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【2017/10/18 18:04 】 |
鍵のない檻(大人)
大人の貴方。
鍵のない檻(リクエスト)




新聞を読んでいた彼の瞳が大きく見開き、次の瞬間にはもう口を開いていた。

「セバスチャン」
「はい」
「3日間部屋から出てくるな」

パサリと読んでいた新聞をテーブルの上に置き、こちらに視線を向けることもなく紅茶を口に運んでいく。
執事である己がその姿に何かを言えるわけもなく、

「御意」

彼の言葉に頭を下げ、深く一礼をした。







真夜中の時間。
月明かりが窓から差し込み、明かりをつけていない部屋を淡く照らしている。
シエルの命令通りセバスチャンは一度も外に出ることなく与えられている部屋に身を置いていた。
一度も食事が運ばれることもなく、勿論シエルの顔すら見ていない。
きっと3日間も顔を合わせないのは初めてだろう――――彼の命令なのだから我慢は出来るが、部屋に閉じ込められるというよりも彼に逢えないこの3日間は永遠のように長かった。
だが命令された期間は今日で終わり。明日になればやっと彼に逢える・・・いや。
――――もうすぐで逢えるだろう。

コンコン、

どちらかというと控えめなノック音が部屋に響き渡る。
それに口角を吊り上げてしまうのは仕方の無いことだろう。
しかしそんな表情をしていたら彼の怒りをより買ってしまうだろうから、必死にその笑みを仕舞って、何気ない声音で、はい、と返事を返す。
すると扉は音を立てて開き、3日間ずっと・・・今も考えていた彼の姿があった。

「お久しぶりですね、坊ちゃん」
「・・・たかが3日だろうが」

苛立ちの表情をしている彼の顔でさえ見る事が出来たことが、聞く事が出来た声が嬉しくて、無意識に拳を握る。
高鳴ってしまう鼓動を押さえつけるようにバレぬよう息を長く吐き、少しでも気持ちを落ち着かせようとするが、それに気が付くことなくシエルは後ろ手で扉を閉め、元々手にしていた新聞紙をセバスチャンへと投げつけた。
紙特有の音を立てながらぶつかったソレを手にし、彼が怒っている理由であろう紙面を広げる。
そこには、とある殺人事件の一面が。

「貴様の仕業だろう」
「・・・・」
「あの夜・・・夜会の帰りに僕を馬車に乗せた後、一瞬だけ姿を消したな」
その時に殺したのか。

一面には
“切り裂きジャック、再びか?!”という煽り文が飾られており、殺された相手の写真が載せられていた。
今その顔を見ても胸の内に黒いモヤが広がり、ギリリと奥歯を噛み締めてしまう。
殺しても、殺しても足りない。

「なぜ殺した」
「彼に生きていて欲しかったと?」
「質問しているのは僕だ。貴様は質問に答えろ」

月明かりに照らされた瞳は冷たく輝き、蒼い光がまるで氷の刃のようだ。
その瞳はあの日、夜会の日にも見た。




その夜会はいつもお世話になっている相手からの招待で出席したもので。
そこで“あの相手”と出会ったのだ。

『いやぁ~・・・噂は耳にしておりましたが、ここまで美しい伯爵だとはッ』
『美しいだなんて、褒めすぎですよ』

いきなり肩を抱き寄せてきた相手にシエルは苦笑しつつ、軽くその手から逃れようとする。
そういうことを何度もされてきた彼は上手くその腕から逃れる術を知っている―――だからセバスチャンも少し離れたところから苛立ちを押さえるのみで留めていたのだが。

『これは小さい頃は可愛らしい姿だったのでしょうなぁ』
『は、』
『いやいや、そういう子供は子羊にされやすい』
もしかして、経験がおありですかな?

