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【2017/01/22 08:55 】 |
7日目①/最後の夢の時間
一周年。




今日は仕事をお休みして、お出かけしましょう。
朝からバスに浸かるシエルにセバスチャンは提案した。
そこに何の意図があるのか分からない。けれど“恋人同士”である最後の日だから。

「…そうだな」

シエルは浴槽の中で静かに承諾した。






「身体は大丈夫ですか?」
「…あぁ、問題ない」

ロンドンの街を歩きながら問うセバスチャンに、シエルは視線を逸らしながら返す。
まだ下半身というか…セバスチャンを受け入れた場所が妙に疼いている気がするが、歩くことが不可能なほどの痛みを持っているわけでもないので問題はない。
セバスチャンはその返事に安堵した様子で、そうですか、と帽子の上からポンポンと優しく頭たたく。

「別に僕がここで大丈夫じゃないと言っても予定を変えるつもりはないだろうが」
「えぇ、ですが大丈夫じゃないと言われましたら抱きかかえて差し上げることくらい出来ますよ」
「…この街で僕を抱き上げながら歩くと?」
「はい」
「・・・・」

至極当たり前のように頷くセバスチャンにシエルは呆れ、返す言葉も見つからない。
すると彼は悪戯に前屈みになり、そして耳元で囁いた。

「坊ちゃんが宜しければいくらでも抱きかかえますが」
「…誰がそんなこと頼むか」
「恥ずかしがることなどないですよ」
「黙れこの変態悪魔が」

いつも通りのやり取りをしつつも、耳元で囁かれる声にシエルの鼓動は早くなってしまう。
近い声、そして耳や頬をくすぐる吐息はどうしても昨晩のことを思い出してしまって…。
シエルは耳に髪を掛ける仕草に見せかけながらじわじわと熱を取り入れてしまう耳を擦り、それで?と出来るだけ冷たく言葉を紡ぐ。

「これからどうするんだ」
「坊ちゃんはどこか行きたい場所はございませんか?」
「…別に」

元の真っ直ぐな姿勢に戻ったセバスチャンの問いかけにシエルは首を横に振る。
本当ならば折角ロンドンに来たのだ。ファントム社の商品が置いてある店へ足を運び、それをチェックして回りたいところだけれど、今日は仕事のためにここに来たわけではない。
しかし仕事以外で回りたいところは…と考えるが、別に行きたいところはどこもなかった。

「欲しいものは」
「ないな」
「…では食べたいもの」
「……甘いもの、か?」
「・・・・」
「・・・・」

セバスチャンの口元がヒクリと動いたのはきっと気のせいではないだろう。
でも行きたいところなどどこにも無いのだから仕方が無い。
口をへの字にして無言でいれば。

「それでは今日は予定もなく、あちこちを見て回りましょうか」

彼は呆れたようにため息をつきつつも優しい笑みを浮かべて言い、シエルへ手を差し出した。

「それはようするに行き当たりばったりということか?」
「貴方はどうしてそういう言い方しか出来ないんですか」
「…その通りだから仕方がないだろう」

その差し出された手の意味を知りつつもシエルはあえて顔を逸らし、手を後ろに隠してしまう。
繋ぎたい気持ちと、繋ぎたくない気持ち。
今日で最後なのだから繋げばいいと思う自分もいるけれど、これ以上踏み込まれるのも嫌なのだ。
しかしそんな気持ちを彼が汲んでくれるはずはなく。

「ここは素直に“うん”と頷いていればいいんですよ」

セバスチャンは後ろに隠した手を取り、無理やり手を繋いでしまった。
シエルは慌てて、離せッ、と腕をひっぱるも抜けることはなく、むしろ強く握り締められてしまう。

「恋人同士がデート中に手を繋がないなんて、一体どんな恋人同士ですか」
「僕らは嫌味を言い合う殺伐とした恋人同士だろうがッ」
それに、他の人に見られたらッ…!!

