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【2017/10/23 00:25 】 |
Sweetの約束
Sweetシリーズ

「セバスチャン」
「はい、如何されましたか?」
「…なんでもない」

シエルは何か言いたそうに口を開くが、どこか気まずそうに口を閉ざしてしまう。
その動作を見るのは、今日で5回目だ。
今度は一体なんでしょうかねぇ?
セバスチャンは愛しい恋人を見ながら、甘いため息をついた。


― Sweetの約束 -


「今度は一体どうされました?」

セバスチャンはシエルがチェックし終わった書類をまとめながら声を掛ける。
その声はどこか軽く、呆れたような色を宿している。
もう恋人が何かしら様子がおかしくなるのには慣れてしまったセバスチャンは、正直今度は何をやらかしてくるのかが楽しみになってきてしまったのだ。
恋人にとっては真剣そのものなのだろうが、こちらにとっては甘いスイーツのようにしか感じない。
シエルはセバスチャンが己のことを見て、どこか楽しんでいることに気がついたのだろう。
走らせていたペンを放り投げるように机に置き、いじけるように頬杖をつく。

「どうせ僕が考えることはちっぽけなことだ」
「いえ、そんなことは」
「笑えたければ笑えばいい」

どうやら本気で機嫌を損ねてしまったようで、シエルはムスッとした表情でセバスチャンの方から視線を逸らしてしまう。
あぁ…やってしまいましたね。苦笑しながらシエルに近づき、少し膨らませている頬を、手袋を脱ぎ捨てた素手で撫で上げる。

「すみません坊ちゃん。少々調子に乗りました」
「…お前なんかもう知らん」
「そんなこと仰らず…。今度は何を悩んでいたんですか?」

教えてください、と言ってもシエルは唇を噛み締め話す気は無いという意思表示をする。
こういうところが歳相応の子供らしくて可愛いのだが、今は少々厄介だ。
こうなってしまっては、きっとスイーツでは釣られてくれないだろう。
セバスチャンは少々考えた後、身を屈めて、いきなりシエルの唇に口付ける。

「んぅ?!」

突然口付けられたシエルは目を見開き、驚いたような声を上げた。
そして嫌がるように首を横に振ろうとするが、セバスチャンの頬を触れる手がそれを許さない。
強引に唇の中へ進入し、荒々しく口腔をかき回す。
舌と舌を絡め合わせれば、縋るようにシエルの手が燕尾服を握り締めた。
蓋された口からでも、快楽を得ている声は漏れてきている。

「ん…ン」

今度はその激しさの逆に、優しく優しく口腔を舐めまわしていく。
歯列を辿り、上顎を擽り、激しいときと比べたら、まるでただ触れているだけのように感じるだろう。
やはりシエルもその感触に焦れたように、舌を自ら絡めてくる。
それはもう、セバスチャンとの口付けに夢中になった証拠だ。
まんまと罠に嵌ってしまったことをシエルは気がついていないだろう。

「ふぁ」
「坊ちゃん…」

ひとしきり甘い口付けを仕掛け、唇を離せばクタリと力が抜けてしまったシエル。
それを見ながら微笑み、その小さな頭を撫でてやる。
そしてきっと快楽で染まっているだろう顔を見ようと、覗き込めば。

「見るな」

自分の腕に顔を埋めてしまう。

「なぜです」
「嫌だから」
「少しくらいいいでしょう」
「やだ」

くぐもった声で呟かれる拒否の言葉。
その様子から、どうやら先ほどの悩みはここら辺にあるらしい。
シエルがセバスチャンを拒絶するのは、何かの理由があるときだけだ。
セバスチャンは無理やり顔を上げさせようとはせず、そのまま頭を撫で続ける。

「どうして嫌なのですか?」
「・・・」
「口付けたことがお恥ずかしい?」
「それもあるが」
「あるが?」

続きを促せば、躊躇したような沈黙が一時訪れる。
さて、どうしたものか…と内心腕を組めば、本当に小さな声、悪魔にしか聞こえないだろう音量で答えを紡がれた。

「絶対に、変な顔をしている」
「・・・」

顔を隠す理由に、セバスチャンは何度か瞬きをする。
まさかそんな理由だとは思わなかったのだ。
変な顔をしているだなんて、どうして思ったのだろうか。
セバスチャンはシエルに不安感を与えないよう、出来るだけ優しい声で聞く。

「どうしてそう思われたのですか?」
「…自分を制御、出来ないからだ」
「制御…自分の思うように出来ない、ということですか?」

その答えは微妙なところだったのだろう。
肩の動きから、腕の中でため息をついたのが分かった。
けれどこちらとしては、恋人が一体どういう思いからそう思ったのか分からないのでどうすることも出来ない。
シエル自身が教えてくれないと、悪魔であれ本心…心のことは分からないのだ。
いや、悪魔だからこそ…なのかもしれないが。

「坊ちゃん、教えてください」
どうしたら、貴方の悩みは晴れますか?

