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【2017/12/15 05:29 】 |
その唇に触れたくて
2000HIT御礼

― どうしよう ―

シエルは頭の中で、久しぶりにそんな単語が浮かんだ。
3年前のあれから、考えることや頭を抱えることはあったけれど、どうしようなどと悩むことは無かった。
それは悩む必要が無かったから、とも言えるし、あえて悩むような選択を選ばなかったとも言える。
けれど今回ばかりはどうしようも出来ず。

「どうしたらいいんだ・・・」

シエルは大きなため息をついた。


― その唇に触れたくて ―


今日は見事な晴天で、窓を開ければ気持ちのいい風が入ってくる。
こんな日には庭の薔薇を見に行ったり、逆に少しお昼寝をしたくなってしまうだろう。
けれど、このファントム社の社長、シエル・ファントムハイヴはそのようなことは言語道断とでも言うかのような覇気でガリガリと仕事に没頭していた。

「・・・・」
「・・・・あの、坊ちゃん?」

セバスチャンはそんなシエルに何度も声を掛けるが、シエルは全く持って無反応。
これはあえて無視されているのか、または本当に気がついていないのか分からない状況である。
それほどまでにシエルの書類に走らせる目が真剣だ。

今日中に終わらせなければいけないものなど、ありましたかねぇ?

セバスチャンは首を傾げる。
しかしそんなものは無い筈だ。むしろ今日の仕事はすでに終わっているのでは?
机の上に載っている書類の膨大な量を見て苦笑する。
本当に一体何を考えているのでしょう、この主人は。

「坊ちゃん、紅茶が冷めちゃいますよ?」
「・・・・」
「アップルパイもいらないのですか?」
「・・・・」

うーむ、スイーツにまで無反応だなんて。
一体何がそんなにも坊ちゃんに仕事をさせているのでしょうか。
それとも何か考えがあって・・・?
セバスチャンは足音を立てながらシエルに近づく。
机の前まで来ても、シエルは何も反応しない。
無言に、淡々と、機械のように書類にペンを走らせる。

「坊ちゃん。少しお休みになられた方がいいかと思いますが」
「・・・・」
「坊ちゃん、いい加減私も怒りますよ?」
「・・・・」
「坊ちゃん!」

セバスチャンはついにペンを走らせるシエルの手を自分の手で止める。
するとシエルは何が起こったのか分からないような表情でセバスチャンのことを見上げる。
いつものシエルの表情から考えると、その顔は凄く幼げだ。

「坊ちゃん?」

そんな顔に不安になり、セバスチャンはもう一度声を掛ける。

「セバス、チャ・・・?」

まるで今起きたかのような声音で返してくるシエル。
大丈夫ですか?と聞くと。

「っ!セバスチャンっ!?」

急に驚いた声を上げ、セバスチャンに掴まれていた手を引っ張り立ち上がる。
どうやらやっと覚醒したらしい。

「どどどど、どうしてここに?!貴様、入ってくる時はノックぐらいしろ!」
「ノック・・・って坊ちゃん。私は何度もお声を掛けましたが?」
まぁ、全て無視されましたけれどね。


セバスチャンは呆れたように言う。
どうやらシエルはあえて無視をしていたわけではなく、本当に気がついていなかったらしい。
どれほど仕事に没頭していたのだろう。

「坊ちゃん。何か急ぎのことでもあるのですか?」
「なぜだ?」
「いえ、こんなにも仕事をなさっておられるので」

シエルは自分の机の上にある膨大な書類を見て、一瞬表情を歪ませる。
セバスチャンはその一瞬を見逃さなかった。

「特に急ぎの仕事ではないのに、こんなにもなさっていたのですね」
「急ぎではなくても仕事はするものだろう」

シエルはぷいっと後ろを向いてしまう。
そして締め切っていた窓をほんの少し開けて、気持ちの良い風を部屋に入れる。
今日は気持ちのいい日だな、とまるで逃げるように呟きながら。

