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【2024/03/29 15:00 】 |
S×Sパニック
【喧嘩】
Spicyセバス×Spicyシエル



「一体今回はどうしたんだろうなぁ」
「セバスチャンさんと坊ちゃんが喧嘩をなさるなんて、久しぶりですだよ」
「早く仲直り出来たらいいのにねぇ」
「ほっほっほ」

そんな話しをしていたのは午前の時。
使用人たちは自分の主と同じ使用人かつ自分たちの指導者を思いながらため息を付いた。


****


そして午後。


「坊ちゃん、お手紙が届きましただよ」
「あぁ、そこに置いておけ」

「フィニ、これを坊ちゃんの机の上に」
「はーい!」

「これ、おかしくねぇか?」
「ほっほっほ」


いつもはペンが走る音が満ちる執務室は、人と声が満ち、どこか騒がしいものへと化していた。
それもそうだろう。
今この部屋にはこの屋敷にいる人間(+悪魔)が勢揃いしているのだから。

今日は朝からシエルとセバスチャンが喧嘩したのを使用人たちは知っていた。
なぜならシエルを起こしに行った後セバスチャンはシエルと共に食堂へは来ず、一人でやって来たかと思えば田中さんの名前を呼んだのだから。
いつも二人が喧嘩をすると、執事を勤めるのは田中さんへと変わる。
ある意味これは“喧嘩をしました”とあえて自分たちに告げているようなものだと苦笑してしまうのも仕方が無い。
しかし今は全て執事の仕事をしているのはセバスチャンだ。
田中さんが引き継ぎを出来ないことは全く持って有り得ないが、それでもセバスチャン自身に確認しなければいけないことは山ほどある。
なので、たとえ田中さんに執事役を任せたとしても、セバスチャンがシエルの元から離れるのは不可能なのだ。

だから、今こういう妙な状況が生まれてしまっている。


「バルド、書類を坊ちゃんに」
「・・・いい加減自分で渡せよ」
「いえ、お願いします」
「バルド。早く書類を寄越せ」
「へーい」

我らが主人にも促されたら従うしかない。
バルドはため息をつきながらセバスチャンに渡された書類を受け取り、シエルへと持って行く。
その隣では他の三人が楽しそうに無駄にインクの補充をしたり、書類を移動させていたりしていた。
気持ちは分からなくもないけれど、その姿に苦笑してしまう。
こんなにも主人と執事の間にはひんやりと冷たい空気が流れているというのに。

「バルド、これをセバスチャンに」
「・・・へい」

先ほどとは違う書類を渡され、今度はセバスチャンの方へと戻って行く。
シエルと仕事が出来るのは珍しい。
他の三人と同じように嬉しい気持ちはあるのだが。
(俺ぁ何をしてるんだか・・・)
二人の間を行ったり来たりしているのは正直複雑だ。

「ありがとうございます」
「・・・そう思うなら今の状況を何とかしろや」

ニッコリと微笑みながら書類を受け取るセバスチャンに低く唸れば、相手は少しだけ首を傾けるだけ。
そこには嫌です、という聞こえない声がハッキリと聞こえた。
その仕草や表情は周りの貴婦人を喜ばすものだろうが、今の自分にとっては迷惑極まりないものだ。
(ったく。どうしてこういうところは子供っぽいんだろうな)
バルドは舌打ちをしながらタバコに火をつける。

