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【2017/05/24 09:36 】 |
かつての宝石は真っ暗の画面の中に落ちたのでした。
Good-bye on today's day(現代パロ・幼馴染)





いま目の前にいる人が好きなひとだなんて信じたくない。
姿はずっとずっと好きだったひとなのに、それなのにこの人がそのひとだなんて思いたくない。

見つめてきている瞳は確かに彼特有の赤い瞳だ。
掴まれている手首から伝わる体温は確かに彼特有の低い体温だ。
名前を呼ぶ声も確かにずっと好きだった彼の声だ。

けれど――――

「さぁシエル」
「・・・離せ、セバスチャン」

こんな彼は、知らない。

扉が開き、彼と僕の世界が繋がる。
僕の世界を守る為の壁はもう、きっとどこにも存在しないだろう。否、存在出来ないだろう。
それを裸足の上に落ちた涙が語っていた。

世界が繋がるとセバスチャンは世界を繋ぐ仮初の物を切り、そして僕の世界へと侵入してくる。
ビクリと身体が震え、一歩後ろに下がってしまうがセバスチャンは何も見ていない、知らないとでも言うようにそのまま手を伸ばして僕の手首を捕まえた――――取ったのではなく、捕まえたのだ。

「いきなり冷たいですね」
「それはこっちの、台詞だろう」

まだ僕の片方の手の中には世界を繋ぐ仮初の物・・・携帯電話があり、その耳を当てる部分からは「プープープー、」と冷たい電子音が声を上げている。それが嫌に大きく聞こえた。

「家に入った瞬間、僕の手首を取るなんて・・・前のセバスチャンはしなかった」
「前の、ですか。その表現はまるで昔と今と、私が別人のような言い方ですね」
「だってっ・・・」
「変わったのはシエルの方でしょう?」
「は?」

言われた言葉に僕は眉を寄せた。
変わったのは僕だって?違うだろう。
変わったのはセバスチャンだ。
昔はもっと優しくて、一緒に遊んでくれて、けれどいつからか相手にしてもらえなくなって、かと思えば、こんなっ。
言ってしまいたいような、けれど言っちゃいけないような言葉がポンポン頭の中に生まれ、僕は口をパクパクと開閉することしか出来ない。
その赤い瞳に映る僕はきっと随分と間抜けだろう。
けれどいつものセバスチャンだったら、そんな僕を見て「意地悪をしてしまいましたね」と苦笑しながら頭を撫でてくれるのに。

「裏切り者、ですよね」
「―――――ぇ?」

放たれた言葉は、そんな過去など無かったかのような冷たい響きを宿していて。

「ずっとずっと私が傍にいたというのに、いつの間にか別の人を見ていたなんて」
「セバス、チャン?」
「けれど、もう安心してください」

微笑む顔も、今じゃもう――――

「忘れさせて(慰めて)あげますよ」

温かさなんて、どこにもない。

「んンっ!!」

意味が分からなくて呆然としていると勢いよく捕まれた手首を引かれ、そのままセバスチャンの腕の中へと抱きしめられる。そして昨晩嫌というほど知ったコイツの唇の感触が襲い掛かってきた。
手首を引かれた衝撃で、手の中にあった携帯電話が玄関のコンクリートへと落ちる。
カツン、と軽いとも重いともつかない音を立てたそれは、いつの間にか電子音を鳴らすことを止め、この歪と化してしまった世界から先に逃げ出してしまったかのようだ。

「ん、んン、ふぅ…っ」

口付けという行為を知った僕は拒絶するように唇で蓋をするも、簡単にそれは舌で抉じ開けられ、それどころか僕が奥へと逃げていた舌をも引きずり出してしまう。
ならばと、携帯が消え去った手で思い切りセバスチャンの肩をドンドンと叩くが、
「ん、ぁ、セバっ!」

その手もセバスチャンの手で絡め取られ、指と指を交差するように掴んだかと思えば、そのままワルツでもするかのように方向転換をして扉に僕の身体を押し付けた。

「っ、ふっ・・・はっ、うン・・・ぷはっ」
「、シエル」
「セバス、チャンっ」

唇が開放されたかと思えば、何かを求めるように舌を唇の上へと這わせていく。
その間も赤い瞳は僕を見つめたままで、その瞳には僕の瞳が映っていて、赤と蒼が混じった妙な色を生み出していた。

「シエル、鍵を閉めてください」
「やっ!」

顔を逸らし抵抗する。
鍵を閉めた先を知っている僕は、もう嫌だという意志を首を左右に振ることで示してみせるが、それを許すようなセバスチャンはもうここにはいない。

あの頃のセバスチャンはどこに行ったのか。
それともずっと――――?

