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【2024/04/25 06:17 】 |
S×Sパニック
【相手の香り】
Spicyセバス×Spicyシエル



あたまがいたい
いらいらする
むかむかする

ぜんぶぜんぶ こいつのせいだ
なにもかも  こいつのせいだ

けれど
それをおもっているじぶんじしんにも

いらいらする




どうしてこんなことになった。
一体どういうことだ。
シエルは馬車に揺られながら腕を組む。
その顔は苛立ちの色に染まっていることを鏡に見なくても分かっていた。

今は自分の大嫌いな夜会を終え、屋敷に帰る途中。
いつもならば開放感から少しは気分が良くなるというのに、今日はよくなるどころかいつもよりも悪くなる一方だ。
その理由は、今自分に着せられている執事のコートにある。

「・・・・」

しかしシエルはその執事を視界に入れることも無く、ずっと外を眺めていた。
視界に入れるなんて問題外。この狭い空間に一緒にいるだけでも嫌だというのに。
早く屋敷に着けばいい。そしたらこんなコートは燃やしてしまおう。
きっとセバスチャンは自分の今の心境に気が付いているのだろう。
このコートを羽織らされ、香りが鼻腔を擽った時、クスリと笑った声が耳に届いた気がしたのだ。
その時に脱いでしまえば良かったと後悔しても後の祭り。今更どうすることも出来ない。
もしセバスチャンがこのコートを羽織らせたのが本当に執事としての心遣いならば、今からでも脱ぐと言えるのに。
ため息をつきたくなるのを必死に我慢して、シエルは目を閉じた。


「お疲れ様でした」
「あぁ」

永遠の時間を過ごしたと思える馬車を降り、早足で屋敷の中へと入って行く。
そんな様子を見ながらも嫌味の1つ言わないセバスチャンを気味悪く思いながら、寝室の方へと足を進めた。
そこでコートを脱いで、服も着替えてしまおう。
すぐバスに入るのだから二度手間かもしれないが、今は何でもいいから早くこの香りから開放されたい。
そしてその後この“汚れ”を洗い落とそう。
シエルは内心で一人頷いて、後ろに立っているセバスチャンの様子など気にしていなかった。

「坊ちゃん」

掛けられた声にピクリと反応する。

「何だ」

けれど進める足を緩めるつもりはなく、そのまま寝室へと進めて行く。

「夜風は冷たくありませんでしたか?」
「あぁ」
「それはようございました」

なんだ、何を企んでいる。
背後にある気配を警戒し始める。先ほどから妙に静かだと思っていたが、どうやらこのまま事を終わらせるつもりはないらしい。
どこかで自分の本能が警報を鳴らしている。
けれどその警報の鳴り所が分からないので、何を注意したらいいのかも分からない。
寝室も目の前まで迫っている。

「先ほどから随分と急いでいるようですが、何かございましたか」
「いや。ただ今日は疲れたから早く休みたいだけだ」

ドクリと鼓動が跳ねたが、それを声にも顔にも出さずに返す。
嘘はついていない、少し誤魔化しているだけ。
それなのになぜだろう、酷く落ち着かない。
まるで、何かに追い込まれている感じがする。
コツリ、コツリ。
自分の足音も屋敷の廊下に響いている筈なのに、なぜか後ろにいるセバスチャンの足音の方がやけに大きく感じられた。
それは、今自分が香りに包まれた状態だからだろうか。
シエルは舌打ちをし、足を止める。

目の前には寝室への入り口。

自分と同じように悪魔も歩みを止め、足音も消え去る。
けれどそれは消えたというよりも、影として姿を潜ませたという表現の方が正しいような気がする。
そう考えてしまうくらい。

今のこの雰囲気はおかしい。

「・・・どうされました、坊ちゃん」
寝室に着きましたよ?

いつもなら自分の前を歩いて扉を開ける執事。
それが今日はなぜか後ろにいる。
僕が急いだからか?
いや、そういうことじゃない。

「坊ちゃん・・・?」

寝室に着いたというのに、執事は扉を開けようとはしない。
部屋に着いたと言ったのは、この執事本人だというのに。
この執事は・・・この悪魔は、

この僕に寝室の扉を開けさせようとしている。

「ゲームセットですか?」

ドロリとしたような声音が耳元で聞こえ、背筋が震え上がった。
それは恐怖からではないことは、嫌というほど分かっている。
ふと視界に後ろから伸ばされた腕が映り、それを目で辿れば、白い手袋を嵌めた手が目の前の扉のドアノブを掴んでいるところだった。
その手は止める間もなくドアノブを回し、ギイと音を立てて扉を開く。
シエルの目の前には暗い部屋が広がった。

「セバス、チャン」
「さぁ、坊ちゃん」
そのコートを脱ぎたいのでしょう?