相手からその台詞が口から出てきた瞬間、シエルの顔色は変わり目を見開いた。
その一瞬の隙を相手は逃さずに自分の方に引き寄せ、そして――――

『でも今ここにおられるということは、あの噂の方はデマだったようですね?』

焼印が刻まれている部位を服の上からそっと撫でた。
瞬間、シエルの瞳は懐かしい復讐の炎の色を瞳に宿し、ギリリと奥歯を噛み締めて。

『どのような噂かは分かりませんが、これ以上その褒める口を開いては火傷しますよ』
『伯爵に火傷させられるなら喜んで、と言いたいところですが、今日はこのあと人と逢う約束がありましてな』

いやぁ残念、残念。
そんなことを言いながら相手はシエルから離れ、酷く残念そうに頭を掻いていた。

『坊ちゃん』
『いい、セバスチャン』

こちらが名前を呼んだ理由を理解している彼は首を横に振り、制止させる。

―――そう、相手はシエルがあの下等な人間共の手によって酷い扱いを受けたことを知っているのだ。
いや、知っているというのは御幣があるだろう。
きっと相手は黒ミサに興味がある人間であり、シエルの復讐の切欠である出来事を風に流れてきた噂によって聞いたのだろう。
だからそれを真実かどうかは知らず、そしてアレに加担していたわけでもない―――あの場にいたのならば、自分の通行料ですでに命は無いだろうし、仕組んだ人間なのならば、それこそ彼はもう死んだ存在だ―――

それでも、噂だとしてもソレ関連を知っている相手が憎いだろう。
たとえ復讐が終わったとしても、彼の心の傷が完璧に癒えるわけではない。

けれど彼は、

『いいんだ、セバスチャン』

蒼い瞳を冷たく輝かせながらそう言った。
それが自分には、



「許せなかったんですよ」

シエルに触れたことも許せないが、それ以上に。

「貴方を傷つけたことが」
「・・・たかがそれだけで殺したのか」
「たかが?貴方が“たかが”と仰いますか」

シエルの言葉にセバスチャンは嘲るような笑みを浮かべる。

「アレは貴方の傷口を刃物で抉ったんです。やっと終わったことを・・・それを許せるほど私は優しくないですよ」
「・・・・」
「たとえ貴方が許せても私は許せなかった・・・ただ、それだけです」

その想いは、愛する者の為を想うが故にかもしれないけれど、
きっとこの想い・・・愛は人間にとって重たいものなのだろう。
だが自分は悪魔であり、結局は人間のマナーも、基準も、真に理解することなど到底できなくて。

「きっとまた同じようなことがあれば私は殺しますよ」
「・・・僕が殺すなと命令をしてもか」
「・・・、きっと」

きっと殺してしまう。
そう呟くように言うとシエルは呆れたようにため息をつき、そして。

「貴様は何も分かっていないな」
「っ?!」

グイとセバスチャンのネクタイを掴み、無理やり自分の顔の位置まで引き寄せる。
目の前まで迫った彼の瞳は“あの頃”と同じもので、なぜかゾクリと背筋が震えた。

「じゃぁ聞くが、僕の復讐はすでに終わった筈だな?悪魔」
「・・・はい」
「ならどうして貴様はここに居て、僕はここに在る(いる)」
「・・・私が貴方を愛しているからです」
「ということは、復讐するためにいるわけではないだろう?」

いいかセバスチャン、よく聞け。
シエルはセバスチャンのネクタイを引っ張ったままの状態で肩を押し、セバスチャンをベッドへと座らせる。そしてシエルはセバスチャンが座った足と足の隙間にあるベッドに片足で立ち膝をして、セバスチャンを見下した。

「もう何も考えるな。貴様はあくまで僕の傍にいればいい。僕を傷つけた?はっ、嗤わせる。それを決めるのは貴様じゃない、僕だろうが。復讐なんていう終わったことをいつまでもその心に留めておくな。貴様の心にあるのは僕の存在だけでいい」
貴様は僕だけのものだろう?
「坊ちゃ、」
「今度僕の知らぬところで何かしてみろ。僕の知らない行動を取ってみろ。その時は――――」

ネクタイを掴んでいない方の手でシエルは拳銃の形を作り、セバスチャンの額に当てて、


「僕が貴様を殺してやる」


悪魔の愛と同じくらい
重たい鉛(愛)を、
発砲した。





鍵のない檻

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【2011/12/24 18:38 】 | Project | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
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