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【2017/07/25 05:50 】 |
真実
『嘘』の続きみたいなものです
*『嘘』の切なさが明るくなる方向ですので、切ないままが良い方様は注意!!


自分が相手に抱いている想い。
相手が自分に抱いている想い。
お互いに同じ想いを抱いている。
それは、奇跡に近い一致なのかもしれない。
けれど貴方にとってその想いは。

嘘にしなければいけないほど、恐ろしいものなのですか?



― 真実 ―



遠くから自分が最も欲しい言葉が聞こえた。


けれどそれは婚約者に向けた言葉であって。


自分ではない者に囁いて。


ひどく。

ひどく。

ひどく。



苛立った。




「結局、貴方は私に愛を囁いてはくれないのですね」

セバスチャンは深く眠る主人の髪を起こさぬよう優しく撫で続ける。
眠りながらもどこか疲れたような表情に見えるのは、少し手荒く抱いたせいだろうか。
もしかしたら、身体中が痛むと怒られてしまうかもしれない。
けれどきっと。

「…怒ってくださったら、いいのに」

髪を撫でたまま自嘲気味に笑う。
きっとこの主人は身体が痛くとも、何ともないような顔をして起き上がるのだろう。
そしていつものように仕事を始める。
昨晩のことなど、忘れてしまったかのように。
抱き合った行為など、なかったかのように。
だから、主人はきっと自分を怒らない。

「あ…」

ふと、撫でる手によって髪が落ち、首筋が露わになる。
そこにはいつもよりも色濃く刻みついた跡が存在していた。

――― たまには褒美をやらないと、犬だって主人に牙を向くだろう?餌付けは必要だからな

言われた言葉が蘇り、チリリと胸に痛みが生まれる。

差し出された首筋。
まるで試すかのような口元。
しかし瞳はどこまでも…深海よりも深い蒼に染まっていて。
結局自分は、我慢出来ずに所有印を刻み込んだ。

「これは貴方が悪いのですよ?」

セバスチャンは自分が刻んだ跡に、チュッと口付ける。

主人は目を覚ませば、抱き合った行為などなかったかのように過ごす。
抱いたはずの自分ですら、本当は抱き合わなかったのではないかと錯覚してしまうほどに。
だから自分はいつも主人を抱くとき、所有印を必ず散らしてしまうのだ。
自分たちが抱き合ったことは、決して夢ではないのだと。
まるで証拠でも残すかのように。

なんとも痛々しい行為なのだろうか。
この腕で何度抱いても、そのように目で確認できるものが残っていないと不安でしょうがない。
それくらい主人は何事もなかったかのように振舞うのだ。

「本当に、酷い方ですね」

この主人は自分が跡を残す理由を分かっているのだろうか。
いや、考えようともしていないのかもしれない。
なぜならそれは、愛するが故の行為だから。



――― 僕はお前を愛していない。だからお前なんかに愛を囁かない。

主人は自分に向けて、そう言葉を放つ。
辛辣な、まるで鋭利な刃物のような言葉を。

どんなに自分が愛を囁いても返ってくることはない。
返ってくるのは自分を拒絶する言葉だけ。

その指は痛いくらい優しいくせに、冷たい笑みを浮かべて自分を拒絶する。
けれど。



――― 貴方は、気が付いていますか?



「ん…」

主人は眉を寄せ、どこか肌寒そうに震えてしまう。
セバスチャンは撫でていた手をやめ、シーツを肩まで引っ張り上げ、主人を温めるように抱きしめる。
すると主人は安心したような顔になり、セバスチャンの胸に顔を埋めた。

セバスチャンが羽織っている白いシャツを離すことなく、強く握り締めたまま。



――― 無意識に、私を求めていることを。







いつの日か、主人とシーツの中で話したことがある。




『嘘とは何だと思う?』
『いきなりですね』
『いいから答えろ』
『…真実ではないこと、でしょうか』
『そのままだな』

いきなりの問いに、言葉の意味そのものを答えれば、主人はどこか悪戯に鼻で哂った。
どうやら何か別の答えがあるらしい。いや、用意していた答えと言った方が正しいだろうか。
先を促すように、じゃぁ貴方は何だとお考えですか?と問えば。