このスーパーマンみたいな男はなんでも冷静に物事をこなす。
自分たちがお客様への失敗をしても、まるで失敗などありませんでしたというように完璧なフォローを入れる。
それくらい優秀な男なのだ。
それなのに主人が関わるとこれだ。
自分たちを巻き込むほどの喧嘩は滅多にないが、小さな喧嘩ならよくしているらしい。
セバスチャンの様子は別に変わりはしないが、シエルの様子を見れば一目瞭然だ。
よくよく思い出せば最近シエルの方がよく怒っていることが多い気がする。
理由を尋ねても何でもないとの一点張り。どちらも、だ。
かと言って、二人の仲が悪いわけではない・・・ような気がする。
実際のところは本人たちしか分からないだろう。
(一体今回は何をやらかしたのやら)
天井に向けて煙を吐き出す。
自分たちの失敗は正直屋敷を巻き込む大きなものだ。
しかしそれを咎める声をあまり聞いたことがない。
勿論少しは怒ったりするが、それはその時だけで根に残るものでもない。
そんな心優しい主人なのに、この怒り様・・・。
一体どんな内容の喧嘩なのか想像すら出来ない。

「バルド」
「あ、すいやせん」

名前を呼ばれ慌ててタバコを消そうとすれば、違うと首を横に振った。

「色々付き合わせて悪かった。後は田中と何とかするからセバスチャンを連れて行け」
「え・・・ですが坊ちゃん」

いいのですかい、と言葉を紡ぐ前に黒い姿がバルドの横から足音を響かせて出てくる。

「ここまで周りに迷惑を掛けておきながら、その一言で済ませるというのは如何なものでしょうかね」

余計に怒らせるであろう言葉を吐いたのは言わずもがな、例の執事しかいなくて。
ギシギシと音がなりそうな固さを用いて横を向けば、どこか歪んだ顔で哂うセバスチャンの姿。
顔を前に戻さなくても怒りが膨れ上がった気配がバルドを包み込んだ。

「誰のせいだと思っている」
「私のせいだと?」
「それ以外誰がいるんだ」
「まぁ坊ちゃんをここまで怒らせられるのは私以外にいませんね」
「・・・それはどういう意味で言っている」
「さぁ。坊ちゃんが“知っている真実”での意味じゃないですか?」
「調子に乗るな」

間にいるバルドなど完全に無視をして言い合いをし始める二人。
周りにいた三人も固まって二人を見つめていた。
一体自分らはどうしたらいいんだ。

「調子になど乗っていませんよ。坊ちゃんが勝手に思いついただけじゃないですか」
「・・・っ、もう出て行け。暫く貴様の顔なんか見たくない」
「それを何度聞いたことか」
「何度も言わせるな」

何度も言われたことがあるのかと三人同時に思ったことは秘密だ。
なんだか二人の秘密のやり取りを見ているようで、居た堪れなくなってくるのはなぜだろう。
そんな様子のバルドをチラリと見たセバスチャンが口元に弧を描いたのを誰も知ることはない。

「ほら、普段見せない坊ちゃんの姿を見たせいで使用人が固まってしまっているではありませんか」
「別に普段見せない姿じゃないだろう」
「おや、気付いていないんですか」
「・・・なにを」
「それでいいんですよ、坊ちゃんは」

どこか甘やかに微笑み、セバスチャンは使用人たちの名前を口にした。

「ここまで巻き込んでしまってスミマセン。もういつもの持ち場に戻って平気ですよ」
「なッ!何を勝手に」
「これから坊ちゃんと仲直りを致しますので、私はもう少しここに残ります」
「お・・・おぅ」
「待て、コイツも連れて行け!」
「皆さん、ご苦労様でした。今度お詫びにケーキを焼きますね」

出て行け。
この男は絶対にそう言っている。
我らが主人は立ち上がり、この男も連れて行けと言うが自分たちにそれは不可能だろう。
それに仲直りが出来るなら仲直りをした方がいい。
二人の間柄の為にも。そして、自分たちの為にも。
だからこれは仕方の無いことなのだ。
主人の命令通りセバスチャンを部屋から連れ出すことが出来ないいい訳を自分にしながら、バルドは“執事の”命令通りにこの部屋の扉に手を掛ける。
その後ろには困惑、または苦笑しているような顔の使用人たち。
きっと自分も同じような顔をしているだろう。

