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【2017/10/23 00:33 】 |
GameⅤα3
(氷の上で泣いたペテン師は。)




「にしても、随分変わりないね」

ヴィンセントは室内を見回しながら笑う。
きっと自分が住んでいた頃と何も変わっていないことを指しているのだが、それはおかしいことだ。

「誰、だ」
「ん?」
「貴様は何だ!」

シエルは感情のままに叫び、相手を睨みつける。
見た目も、声も、記憶にあるヴィンセント・ファントムハイヴのままだけれど、彼は鏡の中から出てきたのだ。
その正体が何なのか、まったくもって不明である。
そんなものがなぜヴィンセント・ファントムハイヴが生きていた頃の部屋の形まで知っているのか。

「いい質問の仕方だね、シエル」

その思考を読んだのか、ヴィンセントはシエルに向かって微笑み、両手をワザとらしく広げる。

「僕が何なのか知りたいようだけど、生憎それはさっき言ったことしか僕も知らない」
僕がヴィンセント・ファントムハイヴということしかね。

彼は言う。

「この鏡を見たシエルの記憶から生まれたヴィンセント・ファントムハイヴかもしれないし、もしかしたら執事君かも。他にも実は過去から来た本物のヴィンセント・ファントムハイヴかもしれないし、または最初から誰かに仕組まれて作られたヴィンセント・ファントムハイヴかもしれない」

ようするにさ。

「僕はヴィンセント・ファントムハイヴである、というカード(答え)しか見せることが出来ないんだよ」


「…それは言い逃れか」
「あはは、僕に似て隙間を突いてくるね。それでこそ女王の番犬だ」

楽しそうに笑う声にシエルはピクリと眉を動かし、セバスチャンに降ろすように命じる。
それに彼は静かに応じ、そしてシエルの邪魔をせぬよう、しかし何かあればすぐに守れるように斜め後ろへと身を下げた。

「もしもお前が過去の人物だとしたら僕はお前を殺せないからな」
「だろうね、未来が変わってしまうから」
「だが僕がそれを信じるとでも?」
「悪魔を従えさせといてそれを言うのかい?」
「ッ!!」

なぜそれを知っているのか。過去だけではなく未来のことまで。
けれどこれで彼が過去から来た本物だという線は消えた。過去の本物ならばセバスチャンのことを知らないだろう。
ならば一番高い可能性であるのは、彼の言っていた通り自分の記憶から生まれたヴィンセント・ファントムハイヴだということだ。
けれどそのカード(答え)はなぜだか納得がいかず、心の内にモヤがかかってしまう。

「鏡から人間が出てきたなんて、かなり非現実的だよね。でもすでにシエル自身、非現実的存在を手に入れているじゃないか」
「……だからどうした」
「君の研ぎ澄まされた感覚…君自身の本能を信じた方がいいよ、って言ってるのさ」

不安げな表情がシエルの本心だろう?
そう言いながら歩を進め、シエルへと近づき手を伸ばす。
(あ・・・)
その手はいつかの頭を撫でる父親と記憶が重なり、動けずにいると。

「我が主人に勝手に触らないでくださいますか?」
「セバス、チャン」
「おやおや…」

その伸ばされた手の手首を握り、セバスチャンはニッコリと微笑む。
人間相手にしては結構な力を込めているのだろう、掴んだ手首の裾はセバスチャンの手の内によって皴がより、掴む彼自身の指も隠れるようにメリ込んでいる。
きっと手を解いたら赤く手跡が付いているのではないだろうか。
だが、ヴィンセントは困ったように笑うだけで、痛がる様子も反抗する様子も見せなかった。

「ただ不安げな息子の頭を撫でてあげようとしただけだけど」
「貴方がそんなことをする必要などありませんよ」
「父親なのに?」
「こちらの世界では“元”でしょう?」
「……今君は亡き父親全員を敵に回したよ」
「すでに悪魔の自分には味方も敵もありませんから」
「可愛げないね、君」

