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【2017/07/26 13:33 】 |
Light in the darkness…
暗いけど最終的にはハッピーエンド?




それはきっと悪魔が住まう闇よりも闇であろう。
常闇とも呼べるあの空間。それを人間が作り出しているのだから、もしかしたら悪魔よりも人間の方が恐ろしい生物なのかもしれない。

その空間には常闇を作り出している人間の声、声、声。
何かを崇めるような声であったり、狂ったように笑う声であったり、または何かを呼ぶ声であったり。
しかしその人間の他にもいる、小さな人間は無言を貫いていた。否、それをまだ人間と呼べるのかは定かではない。
檻の中に入れられた、憐れな小さな人形たちと言った方がこの現状は近いだろう。

己を守る為に意志を自ら潰した小さな人形。
その姿は酷く汚れ、息をしているにも関わらず瞳もすでに濁っている。
口を開けば透明な唾液が零れ落ち、涙の代わりに地上を濡らす。

それを見て。
常闇を作り出す人間達は、あぁ!なんと素晴らしい子羊なのだろう!と歓喜するなんて、理解出来ない。
いや、しようとも、したいとも思わない。

けれどその中に一人、いや、二人かもしれない。
小さな人形ではなく、小さな子供がそこにはいた。
他の人形と同じくらい傷や汚れを身に纏っているにも関わらず、その瞳にはまだ火が灯っている。

(あぁ、愚かですね)

この常闇の中で生きるには、または死を待っているあいだ一番賢明なのは己を殺すことだ。
そうしなければ、この常闇の中で生きていくことは不可能だろう。
だがこの子供はそれをせず、まだ“生きていた”

それを見た悪魔は、なんて素晴らしい子羊なんだろうなんてことは思わず。
ごく単純に、面白いと思った。その感情は、人間でいう歓喜に近いということに自身は気が付いていないけれど。

(今度はああいうのがいいですね)

無意識に唇を舐めた時に響いた濡れた音は、
血の滴る音に酷く似ていた。



― Light in the darkness… ―


その血の滴る音は、結局誰の血だったのだろう。
悪魔と契約をする運命となった彼の血なのかもしれないし、または…―――



執事として小さな主人に仕えるようになってから早一年。
人間としての生活に慣れたかと言われれば曖昧に頷くだけかもしれないが、人間を生活させるのに慣れたかと聞かれたら笑顔でYESと頷くだろう。
今や人間、あの小さな主人の好む味の料理や紅茶を出すことが完璧に出来るようなったのだから。
それでもまだ人間のことを全て理解したわけではない、いや、全て理解できる日は来ないだろう。
己は悪魔であり、人間ではないのだ。違う種類の者が完璧に相手を理解できることなんて絶対にない。
だが。

「坊ちゃん」

彼の好む味を知ったように、その人間を“知る”ことなら出来る。


名前を呼んだ先には、あの日に見た憐れな小さな子供が一人。
しかしすでにその身体は綺麗に清められ、立派な生地で作られた服で身を纏い、そしてあの頃よりも激しい炎を瞳に灯してた。
その炎は真っ赤に燃えるのではなく、冷たい蒼い炎であり、そしてそれは自身をも焼く炎。
憎悪という名の、人間の中で一番力を持つ炎だ。

あの小さな灯火のような火が、この炎に変わったのは。
契約をした瞬間。
彼が己の名は“シエル・ファントムハイヴだ”と言った瞬間から。

「・・・・」

しかしその彼は己の呼び声には答えることはなく、窓を覆う重たいカーテンを片手で開いた状態で月を見上げている。
彼が己に対して警戒心を抱いているのは知っている。
そして己もまた、その瞳で燃えている憎悪という名の炎で焼いてしまいたい存在の一人だということも。
けれどもう一度声を掛ける。