シエル・ファントムハイヴの名は知れ渡っていたとしても顔までは知れ渡ってはいないだろう。
だが知る人が見ればすぐに自分がシエルだということが分かってしまう。
その人物が執事と手を繋いでいたなんて、即噂の種となり裏社会まで広がってしまうに違いない。
と、もっともらしい理由を並べてみたが、セバスチャンは離すことはなく、むしろいい笑みを浮かべながら悪魔らしい提案をした。

「では別の街に行きましょうか」
「は?」
「坊ちゃんのことも、私のことも知らない街。それなら坊ちゃんも心からこの“恋人同士”を楽しめるでしょう?」
「え、ちょ、待てっ」
「そうと決まれば行きましょうか」
「おいッ…!!」

制止も聞き入れずセバスチャンはシエルを抱き上げ、歩を進めていく。
初めはゆっくり、そして走り出し、ついには風のように。
シエルを抱き上げたセバスチャンは3分も掛からずロンドンの街を出て、そのまま別の方向へと走っていく。
こうなってしまった以上、もう止められるわけがなく。
シエルは振り落とされないように自らセバスチャンの首に巻きつき、小さな声で、バカ、と言ってやれば、自分を抱きしめる手であやす様に背中を撫でられた。



「それで、ここはどこだ」

30分も掛からずに着いた街。
そこはロンドン並に広さと優雅さを持つが、その街の色合いが違う。
セバスチャンから降りて辺りをキョロキョロ見回しながら聞けば、彼は燕尾服を調えながら、秘密です、と答えた。

「まぁ、きっと街の名前を言っても坊ちゃんは知らないと思いますよ」
「…ということは、仕事では関わっていない街ということか」
「ご名答。もし関わっている街でしたらまた坊ちゃんは嫌がるでしょう?」
「じゃぁ秘密にする理由は?」
「ご自分の胸にお聞きになったら分かりますよ」

揶揄するような言葉にシエルは苛立ち、言い返してやろうと口を開くが、またセバスチャンに手を取られたことによって言葉は喉で止ってしまった。

「では坊ちゃん、今度こそゆっくりデートをしましょう」

手を取るやいなや、そのまま彼は歩き出し街へと歩を進める。
引っ張られたことによって多少躓きそうになったが、シエルはそのまま引っ張られる形でセバスチャンの後についていき、大きくため息をついた。

「本当に行き当たりばったりだな」

こいつの自分勝手さは知っていたが、ここまでとは思わなかった。
きっと本当に執事という皮を剥いだら、もっともっと自分勝手で我侭なのだろう。
……その姿を見ることは自分には叶わないが。






「はい坊ちゃん、ソフトクリームですよ」
「そふと、くりーむ?」

街をブラブラ歩いていると、小さな出店を見つけたセバスチャンは人通りの少ない裏路地の椅子に座らせて、待っていてください、とその出店の方へと足を運んだ。
そしてそこで買ってきたものはソフトクリーム。
どうやらその小さな出店はソフトクリーム屋さんだったらしい。
けれどシエルは街に売っているようなソフトクリームを食べたことがなかった。

「坊ちゃんはこのようなソフトクリームを食べたことがありませんでしたか」
「見た目はアイスのようだが…」
「はい。ただ形がこのようになっているだけです」
「ふぅん」

シエルは頷きながらソフトクリームを受け取り、両手で持つ。
ずっしりとした重さに、アイスというものはこんなに重たいのかと若干瞳を見開けば耳にクスリと笑い声が聞こえ、軽く咳払いをした。

「じゃ、じゃぁ」
「はい。召し上がってください」

セバスチャンが頷いたのを見て、シエルはソフトクリームを食べようとするが、ふと疑問が浮かんだ。

「セバスチャン、スプーンはないのか」
「それはそのまま食べるのですよ」
「……そのまま……?」

そのまま食べるというのは、どういうことか。
シエルはソフトクリームを見つめたまま固まってしまえば、立っていたセバスチャンもシエルの隣に腰を掛け、白いアイスの部分を指差した。

「ここをそのまま舌で掬って食べるのですよ」
「は?」

それを聞いたシエルは怪訝な顔をする。
セバスチャンの食べ方が本当なら人前で舌を伸ばして食べるということだ。

「嘘だろう」
「……は?」
「そんな食べ方するわけがない」

からかうな、と相手を睨みつけてやれば。

「ぶはッ…!!」

相手は盛大に噴出した。

「なッ……何が可笑しい!!」
「いえいえ、そうですよね。おぼっちゃまで在られる坊ちゃんですから、そのような食べ方をするなんて考えられないですよね」
「ッ~~~~~!!!」