『真実を守るものだ』

まるで私を説き伏せるかのように、言った。



主人が何を言いたかったのか。
私に何を伝えたかったのか。
きっとそれは言葉の通りのものなのだろう。

嘘とは真実を守るもの。
すなわちそれは、己は真実を守る為に嘘をつく、ということだ。

聞こえはいいかもしれない。
しかし結局は嘘なのだ。
真実を守るだなんて、詭弁にすぎないだろう。

実はこの言葉の裏、いや、言った主人の心には隠された裏がある。
きっと言った本人でさえ、気が付いていない裏が。
ここでもっとも重要なことは。

どうして主人がそれをこの“私”に言ったのか。








セバスチャンは自分のシャツを握り締める手の上に自分の手を重ねる。
ちょっとやそっとでは離れそうもない指の力に、疲れないのかと苦笑しつつも、それが嬉しくて愛しさが溢れてしまう。
けれど、それは時に流されて切なさになってしまうのはどうしてだろう。
時の流れには勝てないから?
時の流れには逆らえないから?
いや、違う。時の流れのせいではない。


悪魔である自分のせいだ。


「貴方が守っているのは、真実という名のセバスチャン・ミカエリスという悪魔でしょう?」


契約が終わったら、貴方は私の前からいなくなる。
たとえ今どんなに愛していても、愛し合っていても、引き離される運命だ。
貴方みたいに復讐をしたら済む問題でもない。
自分が終わるまで、永遠に蝕む牢獄。

愛する者を失った、孤独感。

この子供はそれを嫌というほど知っている。
だからそれを味あわせないために、自分を拒絶しているのだ。

契約が終わった後に、私が傷つかないように。

――― 嘘とは真実を守るもの。

その言葉はここからきている。


「馬鹿、ですね」

赤く染め上げた瞳を細め、愛しい存在に微笑み掛ける。
けれど悪魔である存在のその赤い瞳には、こぼれ落ちそうなほどの雫が溢れかえっていた。

「私のことなど、守ろうとしなくても宜しいのですよ」

優しい声音の筈なのに、どこか苦しげな声。
けれど何かの拍子に弾けてしまいそうな、抑制した声。
セバスチャンは主人の頬をそっと撫でた。

「本当に馬鹿ですよ。貴方の魂を喰らう悪魔ですよ?そんな相手をどうして守ろうとするのですか」

悪魔なんて、最終的には恐れられる存在だ。
どんなに初めは求められたとしても、最期のときを考えれば人間はいつだって恐怖する。
いつだって、何度だってそうだった。
それなのに、この主人は。

自分を心の底から、本気で愛してくれた。


それに気が付いたのはいつだろう。
自分も主人を愛してからだろうか。
いや、自分が主人を愛しているから気が付いたのだっただろうか。
どちらでもいい。なんだっていい。
自分たちは愛し合っているのだ。

けれど主人の口から出るのは、否定の言葉ばかり。
初めは首を傾げたが、その答えはすぐに導かれた。
自分だって、ただ駒として後ろに仕えているわけではない。

守ろうとしなくていい。
守ろうとしなくていい。
自分はそんな優しさが欲しいんじゃない。

「私は、貴方が欲しいんです」

本当の貴方が。
本当の貴方の気持ちが。



だって、本当は貴方だって。

『嘘とは何だと思う?』

気が付いて欲しいのでしょう?



「ねぇ、坊ちゃん」

怖がらないで、一歩進んでみませんか?
傷つけることを恐れないで、一緒に歩いてみませんか?

決して弱虫とは言わないから。
決して卑怯者とは言わないから。

私の手を、取ってくださりませんか?


「私は、その覚悟が出来ています」


悪魔の赤い瞳からこぼれた雫が、シエルの頬を滑り
まるでシエルが流した涙かのように、消えていった。


END


****
あとがき
まさかの”嘘”の続きです(笑)
とある方様から少しでも報われるお話を…とのお言葉を頂いたので、やはり調子に乗って書いてしまいました。
しかもこれじゃぁ終らないというねッ!まだ続きが出来ちゃう感じなんだよねッ!
いや、もういらん、と言われましたら書きませんが(笑)
切ない感じだったのが、幸せルートへと進んでおります。
切ないのも大好きですが、やっぱり最後は全員・全部・幸せが一番!!www

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【2011/03/24 16:56 】 | Text | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
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