やめろ。
「坊ちゃん・・・」
やめろ。
「あぁ・・・シエル」
そんな声で囁くな。
そんな声で名前を呼ぶな。
そんな瞳で。
僕を見るな。
「や、めろ」
俯いて視線を別の方向へ投げるが、それを許さないとばかりに手で顎を掬い取られ、先ほどよりも近い位置で瞳と瞳がぶつかり合う。
その内に甘やかな情欲が見つかり、どうしたらいいか分からなくなる。
もう一度小さな声で反抗すれば、何も聞こえないような素振りをしたまま口を塞がれた。
「んっ・・・」
逃げようとしても頭を押さえられ退くことは出来ず、寧ろどんどん口付けは深くなっていく。
するりと舌が入り込み、口腔も犯される。
舌までも捕まり、絡められ、強く吸われ、身体に力も入らなくなる。
(だから、嫌だったんだ)
どこまでもどこまでも、侵してくる。
侵食して、心までも喰われてしまう。
ドロドロに溶かされて、本当の意味で堕とされてしまう。
どこか最後の抵抗と思い、そっと目を開けて見れば。
「ッ・・・!!」
真っ赤な瞳が此方に哂い掛けていた。
(あぁ・・くそッ)
そのまま視線をも絡ませたまま、シエルは腕をセバスチャンの首に回した。
End

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