「坊ちゃん」
「・・・・」
「お身体が冷えますよ」
「・・・・」

無反応。
もしかしたら己の声は届いていないのかもしれない。
彼がこのように夜に寝かしつけた後にする行動は、その日に行った行為からなるもの。
イコール、その行為をした時は必ずと言っていいほど、悪魔で執事である己が寝かしつけた後、こっそりとベッドから出て、月を見上げるのだ。
その日に月がなければ暗い地上を。
その日に雨が降っているならば雨粒を。
何を見るにせよ、彼は必ずベッドから出てしまう。
きっと眠ることが出来ないのだろう。瞳を閉じても嫌なことしか思い出さないからなのか、それとも罪悪感に胸を痛ませるからなのかは分からないが、決して自分の中にある憎悪が、より多くの獲物を強請って落ち着かないからという理由ではないだろう。
彼の持つ憎悪はそんな躾けのなっていないものではない。
その魂と同様に気高くプライドを持った憎悪。
憎悪にそこまでの位を持たせるのもおかしな話だが、彼の持つ憎悪は他の人間とは違い、それほどまでに…その憎悪に行き届かせるくらいの気高さとプライドを持っているのだ。

その気高さとプライドを持った彼が今このような状況に陥っているのは本意ではないだろう。
それでもそうなってしまうほど彼は……。

それを知っているからか結局己は無反応を貫く主人に対して、いつもの台詞を吐いて部屋から出て行く。
この一年の間に何度も何度も口にした言葉。
それをこの彼はどう感じているのだろうか。


「ブランデーを混ぜた温かいミルクをお持ちします」

殺した相手の血の感触が消えるように。



この傷ついた彼は、どう感じているのだろうか…―――









初めて人を殺したのは、己が執事として仕え始めてから、そう経ってからではなかったような気がする。
崩れた屋敷をすぐに元通りにし、執務室の席についた彼は夜寝る間も惜しんで、ファントムハイヴ家の裏の世界について学び始めた。
裏社会の秩序。そして女王の番犬。
もうすでに当たり前の顔をしてこの場に立っているが、ここまで来るのに大変な苦労があったのだ。
しかしもうそれに気が付く人間はいないだろう。傍で見ていた己以外。

あの常闇にいた小さい子供がたったの一年で、ここまで顔を上げたなんて。
それは悪魔である自分でも驚きの速さであり、そして想像以上に素晴らしい魂の持ち主だと舌なめずりをしたのを憶えている。

それでも彼は、1つだけ変わることが出来ない部分があった。
それが。

“人を殺すこと”だった。
















『貴様は、このファントムハイヴ家の“名”を狙って来たのか』

屋敷に入ってきた人間を捕まえて差し出した時の主人の第一声はこうだった。

『殺されたと思っていた裏の秩序がまた“仕事”をしていると耳に入れて殺しに来たんだな?』
『貴様はファントムハイヴ家を狙っていたんだな?!』
『じゃぁ、貴様が、殺しに来たんだなッ!!』
『貴様が、殺したんだなッ!!!!』

それから彼は息継ぎをすることもなく、そして相手の話を聞くこともせずに言葉を連ねる。
その顔は真っ青で、震え、そして引き攣りながら“笑っていた”

『貴様が、貴様がっ…!!』
『落ち着いてください、坊ちゃん』

その姿に冷静に声を掛けられたのは、まだ彼を知らなかったからだろう。
己はそんな彼を瞳に映していたにも関わらず、動揺することも、ましてや心配することもなく、口元にただ執事としての笑みを張り付かせながら興奮状態である彼を制止させた。

『この鼠はただの小さなマフィアの一人。そこまでする力など無いかと』
『だが、だが、今来たということは、先代の頃にも来る可能性が』
『まぁ、無きにしも非ずですが…』

勘違いして後々責められるのも面倒なので仰いますが。
その頃の己はそう言葉を付けたし、辛辣に真実のみを伝える。

『その者を殺しても、契約は果たされませんので』
その者を殺した後もまだ終われませんよ。

その時の彼の顔を、己はあまり憶えていない。
その真実を鋭利な刃物として突きつけた己のことを今の自分は忘れてしまいたいからだろう。
己の言葉によって絶望した彼の表情も。