「では坊ちゃん、俺たちは失礼しやす」
「おい、待て!お前らッ!!!」

悲痛とも言える叫び声に心が痛むが、それを我慢してそのまま部屋を後にする。

「あの暴れ馬は坊ちゃんにしか綱は引けねぇわ」

扉を閉めながら呟いた言葉は、あの男の耳に届いただろうか。
きっと本人も分かっているだろうから、どちらでも構わない。
バルドは閉まった扉に向けて煙を吐いた。


****


パタンと閉まった音は絶望の音だろうか。
他の使用人たちがいることによって執務室はいつもよりも和やかな“様子”だったのに、今となってはいつも以上に冷ややかな様子になってしまっている。
空気は元から凍っていたので気にはしないけれど。

「さて、やっと二人きりになれましたね」

坊ちゃん、と名前を呼ぶ悪魔の声にシエルは眉を顰め舌打ちをする。
なにが二人きりだ。使用人を巻き込んだのはお前も同罪だろうと悪態をつくも、それを口にすることは無い。
感覚的に、今の状況は絶対自分の方が不利だと感じていた。
下手に口を出したら倍に返されるだろう。自ら窮地に立つようなことは死んでもしたくない。この悪魔相手には。
大きくため息をつきながら上げていた腰を荒々しく椅子に戻す。

「まだ怒っていらっしゃるのですか」
「・・・・」
「あんな些細なことで随分と根に持つ方です」
「悪かったな。根に持つタイプで」
「責めてはいませんよ。むしろその方が喜ばしいですね」
「どういうことだ?」

言われている意味が分からず首を傾げれば、相手は嫌な笑い方をしながら此方を見つめてきた。

「根に持っているということは、その心の中には怒りの矛先・・・私がいるということでしょう?」
「は?」
「愛と憎しみは紙一重ですよ、坊ちゃん」
「・・・馬鹿か貴様は」
「まぁ貴方はまだ子供ですからね」
「子供扱いするな」
「子供でしょう。起こし方に文句をつけるなんて」

朝に喧嘩したことの話題に触れられ、元々イライラしていたシエルはカッとなって先ほどまで使っていたペンをセバスチャンに向けて力いっぱい投げれば、顔の前で簡単にキャッチされてしまう。

「どうせ死ぬことは無いんだ。一回くらい刺さってくれてもいいだろう」
「手癖の悪い主人ですねぇ」
「もう本当に出て行け。貴様とは話しをしたくない」

こんなことになるなら喧嘩なんてしなければ良かった。
そもそも僕が朝に“起こし方”の文句を言わなければこんなことにはならなかったのだろうか。
いや、そうやって僕を起こしているコイツが根本的に悪い。
全ての非がセバスチャンにあるわけではないと分かっているが、シエルはあえて全てセバスチャンの責任にする。
普段コイツからされていることを考えれば、それくらいまだ可愛いものだろう。

「冷たいですね」
「・・・・」
「この顔にペンが刺されば貴方の気は済みますか」
「・・・なに?」

言われた言葉に顔を上げれば、真剣な眼差しの瞳とぶつかり合う。

「先ほど言ったように怒ったままでも宜しいんですがね」

やれやれといったようなため息を吐きながらセバスチャンは近づいて、机を挟んだ前にやって来る。
そしてコトリとシエルがさっき投げたペンを机に置いた。

「そうしたら坊ちゃんが精神的に疲れてしまいますので」
気が済むまで刺していいですよ。

どこまでも真剣な声と眼差しに、どこか体温が下がった気がした。
なんだコイツはという思いと、気持ち悪いという思いと。
ちょっと・・・苛立ちすぎたかな、という反省。
けれど一回くらい刺してもいいだろうとも少し思った自分はサディストだろうか。

「・・・別に・・・。ペンが刺さった貴様なんか見たくない」
「目を瞑ったら見えませんよ」
「血で床が汚れるだろう」
「では汚れてもいいシーツを用意しましょう」
「・・・そんなに刺されたいのか貴様は」
「それで坊ちゃんの気が済むならば」
「あぁもう分かった」