そっと腰周りに手を回され、逃げるように一歩踏み出せば片方の足が寝室へと入ってしまった。
するとまるで主人の帰りを待っていたようにベッド近くの燭台だけに火が灯り、そこだけを明るく照らす。
その光景に、シエルは頬が赤くなったのを感じた。

「馬車の中でも随分と可愛らしかったですよ」

セバスチャンはシエルのことなどお構いなしに耳元で喋り続ける。

「私に触れて欲しいという欲望を必死に我慢なさっているお姿は、いつもの貴方からは考えられないものでしたね。だから貴方も口にすることも出来ず、ましてやそんな思いなど嫌悪感でいっぱい。どうしていいのか分からず、結局私に何か言われないよう、屋敷でコートを脱ぐことを決めた。たとえ私が貴方の心境を分かっていたとしても・・・」
「・・・・煩い」
「私の香りに包まれて如何でしたか?コートじゃ物足りなかった?唇を舐めていたのも無意識でしょう?」
「黙れ」
「素直になったらどうですか?貴方は私の香りに酔いしれていたんです」
「黙れッ!!!」

手を振り上げて振り返れば、近くに赤い瞳と視線がぶつかり、振り上げた手を掴まれてそのまま唇が重なり合う。
その瞬間コートとは比べ物にならないほどの香りと甘さにクラリと眩暈がし、身体から力が抜けてしまった。
それを見逃さなかったセバスちゃんは口付けたままシエルを抱き上げ、そのまま寝室へと足を踏み入れてしまう。
音を立ててしまった扉、そして近づいてくる蝋燭の明かりに恐怖し、歯を立てて噛み付けば、鉄の味を残してセバスチャンの唇は離れていった。

「随分とじゃじゃ馬ですね。口付け中に歯を立てるなんて」
「じゃじゃ馬相手だと初めから分かっているだろう?なんなら今度はその舌を噛み切ってやる」
「たまには素直に従うことを憶えないと、御者に叩かれてしまいますよ?」
「貴様もこれ以上駄犬っぷりを見せ付けるのならば、ダンボールに詰めて捨てるぞ」
「本当に口の減らない方だ」
「うわッ」

急に空中に投げ出されて声を上げると、そのままベッドの上に着地する。
白い布地が目に入ったと思えば、すぐに黒色に塗り潰されてしまった。
セバスチャンはベッドに仰向けになった状態のシエルにのしかかり、その手を頭の上で固定してしまう。
本気の瞳にシエルは血の気が引き、怯えるように顔を横に振った。

「や、めろッ!離れろッ!!」
「どうしてですか」
「今更理由を聞く馬鹿がどこにいる!」
「聞きますよ」

チュッと音を立てて首元に口付けを落とされる。
また跡を残されるのかと唇を噛み締めれば、そんな感触には襲われず、簡単に離れていった。
今度は頬にも口付けが落とされるが、それもすぐに離れ、次は耳。次は鼻、額など、順々に口付けだけを落としていく。
その優しい感触は、まるで怯えたシエルを慰めるようで、酷く暖かい。
それに困惑していると、ふいに唇に口付けが落とされ、目線が絡み合った。

「どうして嫌がるのですか?自分だって触れて欲しいと願っていたのでしょう?」
「・・・ッ」
「それが満たされるのに拒絶するとは。全然理解が出来ません」
「・・・貴様のことが嫌いなのに・・・触れられるなんて、最悪だろう」
「でも貴方は触れて欲しいと願った。そうでしょう?」
「・・・何が言いたい」

睨んで言えば、相手は口元に弧を描き、まるで高らかに宣言するように言葉を口にした。

「坊ちゃん。貴方は私のことが好きなんですよ」
「は?」

一瞬耳を疑ったが、どうやら幻聴ではなかったらしい。
僕がコイツを好き?何を根拠にそんなこと。

「だから触れて欲しいと思ったんです」
「そんなわけあるか」
「お子様はこれだから大変ですね」
「子供扱いするなッ」
「まぁ、子供扱いしているかと聞かれたらしていないですけどね」
「ンッ」

再び唇が重なり舌を絡め取られる。
全てを撫でるように舌が動き、吸われ、唾液が流し込まれる。
嫌悪感と共に、自分では認めたくない感情に包まれ、また歯を立てるが今度は離れていくことはなく、そのまま口腔を弄り続ける。
そのおかげで口の中は鉄の味が嫌というほどし、その美味しくない味にシエルは眉を寄せた。
噛み付いても唇が離れないのならやめとけば良かったなどと、後悔をしながら。

「っはぁ・・・」

やっと離された唇に酸素を求めるように呼吸を繰り返せば、大丈夫ですかと笑い声が頭上から降ってきた。
今度は絶対に舌を噛み切ってやる。

「・・・セバス、チャン」
「はい」
「どう考えても、たとえ百歩譲っても僕が貴様なんぞのことを好きだなんて思えない」

そう言葉にした瞬間目の前の瞳が赤く輝き、慌てて言葉を繋げる。

「ただ、今日は・・・貴様の香りに酔ったことは・・・認めてやる」

千歩譲ってな!と付け足すと、セバスチャンはクタリと力を抜いて、そのまま自分の上にのしかかってくる。
正直自分が言った言葉が恥ずかしかったので、顔を見られる心配が無くなったということは嬉しかったが、きっとこの鼓動の早さはバレてしまっているだろう。

「まったく。私は香りだけじゃなく、いつも貴方に酔わされていますよ」
「あ?」
「いえ、なんでもないです」

首元で呟かれた言葉を聞き取ることが出来ずに聞き返すが、それに答えることはなく、香りを吸い込むように首元で息を思い切り吸い込まれる。
それが妙に恥ずかしくて逃げたくなったが、この悪魔は逃げるものを追う習性があることに最近気付いたシエルは抵抗することもなく、そのまま放っておくことにした。



あたまがいたい
(こいつ が ぼくの ことを みすかす から)
いらいらする
(どうして こんなにも ふりまわされるの かと) 
むかむかする
(うまく かくせない じぶん にも)

ぜんぶぜんぶ こいつのせいだ
(かおり に よいしれた のも)
なにもかも  こいつのせいだ
(くちびる に よいしれた のも)

けれど
(そんな ふう に)
それをおもっているじぶんじしんにも

(よいしれ そう で)
いらいらする



end

 

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【2011/03/26 07:05 】 | Project | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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