「ですが、いつもならばこのように荒々しくはなさらないと思いますが?」
「荒々しくとは失礼な奴だな」
「だってそうでしょう?」

その言葉にシエルは眉を寄せる。
姿を見なくとも分かる、ニヤリと笑った声。

「まるで何かから逃げるように仕事をなさっていましたよね」
「っ!!」
「おや、図星ですか?」
「~~~!!お前には関係ないことだ」
「随分と冷たいですね」


セバスチャンは机に載っている処理し終えた書類を綺麗にまとめていく。
紙の高さを整える、トントンと紙が机を叩く音が妙に耳に響いてくる。
それはきっと、この空気に妙な緊張感が漂っているから。
シエルは身体を硬くする。

「少しくらい、お話してくださってもよろしいのでは?」
「お前に言っても仕方の無いことだ」
「本当に?」
「うるさい。早くその書類を持って行け」
「坊ちゃん」

紙を整える音がピタリと止む。

「こちらを向いてください」

嫌味ったらしくもなく、けれど優しくもないセバスチャンの声。
しかし何かの含みを感じられる。
『何か』が何なのかは分からないけれど。

「いいから、早く持って行け」
「坊ちゃんの顔を見たら持って行きます」
「命令だと言ったら?」
「そうですねぇ・・・」

セバスチャンは少し考え込み、


「坊ちゃんが風邪を引かれると困るので、その窓を私が閉めてから持って行きます」

と答える。
それは窓を閉めるのが目的なのではなく、シエルの顔を覗きこむのが目的だ。
本当に無駄に頭の回転が速い奴だ。
シエルは舌打ちをしながら窓を閉める。
と。

「仰ってくだされば私が窓を閉めましたのに」

真後ろからセバスチャンの声。

「っ?!」

シエルが驚いている間に、セバスチャンはカーテンまで引っ張り閉めてしまう。
見事な早業だ。
シエルはすぐさま逃げようとするが、そのまま後ろから抱きとめられて身動きが取れなくなってしまった。

「貴様っ!!わざと僕が窓を閉めるように誘導したな!?」
「はいvまさか坊ちゃんが素直に引っかかってくださるなんて思いませんでしたよ」

嬉しそうにセバスチャンはシエルを強く抱きしめる。


「少しでも坊ちゃんに近づこうとしたらバレてしまいますので、少し窓に意識を逸らせて頂きました」
「くそっ!離せっ」

シエルはその腕から逃れようともがくが、がっちりと抱きしめられているので逃げることが出来ない。
カーテンも閉められているので、誰かに見られるといういい訳も通用しないだろう。
セバスチャン!と怒鳴れば、少し寂しげな声が降りてくる。

「何があったのです?」
「・・・・」
「私には言えないことなのですか?」
これでも心配しているんです。

シエルはギュっと心臓が掴まれたような感覚がした。
先ほど感じられた『何か』は、セバスチャンの『不安』だったのかもしれない。
きっとここで、お前には言えない、と言えばセバスチャンは追求をやめるだろう。
この腕も離して、命令通り書類を持って行く。
しつこい悪魔だが、その時々の引き際をきちんと考えている。
(まぁ、その後自然に聞き出しに来たりするが)
けれど。