それでもその時の自分は、また彼に刃物を突き刺したのだ。

『ですがこの鼠を野放しにするのもどうかと思いますよ』
『ファントムハイヴ家の当主たるもの、歯向かった人間を許すなんて、そんな甘いことはぬかしませんよね?』
『裏社会の秩序たるもの、闇を背負わずどうします』
『さぁ坊ちゃん、お好きにどうぞ』

そして刃物に刺された彼は。

手にしていた引き金を、



初めて人間に向けて、



引いた。





(そのときの かれの ひとみは、


あの あわれな ちいさな にんぎょうと おなじ ひとみ だった)





その夜から。
彼は人を殺した日、必ずベッドから抜け出すようになった。
月の光を浴びて、ただ無言でその場に佇む。

初めて人を殺した日、すなわち初めてベッドから抜け出したのを見たわけだが。
ベッドから抜け出した気配がしたので、明日の仕事が滞っては困ると思って寝室に顔を覗かせた己は、初めてそれを見た時、嗤った。

扉を開けて見つけた瞬間は何をしているのか分からなかった。
近寄って現状を理解した次は、どうしてそうしているのかが分からなかった。
どうしてそうしているのか分かった次は、どうしてそうなってしまっているのかが分からなかった。
しかしどうしてそうなってしまっているのかが分かった瞬間。

『滑稽ですね』

嗤ったのだ、己は。


そんなにも憎悪で身を焼いているにも関わらず、結局は弱い。
人間と同じように、もしかしたら裏社会に住む人間以上に弱いだなんて、笑止なことだ。

その姿を見て、これで全てが終わるだろうと思っていた。
このまま復讐で身を焼きながらも、人の命を奪う勇気もなく、このまま堕ちる。
そう思っていたのだ。
けれど彼は次の朝、

『仕事だ』

何も無かったかのように、普通であった。


今ではもうそれが当たり前で、彼が人を殺した日には気配を探るまでもなく寝室へ足を運ぶ。
驚くことも、嗤うこともせずに。
そして決まって次の日は何もなかったような“フリ”をするので、彼の好きなスイーツを作ってやる。

それが今の“己”であり、“自分”だった。








それからまた早二年。


「坊ちゃん、お持ちしましたよ」

いつものようにブランデーを入れたミルクを持って寝室へ戻る。
そこには三年前よりも身長が伸びた彼の姿があるのに、三年前から変わらず窓の向こうを眺めている。
(眺めているというのには御幣があるかもしれないが)

「・・・・・」

相変わらずの彼に、自分は慣れた動作で持ったカップを彼の口に近づけ、傾ける。
重力に逆らうことはせず、そのまま中身は唇が薄く開いた彼の口の中へと流れていき、そしてそのまま喉の奥へと姿を消す。
それを何度も何度も、少しずつ少しずつ繰り返し、カップの中身が半分ほどになった頃にセバスチャンは小さなテーブルにカップを置いた。

本当は。
毎度こうなってしまう彼を放っておくことは出来た。
実際最初の頃は、次の日に仕事が滞る心配がないのだから、と放っておいた。
けれどなぜか気になって、朝陽が昇ってからベッドに彼がひとりでに戻るまで、黙って見ていたこともある。
他にも無理やりベッドへ入れたり、嫌味を言ってみたり、逆に優しい言葉を掛けてみたり。
しかし結局このブランデー入りミルクに落ち着いた。
その理由は、自分がそれでなんとなく落ち着くからなのかもしれない。

と、このミルクを飲ませ始めた当初は思っていた。
でも今ではその理由がおぼろげに分かっている。

飲み物を与えるのは、唯一彼がそれを受け入れるから。
たとえ声を掛けたって無反応で、傍にいたところで何にも変わらない。
けれど飲み物だけは、彼の口に入り、喉を通り、身体の中へと消えていく。
それが一番“自分が坊ちゃんの為に何かをしている”ということを実態的に表していたからだ。
ようするに。