珍しく笑い続けるセバスチャンにシエルは顔を赤くしてワナワナと振るえる。
本当は殴ってやりたいところだが、手にはソフトクリームがあるので出来ず、食べ方が分からない恥ずかしさと悔しさで下唇を噛み締めた。
きっとこれを食べるのは当たり前で、ある意味一般常識的なものなのだろう。
だが、ファントムハイヴ家という高い位の貴族であるシエルは、それが分からないのだ。
別にそれについてシエルが悪いわけでもないし、自分を責める必要はない。しかし元々プライドが高いシエルは笑う相手を怒るよりも、そんな自分が許せない。
するとそれに気が付いたらしいセバスチャンが笑いを若干おさめ、すみません、と心が込められていない謝罪を口にしてシエルの頭を撫でた。

「食べたことがないのですから、仕方がないですよ」
「……うるさい」
「ほらほら拗ねないでください」
「子供扱いするなッ…!!」
「はいはい、私が悪かったですから」
食べ方の手本を見せますね。

怒っているシエルに別の話題を投げかけるような逃げ方だが、食べ方を教える、と言われてしまえば黙ることしか出来ない。
シエルは唇を尖らせたまま、仕方なく頷いた。
すると彼はニコリと笑い、ソフトクリームを持つシエルの手首を掴み、それを自分の方へと引き寄せる。

「こうやって食べるんですよ」

そして赤い舌を出し、下から上へと白いアイスを舐め救い取る。
舌先にアイスが乗ったのをシエルにわざとらしく見せ付けながら口に舌を戻し、音を立てるように飲み込んだ。

それは。
昨晩のセバスチャンと重なって。

「~~~~~~!!」

たまらずシエルは足でセバスチャンの足を踏みつけた。
まさかいきなり足を踏まれるとは思っていなかったのだろう、先ほどまで浮かべていたイヤラしい顔を引っ込め、驚いた様子で名前を呼ばれるが、シエルは無視して引き寄せられていたソフトクリームを持った手を引き戻した。

「折角食べ方を教えてあげたというのに、酷い仕打ちですね」
「黙れ変態が」

わざとそうやったくせに、とは言わない。
言ったところで、昨晩のことをまだ意識しているというのがバレるだけだ。
となると、どう考えてもこちらが不利になるだろう。色々な意味で。

シエルはハッと沈んでしまいそうな気持ちを引き上げ、目の前にあるソフトクリームに意識を戻す。
セバスチャンが掬い取ったところが少しだけへこみ、食べた跡が残っている。
それにまで鼓動が早くなるのは最早病気の一種だろう。
しかしそれに気が付かないフリをして、シエルは小さく舌の先だけ出し、セバスチャンがやったようにアイスの部分を掬い取る。
舌先にアイス独特の冷たさが伝わり、そしてそれを口に戻して飲み込めば冷たさが喉を通り、そして口の中にはバニラの甘さがいっぱいに広がった。

「美味しいですか?」

きっと自然と口元が緩んでいたのだろう。
セバスチャンが覗き込むように聞いてくるのに、シエルは素直に頷いた。
やはり甘いもの好きのシエルにとって、こういうものは機嫌が良くなりやすい。

「あぁ。アイスをこんな形で食べるのは始めてたが、こういう食べ方も面白いのかもしれない」

シエルは先ほどよりも若干舌を出し、また救い取って食べる。
(…美味しい)
これが当たり前なのだと理解し、かつ慣れてしまえば恥ずかしさなどなくなってしまい、シエルは美味しいソフトクリームを上機嫌で食べていく。
が。

「私もまた頂いても宜しいですか?」

再びセバスチャンが顔を近づけて、シエルの反対側のソフトクリームを舌で掬い取っていく。
それはシエルよりも大胆な動きで、なのに掬い取るアイスの量は少ない。

「おいセバスチャ」
「ほら坊ちゃん、早く食べないと溶けてしまいますよ」

食べるなら自分で持って食べろ、と言おうとしたのだが、セバスチャンの指摘にシエルは慌てて下のコーンに垂れてきているアイスを舐め取る。
その間も向こう側でセバスチャンもアイスを舐めていて…。
1つのアイスを二人同時に食べている打なんて、なんていう絵なのだろうか。

「ちょ、もうお前は食べるなッ」
「…アイスを独り占めしたいと?」
「違う!少しはお前も今の状態がおかしいことに気がつけ!」
「別におかしくないですよ。恋人同士が1つのソフトクリームを食べることなんて普通です」
「だが僕らは普通じゃないだろうが!男同士だぞ!」
「今周りに人はいません」