シエルは自分を抱きしめている腕の袖をそっと握り締める。

けれど、本当はこの腕を離して欲しくない。

「坊ちゃん?」

シエルが袖を掴んだのが分かったのだろう、セバスチャンが問うように名前を呼ぶ。
それは必然的に耳元で。

「っ・・・」

もう我慢が出来なかった。
だからあんなにも仕事に没頭したのに。
だからあんなにも仕事に逃げたのに。
でも、やっと。


「セバス、チャン」

やっと満たされる。

「セバスチャン・・・」

シエルは小さな声で甘えるように呼ぶ。
そして身体から力を抜き、後ろにある胸板に頬擦りをする。
それだけでなんだか嬉しくて、口元が緩んでしまう。

それを見たセバスチャンは一瞬目を見開いたが、すぐに全てが合点し微笑む。
全く。素直じゃないですね貴方は。

「すぐに言ってくださればよかったのに・・・」
「言えるか馬鹿」

表情とは真逆の怒ったような声。
それが照れ隠しだと、ちゃんと分かっている。

「甘えたかったのですね?」

耳元でくすぐるように甘く言うと、シエルはビクリと身体を震わし固まってしまう。
どうやらそれだけではないらしい。
しかしここまでくれば、だいたいの予想はつく。

貴方がどうしてあそこまで仕事に逃げたのか分かりましたよ。

セバスチャンは行き着いた答えに、嬉しさで心が満たされる。
どうしようもなく可愛い人ですね。
腕に抱くシエルを優しく見つめながら本当に小さな声で呟く。
今すぐシエルの望みを叶えてあげたいと、自分の為にも思うのだけれど。

「坊ちゃん、他には何がしたいのですか?」

苛めたくなってしまうのも真実で。
セバスチャンは意地悪くシエルに望みを口に出すように促す。

「どうせ分かってるんだろ?」

早く早く、と急かすようにセバスチャンの袖をクイクイっと引っ張る。

「・・・抱きしめて欲しいのですか?」

わざと違うことを言うと、シエルは、うー・・・と呻くような声を出す。
抱きしめても欲しいけれど答えは違う、とでも言いたいのだろう。
素直に言ってしまえばいいものを。
プライドが邪魔して言えないのだろう。
こういうとき、理性を壊してしまうほど快楽に堕としてしまえばいいのですけれどね。
悪魔は物騒なことを考えながら、そのままシエルを持ち上げる。

「うぁ?!」

まさかいきなり持ち上げられるとは思わなかったのだろう。
珍しくシエルは声を上げる。
セバスチャンはそのまま先ほどまでシエルが座っていた椅子に腰を下ろし、シエルを向かい合わせになるように膝に据わらせる。
さて。これで望みを叶えやすくなりましたよ?坊ちゃん。

「な、何だこの格好っ!」
「こうした方が坊ちゃんのお顔がよく見えますので」

セバスチャンはニッコリ微笑みながら答える。
けれどシエルは困ったように顔を真っ赤にさせ、唇を噛み締めている。
この様子じゃ、一体いつになったら言えるのか分かりませんね・・・。
セバスチャンは内心苦笑する。
仕方が無い。

「坊ちゃん」
「・・・なんだ」
「私、是非とも坊ちゃんからキスを頂きたいのですが」
「!!」

シエルの望みを代わりに言葉に出すとシエルは一瞬嬉しそうな顔をするが、すぐにセバスチャンの襟を掴む。

「お前!やっぱり分かってたんだろ!」
「だって坊ちゃんの口から聞きたかったですし」
「うっ」
「でも坊ちゃん恥ずかしがって言えないでしょう?」
だから私が折れたんです。

やれやれ、とため息をつくように言うセバスチャン。



シエルが仕事に逃げた理由。
イコール、シエルの望みとは、セバスチャンとキスがしたかったのだ。
その気持ちが前々から全く無かったというわけではないが、今日の朝目覚めてセバスチャンの顔を見た瞬間。
なぜか衝動的にキスがしたいと思ってしまった。
どうせ一時の気の迷いだろうとシエルは自分にいい訳をしていたのだが、その気持ちは治まらずに蝕み続け、シエルを悩ませた。
二人は恋人なのだから朝キスがしたいと思った時点でそう言えばいいのだが、シエルにはそれが出来ない。
恥ずかしいし、なによりプライドが邪魔をする。
かと言って、セバスチャンから仕掛けてくるようにワザとらしく二人きりになるのもどうかと思い・・・。
結局出た結論は、そんな欲望を捨てるべく仕事に励もう、だった。

シエルはそれはもう全てを忘れるが如く仕事に没頭した。
頭が空っぽになるくらい仕事に逃げた。
その結果が今の状況だ。
結果オーライと言えばそうなのかもしれないが。

「・・・・」
「どうしました?」

自分のこの気持ちがバレてしまったのが、恥ずかしいと共に少しの恐れもあった。

「お前は笑わないのか?」
「笑う?なぜです?」
「だって・・・」

この僕がキスしたいだなんて・・・。
自分はセバスチャンが好きなのだから、そう思ってしまうのは当たり前のことであると知識的には分かっている。
けれど、なぜかモヤモヤしてしまう。
きっとどこかで自分に恋愛ごとなど似合わないと思っているのだろう。