「どうして、こんなっ」
「慰めると言ったでしょう。何度言わせるんですか」
「でもっ!!」

ボロリと涙が零れた。

「お前は、ずっと僕が、嫌いだったのか?」
「どうしてそうなるんですか」
「だって、こんな、慰めなんて」

おかしいだろう。
そう、小さく呟いた。

“慰めろ”という言葉から“好きだった人を忘れさせる”ということに結びつけるのは話しが飛びすぎていることは、百歩譲ったとしても、こんな慰め方はいらない。

相手の同情だって、
相手の怒りだって、
相手の狂気だって、

欲しくない。
いらない。
全部ぜんぶ忘れた筈なのに。

長い長い片思いは終わった筈なのに。

いま目の前で好きなひとに口付けされて、
けれど僕の好きなひとは以前とは全然違う様子で、

意味が分からない、
もうワケが分からない、

僕はただ、


『セバスチャンっ』
『シエル、制服のままベッドで横になったら皴になるといつも言っているでしょう』
『そしたらお前がアイロンを掛けてくれるんだろ?』
『まったく・・・高くつきますよ』
『ぼったくり』
『・・・シエル?』
『じょ、冗談だ』


ただ、


『なぁセバスチャン』
『どうしましたシエル』
『いつも家に来て、その、邪魔じゃないか?』
『・・・急にどうしたんですか』
『いや、お前、仕事・・・就いただろ?だから・・・』
『そんなことを気にしていたのですか』
『・・・・』
『馬鹿ですねぇ。シエルが家に来てくれなくなってしまったら、私がシエルの家に行きますよ』
『・・・それじゃぁ意味がないだろう』
『だから、シエルが家に来てくれてればいいんです』
『全然変わってないだろう』
『全てを口にしないと伝わりませんか?』
『・・・明日も、遊びに来る』
『そうしてください』


ただっ、


『シエル』
『なんだ?』
『具合が悪いのなら、なぜ学校を早退してこなかったのですか』
『・・・何の話だ』
『誤魔化しても無駄ですよ。何年の付き合いだと思っているんですか』
『・・・・』
『辛い時は辛いと、私には言って下さい』
『セバス、チャン』


ただっ!!!


『セバスチャン』
『シエル』


あの頃みたいに、一緒に居たかったんだ。
いつの間にか僕に背を向けるようになってしまったセバスチャンに、
もう一度、あの頃みたいに仲良くして欲しかったんだ。

一緒に話しをして、
馬鹿みたいなことで盛り上がって、
喧嘩もして、でも仲直りもして、
泣いたときは頭を撫でてくれて、
寂しいときは抱きしめてくれて、
名前を呼べば、笑顔で振り返ってくれて、


(昔はもっと自分を構ってくれていた。)
(遊びに来れば笑顔を見せたし、弟のように甘えれば苦笑しつつも応えてくれた。)
(けれど今は家に遊びに来ることに文句を言うことはないが、完全に相手にしてもらえなくなった。)
(話しかければ返事はするが、先ほどのようなことをしても、何も言わない何もしない。)
(一度自分が何かしたのかと聞けば、綺麗な微笑みを浮かべながら「何も」と、冷たい一言で返され。)
(それ以来、相手の接し方に疑問を抱いても聞けなくなってしまった。)


あの頃みたいに、一緒に居て欲しかったんだ。


それがどうして、こんなことになってしまったのか。
分からない。
分からないんだセバスチャン。




「おかしい、ですか」

暫くの間。
その後に浮かべた苦笑は、僕の中で宝石のように輝いている思い出と重なった。

「っ・・・・」

ただそれだけでもう嬉しくて、零れていた涙がより溢れ出し、ボロボロと零れ落ちていく。

「セバス、チャっ」
「あぁもう、そんなに泣いて」

本当に貴方は泣き出すと途端に泣き虫になりますね。
困ったように苦笑したままセバスチャンは拘束していた両方の手を離し、頬を包み込むようにしながら親指で涙を拭ってくれる。
久しぶりの感触。
確かに昨晩、この手は沢山この身体に触れた。
今まで触れられたことが無かったところまで触れたのだ。
それと同様、その手はまるで別人かのような、初めて僕に触れた手のような感触だった。
けれどこの手は、あの頃の手だ。

(やっぱり、)

好きだ。
コイツが。
コイツのことが。

久しぶりに感じたセバスチャンに、僕の心は悲しいほどに震え上がる。

「セバスチャン、」
「シエル」

扉に縫い付けられていた手を今度は自らセバスチャンへと伸ばし、相手を求める。
僕が泣いたときの恒例行事のようなもの。

コイツの温もりが恋しくて、
コイツの愛情が欲しくて、
抱きしめて、欲しくて。

けれどやはりそれはもう、

「欲しければ、鍵を閉めましょうか」

“あの頃”なのだ。

伸びた腕が、求めた腕が空を切る。
勢いで前のめりになった身体は自然と顔を玄関のコンクリートの方へと向かせて、先ほど落とした携帯電話を視界に映した。
この世界から先に逃げ出した携帯電話の画面は真っ暗で、何も表示していない状態。
真っ暗なそれが止った思考と一致し、まるでその携帯電話こそが僕であるかのような錯覚に陥った。
いや、むしろそうなってしまいたかった。

ギリリと奥歯を噛み締める。
そして空を切った腕を思い切り後ろへと、物を放り投げるかのように振り、そして。

――――ガチャン

心が崩れた音が響き渡った。

どう足掻いても、
やっぱり、

好きなのだ。
コイツが。
コイツのことが。

(もう、いいや)

なんだっていい。
もう知らない。

もう、

「いい子ですね、シエル」

疲れた。








空を切った腕。
今度こそその腕は満たされ、
それと同時に抱きしめられた身体は、
驚くほど冷たくて。

だから、

涙を流したまま笑みを浮かべて、
僕を抱きしめた好きなひとの背中に、

血が滲むほど、

爪を立てた。






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【2012/06/17 00:48 】 | Series | 有り難いご意見(0)
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