シエルの怒鳴りに淡々と答えるセバスチャン。
どうしてこいつはこうなんだ、と思い切り睨みつけてやれば。
不機嫌な赤い瞳とぶつかり合った。

「・・・・」
「・・・・」
「…なにを怒っているんだ」
「・・・・」
「セバスチャン」

黙ってしまったセバスチャンの名前を呼び、不機嫌になった理由を言うよう促せば。
彼は大きく口を開けてソフトクリームを口に入れ、かと思いきやシエルの手からソフトクリームを叩き落した。

「おいッ…!?なにを…ンむ」

べチャリと音を立てたそれに視線を向ける前に赤い瞳が視界を占拠する。
もうこの一週間で慣れてしまった感触はすぐに唇だと分かり、シエルは一瞬にして頬を赤く染め上げた。
外で口付けるなんて、誰が見ているかも分からないのだ。手を繋いでいるところを見られるよりも問題である。
しかしセバスチャンは気にする様子など微塵もなく、無理やりシエルの唇に舌をねじこみ口を開かせ、そしてドロリとした液体が口の中に流し込まれた。

「ん、んン…!!」

まだ若干冷たさはあるものの、セバスチャンの口の中で溶けて生暖かくなったそれは、どう考えても先ほど食べたソフトクリームでしかなくて。
シエルは流し込まれたそれを数回に分けて飲み込んでいく。
口移しで食べさせられるそれは先ほどのソフトクリームよりも甘く感じるのはなぜだろう。

「げほ、ごほっ」

全て飲み込むとやっと唇を開放され、咳き込む。
するとセバスチャンは大丈夫ですか?と甘やかな声で頭を撫でてくるので、シエルはその手をパシリと叩き落した。

「お前、急に!しかも外で!」
「坊ちゃんが悪いんですよ」

叩き落としてもその手は、今度は頬に触れ優しく撫でていく。

「今度は私が作ったソフトクリームを食べてくださいね」
「…別にさっきのソフトクリームでも良かっただろうが」

無残にも地面に落ちたソフトクリームに視線を向ければ、それを許さないといわんばかりに軽く頬をつねられ、シエルは眉を顰めてセバスチャンに瞳を戻した。
するとそこにはやはりまだ赤い瞳が鎮座していて…。

「そんなにそのソフトクリームが美味しかったですか?私が作ったものよりも?」
「……は?」
「いつも私の作ったものには“まあまあだ”とかしか返してくださらないのに、先ほど素直に美味しいと頷いたではありませんか」
随分と食べることにも夢中になっておりましたし。

その燃え上がるような瞳には似合わない、拗ねた言葉。
ようするに。
セバスチャンは別の人間が作った食べ物を美味しいと食べていたのが気に食わなかったらしい。

「・・・・」

不機嫌になった理由がそこにあったのだと分かったシエルは馬鹿かと罵りたかったけれど、口はパクパク動くのみで言葉が出てこない。
だってそんなふうにいじけてしまうセバスチャンが嬉しくて…―――




だが。




―――“恋人同士”だからです。




ビクッと身体が跳ね上がる。
そして急激に冷えていくのが全身から感じた。

(あぁ…馬鹿は僕の方か)

たとえ彼の口から出た言葉が嘘ではないとしても、それは“恋人同士”の中だけで。
真実だけれど、それは限定の中での真実。

今日までの、言葉だ。


「坊ちゃん?」

シエルの様子が変わったことに気が付いたのだろう。
元の色に戻った瞳が心配そうにこちらを覗いてきていることに気が付いたシエルは、いや、と無理やり頬を緩め。

「変なところで機嫌を悪くするな。僕の“執事”だろうが」

落ちてしまったソフトクリームには、もう視線を向けることなく立ち上がった。
そして振り返り、今度はシエルからセバスチャンへ手を差し伸べる。

「ほら、今日は“デート”するんだろう?」

“執事”であるのに“デート”
この言葉をあえて選んだシエルの気持ちに彼は気が付いているだろうか。
いや、気が付いていてもきっと彼は何も言わない。

「はい」

ほら。
何も言わない。

彼も立ち上がり、シエルの手を取る。
その手は痛いくらいにギュッと力強く握り締められ、そしてまたセバスチャンはシエルを引っ張るように歩き出した。
もう少しシエルが早く歩けばそんなことにはならないだろう。
彼はシエルに歩調を合わせているのだから。

けれどシエルはわざと引っ張られるような形にする。
彼よりも歩くスピードを遅くして。
決して横には並ばない。

並びたくない。
並べない。



(なぁ、セバスチャン)

シエルは心の中で、その後ろ姿に問いかける。



お前は今、
何を考えているんだ?

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