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【2024/05/02 12:28 】 |
やさしくてあまい純粋な凶器(子供)
子供の貴方。
嫉妬(リクエスト)




会議が終わったのは5分前。
「それでは宜しくお願いします」と声を掛け合い、皆が席を立つ。
そこにはもちろん社長の姿もあり、その姿はどこから見ても子供だが、共に仕事をしたことのある者だったら彼のことを子供扱い出来る者はいないだろう―――それほど彼の仕事能力は長けているのだ。

それぞれの手には今日の会議で使われた書類があり、みな年老いた使用人が開けた扉をくぐる。
その際に社長に一礼することは忘れない。
だが今日は珍しく社長も席を立ち、皆の後ろへと続いた。
「たまには玄関までお見送りしますよ」と、人懐こい笑顔を浮かべながら。

あまり社長と仕事以外の話はしたことがない。
なぜならこの社長との関係は仕事以外の、それ以上もそれ以下も無いからだ。
それでも、一度でもいいからお話をしてみたいと思う連中は沢山いた。
だから社長のその言葉に内心喜んだ者は沢山いただろう。
――――しかし。

「あれ、社長?」


皆が目を離した一瞬に、

彼の姿は消えていた。









「ん、はっ・・・ふぅ」

その5分後。
1つの部屋に水音が響き渡る。
そこには先ほどまで他の経営者たちと話していた筈の社長・・・シエル・ファントムハイヴの姿があった。

「こら、セバス、チャっ…んン!」

自分の腕を己の頭よりも高い位置の所に縫い付けられ、それだけでも逃げられるわけがないというのに、相手は足の間に太腿を入れ、浮いた状態にさせられていた。
シエルは唯一自由だった口でその相手の名前を紡ぎ制止を促すけれど、すぐにそこも塞がれてしまう。

「んっ・・・ふ・・・ッ・・・」

まるで唇を、いや、シエルの全てを喰らおうとしているかのような口付けに、シエルは必死に酸素を吸おうと試みるが、それすらも許さないとばかりに彼の唇は、舌は執拗に絡んでくる。

なぜか閉められているカーテンのせいで部屋の中は薄暗く、この部屋には物音1つ届かない。
どうやら自分が一緒にいた経営者たちは田中に連れられてそのまま玄関へと行ったらしい。
聞こえてくるのは今口付けられていると嫌でも意識してしまう水音と、荒い呼吸。
(こ、の・・・っ)
白く霞んでしまいそうな意識を必死に保ち、怒りの色を宿した瞳をそっと開けば。

「・・・・ッ」

それ以上に怒りの色に染め上げた瞳とぶつかった。
その瞬間に不本意で座ってしまっている太腿が意図を持って揺れ、反射的に声を上げてしまうが、その声は相手の唇の中だけで響き渡り、外に漏れ出ることはなかった。
だが、声を上げてしまったということは紛れも無い真実で、カーッと頬を赤く染めれば、面白そうにその怒りに染められた瞳が細められる。
(この悪魔がっ)
その意地悪な姿に内心で罵倒するが、その声も外に漏れ出ることなく、そして唇の中で響くこともなく消えてしまう・・・――――それでもきっとこの悪魔、セバスチャンはその声をしっかりと感じ取っているだろう。

もういい加減にしろと頬を染めたまま訴えかけるが、嫌だと彼は甘く舌を噛んでくる。
それにシエルも相手の舌を噛んでやれば、相手は嬉しそうに舌を強く吸ってきた。

(・・・馬鹿が)

いきなりこの部屋に連れ込まれて無理やりこんな体勢にされ、口付けられた怒りはだんだんと薄れ、ついに意識も甘く痺れてくる。
・・・――――それは、この原因が彼の嫉妬からだと知っているからだろう。

仕事であるにも関わらず、燃えるほどの嫉妬でその身を焼いてくれるのは悪い気分ではない。
それに付き合わされる自身には苦笑せざるおえないが、それでもやはり悪い気分ではない。

(わかってるに決まっているだろうが)

自分が誰のものか。
――――貴様にしか僕をやらないに決まっているだろうが。

その想いが瞳から伝わったのだろうか、高い位置で壁に縫い付けられていた手が開放され自由になる。
もう抵抗する気もないシエルはその自由になった腕でセバスチャンの首に巻き付き、安心させるかのようにその黒い髪に指を差し込めば、彼は嬉しそうに腕を拘束していた腕でシエルの身体を強く抱きしめた。

本当に世話の焼ける悪魔だ。

シエルは内心でまんざらでもないため息を吐きつつ、

(いい加減、息くらい吸わせろっ)

本当の意味で意識が白く霞み始めたので、
その髪の毛を強く引っ張ったのだった。





やさしくてあまい純粋な凶器



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【2011/12/07 21:46 】 | Project | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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