そう言い切ったヴィンセントにセバスチャンは、可愛げなくて結構です、とニコヤカさを消すことをせず、その手を開放することもしない。
どんなに相手が痛そうにしていなくても、鏡から出てきた存在だとしても、一応今この場に存在する人間でるわけで。
悪魔に握り締められている手首からピキッ、と嫌な音がシエルの耳に届いて、慌ててセバスチャンと背中を叩いた。

「その手を離せッ」
「なぜです」
「そんなにも強く握り締める必要はないだろう!」
「だから、なぜです」
「なに?」

疑問を含んだ声にシエルはセバスチャンの方へ視線を向ければ、怒りが満ちた瞳がシエルを出迎えた。

「どのような存在か分かりませんが、噂が本物だとしたらこの方は坊ちゃんにとってお逢いしたくない方なのでしょう?」
「いや…そうかもしれないが」
「ならば他に理由はいりません」
「随分と物騒な駒だねぇ」
「貴方は黙っていてください」

そうセバスチャンが冷たく言い放てば、ヴィンセントは僕独りじゃ君を相手にするのは辛いかなぁ、と笑い。

「君の相手も用意しようか」

身体を若干後ろへと傾かせ、そして掴まれていない方の手を伸ばし『コン』と鏡を叩いた。

「……なんですって」
「だって君だって鏡に映っているじゃないか。君にだけ相手がいないだなんて不公平だよ」

ゲームは何にしても“最初”は平等でなくちゃ。
ヴィンセントは笑いながら言うのに対し、セバスチャンは瞳を細くして相手への嫌悪を隠すことなく表した。

「その鏡は貴方の自由自在ですか」
「いいや?むしろ僕の方が鏡に縛られていると言えるかな」
「…どういうことだ」
「さぁ、それは秘密」
ただ言うならね、シエル。
「この鏡が僕らにとってルールであり、存在であるんだよ」

その微笑には何が隠されているのか。
優しげに微笑んだヴィンセントを見て、シエルはどこか揺れてしまいそうな心を客観的に感じ取り唇を噛み締める。
それに気を良くしたのか相手は、少し話しすぎたかな、とクスクス笑い、視線を鏡へとずらした。

「さて執事君の“会いたくない”相手は…」

言いながらヴィンセントはどこか仕組んだような笑みを浮かべ、そして再度鏡を叩く。
すると、
『コンコン』
という、先ほど聞いた音が再び響き渡り。

「ッ………?!」
「セバスチャンっ…!!」

ヴィンセントの手首を掴んでいたセバスチャンの腕の手首をいきなりガシリと掴まれた。
掴んだその手はヴィンセントと同じように鏡から伸び、しかし彼とは違って黒い手袋など履いていない。
その手は見たことのある、黒く長い爪をしていて…――――

「小生が選ばれるなんて光栄だよ、執事君」

その声は嫌というほど知っているものだ。
セバスチャンは背筋がゾクリとしたのを感じ、ヴィンセントの手首から手を離し、そして掴んでくる手を振り払う。そしてシエルを抱きしめて距離を取るように背後に飛んだ。

「あ~あ~、なんだか随分と嫌われちゃってるみたいだねェ」
「一体何をしたんだい君は」

ヴィンセントは己の身長よりも小さい鏡に腕を置き、その中を覗き込むようにしながら笑う。
それに相手は、さぁねぇ、とどこか間延びした返事をしながらカツンと足を踏み出し、その姿を露わにした。

「まぁ、小生と執事君は“相性”が悪いから仕方が無いんじゃないかな」
「アンダー、テイカー………」

セバスチャンの腕に抱きしめられた状態のままシエルは口から零すように名前を呟けば、アンダーテイカーは楽しそうにヒヒヒと笑い、帽子に軽く触れた。

「やぁ伯爵って……そう呼んだらちょっとややこしいから二代目伯爵と呼ぼうかなぁ」
「二代目伯爵……?」
「別にファントムハイヴ家当主の二代目ってワケじゃないんだけどねェ~。ただ君の父親のことも伯爵って呼んでるから分かりづらいんだよ~」

