも敵兵が攻めてくるなんて、向こうのトップは何を考えてんだろうなア」

バルドは煙草の煙を吐きながら面倒くさそうな口調で呟くのを聞いて、セバスチャンは特に答えることもせず、無表情でそれを聞き流した。


今は月が高く上がった時刻。
セバスチャンがタナカさんを呼びに行った後、今度はタナカさんから使用人全員執務室へという命令が伝えられた。
いつもは自分がする仕事をタナカさんがしていることに対して若干の怒りを覚えたが、タナカさん相手にそれをぶつけるわけにもいかず、無言で頷いたまま他の三人と一緒に執務室へと足を運んだ。

『あと何日この状態が続くか、正直分からない』

シエルは椅子に座ったまま使用人に声を掛ける。

『しかし何も考えるな。そして知ろうとするな。向かってきた鼠は叩き潰すのみ』

そこには当主の顔があったが、こちらを気遣うような表情も見えた。
それを他の使用人たちも気が付いているのか、不満をぶつけることも、質問をすることもせずに緊張した様子で頷いている。

『疲れたならば日中でも休んで構わん。だが鼠がこの屋敷を荒らすことは決して許すな』

鋭い視線を投げる主人に、イエッサーと三人は元気良く答える。
よくそこまで忠実に・・・いや、主人を思い遣れるものだとセバスチャンはため息をつく。
今の自分は不満でいっぱいだというのに。
それは悪魔だからなのか。それともシエル・ファントムハイヴという人間を愛している故の独占欲からなのか。
なんとなく今の状況はあの劉が絡んでいたときと酷く似ていると思えた。
違うのはあの時のような簡単なゲームではないということだ。

なぜ自分を使わないのか。

その思いがセバスチャンの胸の中を満たしている。
難しいゲームならば尚更自分を使った方が有利になる。
一言ロンドンでもどこでも裏の事情を探って来いと言えば、絶対にこのゲームの首謀者を見つけ出してみせるのに。
主人が動けないのならば喜んで駒がその手足となるのに、なぜ。
珍しくセバスチャンは唇を噛み締め、感情を押し殺すように息を吐いた。

「おい大丈夫か、セバスチャン」

それを見ていたバルドは困惑したような顔で声を掛けてくる。
セバスチャンがこんな様子になるのは珍しいからだろう。
いつもならプライドが許さないのだが、今はバルドの言葉がすんなりと胸の奥へストンと落ちてくる。
失礼な話しだが自分が今主人に使用人たちと同じ扱いをされているので、使用人仲間という意識があるのだろうか。

「大丈夫ですよ」

苦笑しながら答える。
それは鼠の相手をするには、という意味だが。
精神的には何とも言えない。
それをバルドも分かっているのか、玄関ホールの手摺に寄り掛かりながら同じように苦笑した。

「お前さんも何も聞いてねェんだな」
「えぇ。聞いても何も答えてくれません」
「珍しいよなぁ。セバスチャンにも言わないなんてよ」

何気なく言った言葉がセバスチャンの胸をツキリと刺す。
赤い瞳を細めて睨みつければ、んな怒るなよと紫煙を吹きかけられた。

「お前さんにも言えねェくらい重てぇことなんじゃねェの?」
「重たい、ですか?」
「巻き込んでいるっていう言い方は間違いかもしれねェが、坊ちゃんが俺たちをここまで使う場合1つでも理由を話すだろう。坊ちゃんを狙っているだとか、あと少しで解決するだとか、まぁ色々だ」
「・・・まぁそうですね」
「だが今回言わないってことは、独りで抱えなきゃいけない問題なんじゃねえの?」

水臭ぇけど仕方ねェだろ、とバルドは続けた。
自分では考えもしなかった言葉にセバスチャンは少し瞳を見開き、無意識に言葉を返す。

「独りで抱えなきゃいけない問題って何ですか」
「そんなもん知らねェよ。知らせねぇように坊ちゃんが頑張ってんだろうが」
「・・・午前に坊ちゃんとお話をした時、坊ちゃんは自分でも動けない相手がいるんだと仰っていました」
「坊ちゃんが動けない相手ェ?」

バルドは眉を顰め、煙草を口から離した。
我らが主人は怖いものなしとでも言うように自らの足を進めていく。
それこそ自らを省みずに。
そんな主人が進むこともせずに、この場で足踏みをしているということは。

「・・・1人しかいねぇんじゃねェのか?」
「は?」

自分がどれだけ考えても導くことが出来なかった相手をバルドが分かったというのか。
先ほどから自分が考えもしなかったことをこの男はさも簡単なことのように言い放つ。
それに対する苛立ちを隠すこともせずに眉を顰めれば、相手は呆れたような顔をした。

「お前さんは難しく考え過ぎるんだよ」
「単細胞な貴方に言われたくありませんが」
「言ってくれんじゃねェか」

ま、否定はしねェけどよ、と笑い先を続ける。

「その単細胞だから分かったのかもしれねェな。俺たちは坊ちゃんに関して多くの情報を知っているわけじゃねェ。必要最低限なことだけだ。それでこの生活には何の不自由もないからな。じゃぁ俺たちが知っていることは何だ?」
「・・・・ッ!」

そこまで言われてセバスチャンは1人の名前が頭に浮かんだ。
ここまで言われても分からないほど落ちぶれているわけじゃない。
まさかとも思ったが、全てが繋がる。散りばめられたピースが背景を映し出すのだ。
セバスチャンはその人物の存在をこのゲームの基板上に上げていなかったから、繋げることが出来なかったのだ。

『…言う、なれッば、城の…なか…?』

その言葉には、ちゃんとした意味があったのだ。
むしろそれ自体が答えだった。
気付けなかった自分に舌打ちをするが、妙にすっきりし気分は悪くない。
今やっと分かったゲームの相手に不足なしだからだろうか。
いや、きっと違うだろう。
この満足感は・・・。
愛する主人を誰から守ればいいのかが分かったからだ。

「気付いたか」
「えぇ。貴方に気付かされたと思うと少し癪ですが、素直にお礼を言いますよ」
「そう言う時点で素直じゃねェだろうが」

離した煙草をもう一度口に咥え、バルドは天井に向けて煙を吐く。
その真っ白い紫煙を見つめてセバスチャンは静かに言葉を紡いだ。

「坊ちゃんはどうなさる気でしょうね」
「今は動かねぇみたいだがな」
「しかしこのままでもいい訳がありません」
「俺だってそう思ってらぁ」
「その意味が分かっているんですか?」

ニヤリと意地悪げに聞けば、バルドも口元に弧を浮かべて頷いてみせる。
こういう人間だから、このファントムハイヴ家の傭兵となれたのだろう。

「どんな相手でも坊ちゃんの敵は敵だ」

バンバン、と銃声が響き渡った。
きっと入り込んだ鼠に向けてメイリンが銃を放ったのだろう。
それがまるでスタートダッシュの合図だったかのようにセバスチャンとバルドは別々の方向に走り出す。

「えぇ。私たちがすべきことはただ1つ」

そう。
ただ1つなのだ。

それは、
主人を守り抜くこと。
全てのものから。

たとえ。



女王が敵であったとしても。




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【2011/04/16 16:02 】 | Text | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
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