懇願するように言えば、そろりと顔の下から手が伸ばされてくる。
頭を撫でていない方の手でそれを包み込み、ちゅっと口付けを落とす。

「お前に触れられると、僕が僕じゃなくなる」

先ほどと同じくらい小さな声で話しだされる。
セバスチャンは口を挟むことなく、その話しに耳を傾ける。

「思考が真っ白になってしまって、その、変な声…とか、出るだろ。いつもの僕からは考えられないものだ。声も感覚も…。だから見たことはないが、きっと表情も締まりのない顔をしていると思う。お前は前に、僕らしくないとか、変だとか思わなくてもいいと言った。でも、声とかは…あまりにもだろう。きっとこれからもお前に触れられたら、もっと僕は僕らしくなくなってしまう」
「それがお嫌なのですか?」

そう問えば、違うと首を振る。

「嫌なのは僕じゃない。お前だ」
「…私?」
「きっとお前は、僕じゃない僕を見て…嫌いになる」

最後の方では、涙声で紡がれる。

どうやらシエルは、いつもの自分じゃない、快楽に塗られた自分を見られたらセバスチャンに嫌われると考えているらしい。
だから口づけを交わした後も顔を隠してしまったようだ。
じゃぁ、先ほど言いたがっていたことは。

「ずっと聞きたがっていたのは、貴方ではない貴方を見て、嫌いにならないか…とお聞きになりたかったのですか?」

その言葉に、コクンと頷くシエル。

「お前、前に、その、僕を欲しがっただろ?だ、だから、ちゃんと、その受け止められるように、心構えをしようとだな…思って、考え出したら」
「そのような結論になったと」
「…あぁ」

全く、貴方という方は。
これ以上私を夢中にさせてどうするおつもりですか。

「嫌いになんてなるわけないでしょう。私は、そんな貴方をもっと見たいですよ」
「…は?」
「声も、もっと聞きたい」
「な、な…」

ストレートに伝えれば、シエルはガバリと顔を上げ、椅子ごと後ろに下がってしまう。
数分ぶりに見た顔は真っ赤に染まり、口をパクパクさせていた。
随分と驚いたらしい。

「ご安心ください。乱れた貴方もさぞ美しいですから」
「へ、変態ッ!!」
「愛しい人に対しては変態になるものです」
「馬鹿か!」
「ですから、心置きなくその身体を差し出してくださって結構ですよ」
「殺すぞ貴様!」

元の怒りっぽいシエルに戻った姿を見て、内心ホッと胸を撫で下ろす。
安心すれば、次に湧き出てくる感情は決まっている。

「さて坊ちゃん。私を受け止める心構えは出来たのでしょうか?」
「…え」
「仰っていたではないですか。心構えをしていた、と」
「あ、いや、セバスチャン」

セバスチャンはニッコリと微笑みながら、机を避けるようにシエルに近づいていく。
逃げようと椅子から立ち上がろうとするが、その前に椅子の肘掛に両手をつき、逃げ場をなくす。
シエルは赤い顔をしたまま目を見開き、セバスチャンの瞳を見つめる。
目線を逸らさないのは、覚悟か。

「坊ちゃん」
「・・・」
「お嫌ならしません。嫌がらせてまで、その身体を求めたいわけではありませんので」

辛い思いも、悲しい思いもさせたいわけではない。
そう告げれば、シエルの肩がピクリと震える。

「拒絶したからといって、私は貴方を嫌うこともありません。たとえどんな貴方でも受け止めますよ」
「セバスチャン…」
「焦ることは全くありません。坊ちゃんのペースで進みましょう?」

微笑みながら赤い頬に口付ければ、シエルも嬉しそうに目を細める。
その表情にドキリとして、無意識に唇に唇を寄せると。

「ら、来週」
「はい?」
「来週なら、いい」
「…え」

あと少しで唇が触れ合う位置でピタリと止まる。
今坊ちゃんは、とても、とても素敵なことを仰いましたよね?

「来週ならいいと言ったんだ!」
「本当ですか?嫌じゃないのですか?」
「嫌だったら、心構えなんてしようとしないで逃げるだろう!」
「坊ちゃん…!!」
「ほら、顔近い!離れ…んぅ?!」

喜びや愛しさに胸溢れた悪魔は、そのまま唇を合わせる。
そしてその激情のままに貪れば力強く胸板を叩かれたが、止めることができない。
息継ぎの間だけを除いて、長い時間その唇を味わい尽くす。
手だけは来週まで出さぬように我慢しながら。

「は、はぁ…はぁ…」
「あぁ、坊ちゃん」

うっとりとしながら名前を呼ぶ。
シエル自身は息切れし、息を荒くしているのにも関わらずだ。
来週殺されるかもしれない、なんてシエルが思っていることを、この浮かれた悪魔は知らない。

「来週、楽しみにしております」
「…きっと…な」
「えぇ、絶対に」
「・・・」


来週まで待ちきれない悪魔と、来週を不安に思う主人。
この恋人間の温度差は、微笑ましいものと言っていいのか。
それはきっと誰にも分からない。




END 

 

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【2011/03/24 17:44 】 | Series | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
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