傷ついている彼に何かをしてやりたいのだ、自分は。

気持ちの変化は、本当に少しずつ。
砂漠が潤うまでスポイトで水を一滴ずつ零すくらい、本当に少しずつだ。
あまりにも少しずつ過ぎて、いつからとか、どうしてだとか、そういう根本的なことは分からない。

ただ。
次の日に見る彼があまりにも“普通”で。
毎度こうなってしまうクセに彼は相変わらず裏社会の秩序という名を存在から表していて。
それなのに裏では、こんなにも弱くて、こんなにも傷ついていて。

「坊ちゃん…」

それが、こんなにも愛しい・・・。

瞳の中に燃え上がる炎の勢いは、衰えることもなく、自身のことまで焼いている。
その炎が消えたら、もうこんなにも傷つくことはなくなるのだろうか。いや、きっとその炎が消えたときは彼の存在自体も消えるときなのだろう。

彼の存在、取り巻く社会、女王の番犬、そして復讐。
それは全てが繋がっていて、かつ表裏一体の関係で、どれか1つでも欠けてしまったらきっと彼は生きていけない。
彼の存在はそれら全てがまとまった1つなのだ。
だからこそ、彼はこうやって窓辺に立って痛みを殺している。

そこまで分かっているのに。
そこまでやっと、“知った”のに。

「坊ちゃん、こちらを向いてください」

自分は何も出来ない。

「仕方が無いことでしょう」

彼がここにいるためには、殺すという行為は必要不可欠。
全て自分がこの手で殺してしまえばいいのに、彼はそれを許さない。

「貴方が傷つく必要など、どこにもないんです」

裏社会での殺し合いは食物連鎖みたいなもの。
この言葉も何度言ったことだろう。
けれど彼から反応が返って来たことはない。
普段は小さな嫌味でさえ噛み付くというのに。

「坊ちゃん、お願いですから、私の声を聞いてください」

私は今、貴方の隣にいるんですよ。
一人ではないのですよ。
お願いだから…―――

「貴方の存在に私を入れてくださいッ」

私は永遠に貴方の傍にいる。
三年前のような事件から守ってあげる。
決して独りぼっちなどにさせない。

だから。

自身をも焼く炎を消して。
痛みの根源である裏社会を捨てて。

復讐など、

「坊ちゃん―――」

月明かりに青白く輝く冷たくなってしまった頬に触れて、そして横から首を伸ばして。
少しだけ顎を上に上げさせて、親指で唇を撫でて。
自分の唇を重ねた。
それは三年間の中で初めての行為。

初めて触れた唇は柔らかいのに冷たくて、まるで彼の方が死人のようだ。
ただ重ねただけの自分の唇は、嗤ってしまうほど震えていて、これこそまさに滑稽だった。

(あぁ…そうか……)

あの日。
初めて出会ったあの日に。
無意識に唇を舐めた時に響いた濡れた音は、
血の滴る音は、

自分の血の滴る音だったのか。

悪魔と契約をする運命となった彼の血などではなく、こうなってしまう彼に傷つく自分の運命の、血の滴る音だったのだ。

(まったく、本当に……)

参ったものだと内心で自嘲しながら震えた唇を離せば、


「な、・・・で」


この時間初めて彼から掠れた声が聞こえた。

「ぼっちゃ、んっ」
「どう、してッ」

驚きに瞠目している自分の燕尾服の裾を弱々しく掴み、小さく震える。しかしその瞳には涙なんてものは欠片もなく、乾いた眼球と、憎悪だけ。
それでも、その瞳の中には自分の姿が映っていた。

「どうしてだッ!!」

悲痛な叫び声。
それは普段の彼からは聞くことがないほどの痛みが含まれた声で、自分の心臓が鷲掴みにされたような感覚に陥った。
その間も彼は何度も何度も、どうしてだ、と繰り返し叫ぶ。
一体何に対しての疑問なのだろうか。
口付けに対してなのか、今日殺してしまった行為についてなのか。
それとも、三年前に起こってしまった運命についてなのだろうか。