シエルはガリガリと頭をかきながら息を吐く。
どう足掻いてもこの悪魔には勝てないと初めから分かっていた筈だ。

「・・・言い過ぎた」

ポツリと零す言葉。
きっと自分の頬は少し赤くなっているだろう。
そこが熱を持ったように熱いから。

「可愛らしいですね」

その熱を持った頬に冷たい感触が触れてくる。
手袋越しで良かったと思った理由をシエルは知らない振りをした。
可愛らしいという言葉に再び苛立ったが、それに牙を立てるようなことはもうしない。
これ以上嫌味の言い合いをする気力は使い果たした。
朝から言い合いをしていたのだから仕方の無いことだろう。
セバスチャンの言うように、精神的に疲れてしまったのだ。

「・・・可愛くなどない」

けれどただ黙っているのも癪だと思い、同じくらい小さな声で言葉を零す。

「きっとそう思っているのは坊ちゃんだけですよ」
「そんな頭が可笑しいことを考えるのは貴様だけだ」
「そうですね。私だけで十分ですね」
「・・・もう謝っただろう、貴様も仕事に戻れ」
「仲直り、で宜しいですか?」
「・・・朝のことは謝ったつもりはない」
「坊ちゃんらしいですね」

クスリと笑った息が耳元に触れてくすぐったい。
首を竦めれば、追いかけるように首元から頬に掛けて撫でられる。
その優しい感触が何だか嫌で、その手を掴めばまるでもっとと懇願しているような形になってしまった。
それに気が付いて慌てて離そうとすれば、指と指で自分の指を挟み捕られてしまい逃げることは出来ない。
力を込めればすぐに逃げれるというのに、なぜか力が入らなかった。

「朝の起こし方、新しく考えたのですが」
「・・・なんだ」

諦めてそのまま手を触れ合わせていれば、コツリとセバスチャンの額と額がぶつかり合う。

「それを試してみてもいいですか?」
「・・・・・・・・・いや・・・駄目だ」

暫く黙って考えていたが、シエルは首を横に振った。
なんとなくだが、今の雰囲気でどんな起こし方をされるのか気が付いたのだ。
そんなことをされるなら太陽の殺人的な刺激で起こされた方がまだマシだ。
そんなことを思ったシエルに気が付いたのだろう、セバスチャンはより甘い声で囁いてくる。

「気に入るかもしれませんよ?」
「そんなわけあるか」
「一回だけでも試してみては?」
「・・・だめだ」
「一回も?」
「いやだ」

額を合わせたまま首を横に振る。
いやだ。絶対にいやだ。
それだけじゃなくて、このどこか甘い空気もいやだ。
逃げない自分の手もいやだし、目の前にいる悪魔もいやだ。

「いや、だ」

もう一度何に向けていったのか分からない言葉は酷く揺れていた。

「大丈夫ですよ」
「セバスチャんぅ」

何が大丈夫なんだと言う前に口を塞がれる。
いや、本当に自分はそう言おうと思っていたのか?
名前を口にしたのは・・・どうしてだ?
口付けを受けながら考えるも、すぐにそれは霧散していく。
いつもより優しい口付け。
そう考えられるほど自分とコイツは口付けているのだろうか。

「ふ・・・はぁ」

いつも蹂躙してくる舌は優しく口腔をひと撫でしただけで唇は離れていった。
目線を上げることはしない。
こんな顔見られたくも無いし、相手の顔も見たくも無い。

「いかが、ですか?」

少し掠れた声に、ドキリと自分の鼓動が跳ねる。
けれどそれを押さえつけて。

「今までの、起こし方がいい」

こんな起こし方じゃ、むしろ自分の鼓動に押しつぶされて死んでしまう。

「それは残念」

全然残念そうな声には聞こえない声で囁き、セバスチャンはもう一度シエルに口付けた。



end
 

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【2011/03/26 07:48 】 | Project | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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