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【2024/03/29 19:59 】 |
*029

先を歩いていると信じている貴方へ。




進む先は闇。
それを選んだのは自分。
そんな自分の手を引くのは、彼。

「どうされました、坊ちゃん」
「いや、なんでもない」

そんな彼は音を立てずに紅茶を注いだカップを目の前へと置く。
以前はこんな動作も出来なかったというのに――――あれから随分と月日が経ったものだ。

あれから。
あの日から彼は盾となり剣となり、己を勝利の道へと導いている。
彼がいなければもう自分は命を落としていたであろうということは数え切れぬほど。

――――もしも、なんて考えない。
彼がいないことを仮定したのならば、きっと己はこのような存在としてここにはいないだろうから。
もっともっと、別な人生を――――

「随分と物思いに耽っておられますね」
「・・・気になるか?」
「いえ、」

問いかけてきた赤い瞳に、
蒼い隻眼の瞳を細く笑ませて答えてやれば、
赤い瞳も同じように鈍い輝きを発してみせた。

「なんとなく想像はついておりますよ」
「ほぉ?」
「どうせいいことではないのでしょう」
「どうせとはなんだ、どうせとは」

だが、確かにいいことではない。
面白いことでもなければ、何かに役立つことでもない。
――――ならばなぜあのようなことを考えたのか。

答えは簡単だ。

「坊ちゃん」

悪魔は恭しく膝をつき、頭を下げる。
その姿だけは、あの頃と変わらない。
これからもずっとずっと、

「必ず勝利の王冠を貴方に――――」

変わってはならぬことだ。



「――――それでいい」

この悪魔は“この”魂が在れば、これからも己を勝利へと導くだろう。
勝利の王冠―――魂を手にするために。

(聞こえているぞ、悪魔が)

必ず勝利の王冠を貴方に。

否、

必ず美味な魂を私に――――


魂1つで釣れる悪魔
なんて滑稽か、
なんて愚者か、

なんて、

憐れか、


「それでいい、セバスチャン――――」




進む先は闇。
それを選んだのは自分。
そんな自分の手を引くのは、彼。

けれどそんな彼を引くのは、





1つの魂
(僕)

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【2012/06/27 21:12 】 | Little Box | 有り難いご意見(0)
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