やっと彼の痛みを三年掛けて知ったところで、彼の全てについて理解できない。
だからその疑問は何に対してなのか、彼からの言葉がなければ分からないだろう。
けれど自分はあえて、答えを口にする。
その答えはきっと間違えているだろう。彼が聞きたかったのはこういうことではない。
それでも、聞いて欲しいから。
三年も掛けて知った、自分の気持ちを聞いて欲しいから。


「貴方が、好きだからですよ」


水の無い砂漠に花が咲いたほどの、奇跡を。





















「…という予定で宜しいですか」
「あぁ」

午後の予定が急遽変更ということで、執務室に呼び出され改めてその変更を確認する。
それに頷きつつ、少し長くなった髪を億劫そうにかき上げた。邪魔ならば切ればいいのにと思わなくも無いが、その鎖骨辺りまで伸びた髪型は、青年に近づいてきた彼に酷く似合っているので、結局音にすることなくその思いは消えていく。

そしてそんな様子を見つつ、冷たい心の奥で本日でしょうね、と呟く。
もうそろそろデットラインを超えた鼠が現れるだろうと予感していた、と言うよりも今までの裏社会の動きを見て学習したと言ってもいいだろう。
最近はこの主をナメてかかり、ワザとデットラインを超えてくる鼠が現れているのだ。
そんな頭の悪い鼠だ。放っておいても今は問題ないけれど、そこから新たな問題が生まれ、生命の危険、否、裏社会の秩序、さらには女王の番犬の名の生命が危ぶまれる可能性があるのだから、そんな些細な鼠でさえ駆除しなくてはいけない。
どんなに、この主人が嫌がろうと。

(このラインを超えさせない為に、あんなにも付箋をはって脅しているというのに)

警告を聞いていれば良かったものを…。
死が決まっている鼠よりも、その鼠を駆除する我が主に対して心が痛む。
けれど。

「セバス、チャン」

もうあの頃とは違うのだ。

「今日、駆除、する」
だから。
「今晩…」
「坊ちゃん、今晩抱いても宜しいですか?」

彼が全てを言う前にそう言葉を被せれば、彼はこれでもかというほどを顔を赤く染め、なッ!と眉を吊り上げた。
しかしそれを気にすることはなく、むしろ可愛らしい姿に微笑みながら一歩前に進み出て彼の顎を掬い取る。

「もしや恋人に対して“イヤ”なんていう返答はありませんよね?」
「お、まえッ!もう少しオブラートに包んで言うとか出来んのか!」
「これくらいで恥らうだなんて、本当に坊ちゃんはいつまで経っても初心ですよねぇ…」
「お前の方は少し恥じらいを持て!!」
「イヤですよ。恥らったらドロドロに溶かしてあげたい、とか、あそこを舐めたいとか言えなくなってしまうじゃないですか」
「黙れこの変態がッ……んっ」

真っ赤になって怒鳴る彼の口を悪戯に塞ぎ、舌までも滑り込ませる。
けれど口腔を一周するくらいで離してやれば、彼は少しだけ舌足らずな言葉で、ばか、と呟いた。
そんな言葉すら純粋に嬉しくて頭をそっと撫でれば、眉に皴を寄せつつも、頬を赤く染めてこちらを上目遣いで睨めつけてくる。
その瞳にはまだ憎悪の炎が燃えているけれど、自身を燃やすことは少なくなった。
少なくなったというよりも、彼と炎の間に自分を置くことを許してくれた。

結局。
自身をも焼く炎を消すこともなく、
痛みの根源である裏社会を捨てることもなく。

復讐など、やめることもなかったけれど。

それでも。

「早く、仕事を終わらせてしまいましょうね」

その瞳に自分を映して、自分の言葉に頷いてくれるから。
その痛みを分かち合うことを許してくれたから。

(私は永遠に貴方の傍にいますよ)

傷が、痛みが、少しでも和らぎますようにと、
小さな祈りを込めて…―――





End

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【2011/09/28 10:01 】 | Text | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
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