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【2018/07/20 15:15 】 |
その傷の虚無感は。

Good-bye on today's day(現代パロ・幼馴染)




頭を撫でる手は、何の意味を持つのか。
優しいのか冷たいのか、今の僕にはもう分からなくて――――


「――――エル」


けれど、彼は笑う。
あの頃と違う笑みで。
そして、
あの頃と同じ笑みで。


「おいっ、シエル!」
「っ・・・!!」

ガシリと捕まれた肩にビクリと身体を震わせ、手の中にあったシャープペンを変な方向へと飛ばしてしまう。
しかしそれを視線で追うことはせず、肩を掴んだ相手へと顔を上げれば。

「どうしたんだシエル、授業は終わったぞ?」
「あ、あぁ」

そこには同じクラスのソーマが心配そうな表情を浮かべていた。
すでに教室はザワザワとざわめき、部活に行く者、帰宅する者が教室の扉をくぐっている。どうやら授業が終わってからもずっと僕は呆けていたらしい。
授業が終わってからかなりとまではいかないが、それなりの時は流れてしまったようだ。
(やばい・・・)
机の上にまだ開いたままの教科書とノートを閉じ、横に掛けてある鞄へと仕舞っていく。
早く学校から出なければ、アイツがきっと煩いだろう。

「・・・どうしたんだ?シエル」
「何がだ」

仕舞う動作は止めない。
それすら時間が惜しいからだ。いや、惜しいというのは御幣があるのかもしれないけれど。
それに、ソーマの言葉はあまり聞きたいとは思わないからだ。

「最近顔色が悪いぞ」
「・・・・」
「それに、一緒に帰ろうと言っても1人で帰ってしまうし・・・どこか急いでる様子だし」

コトリと、
落としたシャープペンが机の上に置かれる。
それにどこか反射的に僕は動きを止めてしまい、ソーマを見上げることはせずにシャープペンを見つめた。





『欲しければ、鍵を閉めましょうか』

あの日から、

『いい子ですね、シエル』

セバスチャンはずっと一緒にいる。


僕の家にいる時もあれば、アイツの家へ僕を連れて行く時もある――――そのどちらかだ。
たとえ仕事があっても、僕を離すことはしない。
暫く1人でいい子にしていてくださいね、と声を掛けてパソコンの画面に向かうのだ。
そして仕事が終われば―――――





「――――別に、なんでもない」

今さっきまで考えていたことを握りつぶすように言いながらシャープペンを掴み、すでに鞄に仕舞ってしまった筆箱を再び出すことはせずにそのまま鞄の中へと放り投げる。
そして雑な音を立てながら立ち上がった。

「シエル・・・」
「悪い、ソーマ。やっぱり暫く一緒には帰れない。ゲームもまた今度な」

少しは柔らかく笑えているだろうか。
コイツに微笑んだことなど今まできっと無いけれど、中学校からの付き合いでいつも一緒に帰っていたし、しかも無理やりにだが一緒にゲームをしたりもしていた仲だ。それなりに仲良くしていたんだと思う。
それが急に一緒に帰らなくなったら誰でもいい気はしないだろう。
特にソーマは馬鹿だけれど何となく察しのいい部分があるから尚更。
(だからコイツの言葉は聞きたくないんだ)
それでも多少の申し訳なさは感じるから、少しでも優しく言えたらいい。

「じゃぁな」

そのまま教室を後にする。

遠くから聞こえる楽器の音、
廊下を走るバレー部の掛け声、
雑談をする女子生徒の話し声、

その中で、

「大丈夫か?」

ソーマの声が背中を叩いた。



けれど僕は、


振り返ることも出来なかった。





廊下を通って生徒玄関へ。
上靴から外靴に履き替えて、正面玄関。
そのまま正門を抜けて、右へと曲がり、あまり人が通らない裏路地へ。
そこには一台の黒い車。





(大丈夫か、なんて)