「馬鹿ですねぇ、貴方は」

そっと額に柔らかいものが触れる。
その感触は確かめなくても分かる。
今シエルが一番欲しいものだ。

「私は、坊ちゃんがキスがしたいと思ってくださっていると分かった瞬間、本当に嬉しかったですよ」
「・・・セバスチャン」
「仕事に逃げてしまうほど、強く思ってくださったのでしょう?」

シエルは小さく頷く。

「それをどうして笑うのです?まぁニヤけてはしまうかもしれませんが・・・」
それくらい嬉しかったのですよ。

今度は頬にそっと柔らかいものが触れる。

「心の底から愛しています。だから、坊ちゃんも安心して心の底から愛してください」

セバスチャンは苦しいほどシエルを抱きしめる。
少しの隙間など作らないように。
それが嬉しくて、シエルもセバスチャンの首に手を回して強く抱きしめる。
今なら・・・。

「セバス・・・チャン」
「・・・はい」
「その・・・キ、キス・・・してもいいか」

搾り出すように言うシエル。
それにセバスチャンは、

「喜んで・・・」

幸せそうに答えた。


互いに腕の力を緩め、顔を見合わせる。
セバスチャンは蕩けるような笑みで。
シエルは恥ずかしそうに潤んだ瞳で。

そっと、シエルから顔を近づける。
心臓が煩いくらい高鳴って、緊張してしまう。
それでも大丈夫。

心の底から愛しています。だから、坊ちゃんも安心して心の底から愛してください―――


瞳を閉じたセバスチャンに、めいいっぱいの愛情を込めて口付ける。
ずっと欲しかった、唇に触れる柔らかさ。そして温かさ。

「ん・・・」

ほんの少しだけセバスチャンの唇を啄ばむと、同じように返してくれる。
もっと、もっと。
そう思うけれど、今はまだそこまでの勇気は出なくて。
少し名残惜しげにちゅっと音を立てて唇を離す。

「初めて坊ちゃんからキスをしてくださいましたね」
「・・・あぁ」

セバスチャンはシエルの頬を撫でる。
その感触が少しくすぐったくて笑うと、そのまま指で唇をなぞられる。
いつの間にか優しい色をしていた瞳は獣のように赤く染まり、次はセバスチャンが顔を近づけていた。

「今度は私からしても宜しいですか?」

熟れた声音で、囁くように聞いてくる。
きっとこの様子だと、シエルが出来なかったことをくれるだろう。
甘く痛いほどに。
いつもならば、その激しさに滞ってしまうのだが、今はそれが欲しい。
シエルは頷き、同じく囁くように素直に、欲しい・・・と返す。
唇を撫でていた指がピクリと反応し、すぐに唇が寄せられる。
シエル・・・と名前を呼びながら。


再び唇が重なり合い、今までの静かな流れが嘘だったかのように貪られる。
どんなに恥ずかしい水音が聞こえてこようが構わない。

もっと欲しい、もっともっと。
セバスチャンを感じたい。

満たされる何かと逆に餓えていく何か。
開放される熱と込み上げてくる熱。

「セバ、ス・・・チャン」

キスの合間に息を荒げながら名前を呼ぶ。

「どうしました?」

掠れた声で返してくる。
余裕の無い表情なのもたまらない。

あぁ、セバスチャン。

「僕も、愛してる」
心の底から。


心の底から、僕も愛してる。



シエルはもう一度、自分からセバスチャンに口付けた。


END


******
あとがき
一応2000HITのお礼として、私なりに甘く書かせていただきました。
ダラダラと長くなってしまってスミマセン;;
こんな稚拙なサイトですが、是非これからも遊びに来てくださると嬉しいです^^

2000HITありがとうございました☆

 

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【2011/03/23 20:22 】 | Text | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
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