そう言うアンダーテイカーの姿は、別に“こちら”で会っているアンダーテイカーと変わりはなく、むしろ全てが同じだ。だが、違和感がある。
たとえばこのアンダーテイカー…そしてヴィンセント・ファントムハイヴが先ほど考えたように自分達の記憶から生まれたものならば、その生まれたものは自分達が知っている情報しか持っていない筈だ。それなのに今アンダーテイカーは自分達が知らない情報をサラリと口にした。

―――君の研ぎ澄まされた感覚…君自身の本能を信じた方がいいよ

(嘘だ、まさかこの人が、)

“本物”だなんて。

正直なところ、この二人がどういう存在であるのか分からない。
自分の記憶から生まれたものなのか、それとも他の人間…たとえばこの鏡を作った人間が仕組んだこと、実は劉も一枚噛んでいてシエル・ファントムハイヴを陥れようとしているのか、それとも過去から来たものなのか。
もっと考えるならば幾らでも可能性は出てくるだろう。
だが、あの人は。

本物だ(――――だ)



「シエル」

静かに呼ばれた声に、シエルはビクリと身体を震わせる。
記憶と変わらぬ姿のヴィンセントに無言で視線を送り、続きを促すようにするが、きっとその姿はいつもの裏社会の秩序としての威力、威圧感は皆無だろう。

「さて、君達にとって逢いたくない存在、いわば天敵と思えるほどの存在が現れちゃったけれど、どうするのかな」
「………どうする、とはどういう意味だ」
「意味?意味なんて何もないよ。ただ僕らをどうする気なのかを聞いただけ」
「・・・・・」
「そういう貴方たちはどうするつもりですか」
「そこを同じ質問で返すのはズルイんじゃないかなぁ~~~?」
「いい、大丈夫だセバスチャン」

まだ後ろから自分を抱きしめているセバスチャンの、胸板回りに回っている腕をトントンと軽く叩く。
きっと彼は自分が動揺していることを知っているのだろう。だから助け舟を出してきたに違いない。いつも二人きりだと嫌味の応酬だというのに。
シエルは内心苦笑しつつも、己の心情を理解してくれている恋人に少し嬉しく思い、落ち着けるよう大きく深呼吸をした。

「どうするかという判断は、貴様ら次第だな」
「ふぅん?」
「貴様らがどうしてここにいるのか分からない。この鏡についてもよく知らないからな。ただ噂通り鏡から出てきた存在が僕達にとって苦手な部類のものは正しいだろう。だがそれがどうした」

シエルはヴィンセントのあの頃に見る事がなかった女王の番犬と呼ばれている存在の冷たい瞳を逸らすことなく見つめて言葉を紡ぐ。
けれどきっとこの鼓動の速さは自分に触れているセバスチャンは知っているだろう。

「噂によると自分に苦手な相手が出てきて殺されたケースもあるそうだが、“今”はどうやらそういうワケではないみたいだろう?もし僕達を殺すつもりなら、こんな無駄な時間を過ごすなんてことはせずにすぐに殺せばいい。だが貴様らはそうしない…こちらに危害を加えない人間にまで手を出すような躾けのなっていない僕ではないし、ただ鏡の向こうに帰れ、と言うぐらいだ」
「じゃぁもしも僕らが君達を殺そうとしたら?」
「殺される前に貴様らを潰すまでだ」
「ま、そうだよね」

ヴィンセントは1つ頷き、それじゃぁさシエル、とまるで今話していたシエルよりも子供のように純粋に愉しそうな声で彼は続けた。


「ゲームしようか」




その言葉はいつも自分が言う言葉。
(あぁ…そうだな…僕は、)
それを耳にした瞬間、なぜか心の中の遠いどこかでやはり形はどうであれこの人の子供だと思った。


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【2012/01/10 16:56 】 | Text | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
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