僕も知りたい。





「おかえりなさい、シエル」
「・・・ただいま、セバスチャン」

車の前には、セバスチャンが立って待っていた。
柔らかく弧を描く口元を、きっと僕も描いているだろう。
もうコイツの迎えにも慣れたものだ。

「疲れたでしょう、乗ってください」
「あぁ」

エスコートするように助手席の扉を開け、中へと進めるのに僕も拒絶することなくそのまま乗り込む。
そして外から扉を閉めると、セバスチャンもすぐさま隣の運転席へと。
その時に揺れる車体は、なんとなく二人分の体重が乗ったときのベッドの揺れと酷く似ているような気がして、シートベルトを閉めた自分の手の平を無意識に握り締めた。

「・・・・」
「・・・セバスチャン?」

黙ったままのセバスチャンに僕は声を掛ける。
いつもならばこのままどちらかの家へと帰るのに、セバスチャンは今だにシートベルトも締めていない。
一体どうしたというのか。
するとセバスチャンはまっすぐ前を向いたまま口を開いた。

「今日は随分と遅かったようですが、何かあったのですか」
「あ、あぁ・・・遅くなって悪かった」

先生の授業が長引いたんだ。
咄嗟にそう答えた。
早くなる鼓動を抑えるように、無意識に握り締めていた手をより強く握り締める。
それをどう捉えたのかは分からないが、セバスチャンは先ほどと同じように口元に弧を描いて、優しく「嘘でしょう」と囁くように言う。

「他の生徒の方は下校されておりましたよ」
「でも、僕のクラスは・・・」
「同じクラスのエリザベスさんもお見かけしました」
どうやらフェンシング部はお休みだったようですね。

相手の言葉にザワリと背筋に嫌な感覚が這い上がった。

「怒って、るのか」

まるで自分自身に確認するかのように言う僕は何なんだろうか――――いや、ちゃんと答えが欲しいんだ。
セバスチャンがどう思っているのか。
本当は何を、

「嘘をついたことには怒っていますよ」

何を考えているのか。

「っんぅ!!」

こちらを向いたかと思えば、一気に距離が縮まり唇を塞がれる。
たとえ人通りが少ない裏路地であったとしても、ここは外だ。しかも前からこの状態は丸見えな状態。
やめろ!と腕を伸ばしてセバスチャンの背のワイシャツを引っ張るが、やはりやめることはしない。
口付けられた時からそれは分かっていたことだ。

「ふ、う・・・せ、ばす、ぅン」

一瞬だけ息を吸う間を与えられ、けれどすぐに再び塞がれる。
まるで苛立ちをぶつけるようなそれは、もう何度も経験したものだ。


――――もう、何でとは思わない。
疑問に思うのは疲れたから。
この現実を正面から受け止めるのは辛いから。

(セバス、チャン)

引っ張っていたワイシャツを今度は強く握り締める。
きっとこの背はまだ新しい傷がいくつもあるだろう。昨晩もまた爪を立ててやったから。

それでもセバスチャンは何も言わない。
まるでその傷など存在していないとでもいうかのように、その傷に触れようとしない。
“痛いですよ”くらい、言ったっていいのに。

もしも、
もしもその傷が甘い意味を持つものだったら、
セバスチャンは何か言ったのだろうか。

この口付けも、
繰り返されている身体を重ねることも、
甘い意味を持つものだったら、

―――大丈夫か?―――

大丈夫と、
笑って答えられたのだろうか。



「何を、誰を考えているんですかシエル」
「・・・・」

やっと離れた、否、離れていってしまった唇。
まだ互いの間には銀の糸が引いているというのに、その言葉の冷たさ。

(お前のことだ、セバスチャン)

ずっと好きだったのもお前だ。
いつだって考えるのはお前のことだ。
今だって好きなのは、

「秘密、だ」

お前なのに。

「意地悪な方ですね」
「慰めてやってるのに、か?」
「――――そうですね」

頷くセバスチャンの顔が歪む理由も分からずに、その答えを聞いた僕は微笑んでみせる。
だってそうしなければ、泣いてしまいそうだから――――




(あぁ、)


僕が学校から出たのが遅れた理由を問う訳が、
嫉妬という甘い意味を持つものだったら、


こうやって、


また背中に爪を立てることは無かったのかな。








(頼むから、痛いと言って)


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【2012/07/05 21:31 】 | Series | 有り難いご意見(0)
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